HP、Lenovo、Dellはユーザー企業がサステナビリティに取り組む動きを受け、環境に配慮したノートPC製品を相次いで投入している。具体的に、どう「サステナブル」なのか。
HP、Lenovo、Dellの大手PCベンダー3社は、サステナビリティ(持続可能性)を追求したノートPCの投入に動いている。自然に配慮した素材を採用するなど、環境に優しい製造方法を切り口として、サステナビリティに取り組んでいる企業に売り込む。
3社は、2022年1月に開催された家電やデジタル製品の見本市「CES 2022」で、「オーシャンバウンドプラスチック」(海へ流入する前に回収されたプラスチックごみ)や「ビーガンレザー」(動物の皮を使わず、革を再現した合成皮革。フェイクレザーとも)を使用したノートPC製品を披露。製造時の環境への配慮に加え、使われなくなった後のリサイクルのしやすさを訴求した。
HPのノートPC「HP EliteBook 805 G9」シリーズは、スピーカー筐体(きょうたい)にオーシャンバウンドプラスチックを5%使用している。同社は2016年、海岸の地域で回収されたプラスチックごみをオーシャンバウンドプラスチックとして再使用する取り組みを始めた。2021年6月に発表したサステナビリティの報告書「HP 2020 Sustainable Impact Report」によると、同社がインクカートリッジやPCモニターに使ったオーシャンバウンドプラスチック量は累計約771トンだった。
Lenovoは2022年5月、ノートPC「ThinkPad Z」シリーズから、筐体のアルミニウムの75%に再生素材を採用した「ThinkPad Z13」と「同Z16」を発売する。いずれも、天板には再生プラスチックを100%使用し、革のような見た目や質感を再現。天板の素材には化石燃料を使わない。2022年第2四半期(4月~6月)に発売する2-in-1デバイス(タブレットとしてもノートPCとしても使えるデバイス)「Yoga 6」は、天板と電源アダプターに再生プラスチックや再生アルミニウムを採用している。
他にもLenovoは全てのノートPCの箱に、堆肥化可能なタケとサトウキビの繊維を使った素材を使用。デスクトップPCの「ThinkCentre Neo」シリーズは、梱包(こんぽう)材にオーシャンバウンドプラスチックが含まれるという。同社はゲーミングノートPC(ゲーム用ノートPC)「Legion」シリーズとYogaシリーズの購入者を対象に、二酸化炭素(CO2)排出量を相殺(オフセット)できるサービスの提供も開始した。
DellはCO2の排出削減を目指し、製造工程の改善に取り組んでいる。2022年春に発売するノートPC「XPS 13 Plus」は、水力発電による再生可能エネルギーを使用して製造した。使用しているアルミニウムは100%再生可能だという。同社は最近、ノートPC製造に使用する部材を減らしたり、PC製品のリサイクルを容易にしたりする取り組みも進めている。
非営利の環境保護団体「Ocean Conservancy」でプロジェクトディレクターを務めるイーディス・チェッキーニ氏は、再生素材の利用を進めるPCベンダーの取り組みを歓迎している。「オーシャンバウンドプラスチックの使用だけでは、海洋プラスチックの問題は解決しない」とチェッキーニ氏は指摘しつつ、ユーザーのエコロジー意識を高める上で、PCベンダーの動きは「有意義だ」と評価する。
国連が「SDGs」(持続可能な開発目標)を打ち出していることを背景に、大手PCベンダーは近年、サステナビリティを追求した製品作りに力を入れている。調査会社Technalysis Researchの創業者、ボブ・オドネル氏は「サステナビリティを取り入れる企業が増えているので、PCベンダーにとって環境に配慮した製品は販売しやすい」とみる。調査会社IDCが2021年11月に発表した調査では、1000人の企業経営幹部のうち、43%が「サステナビリティはIT製品を購入する際の重要な決め手だ」と回答した。
Ocean Conservancyのチェッキーニ氏は、PCベンダーには環境保護のために「まだまだできることがある」と言う。長期にわたる修理体制を整えてノートPCの寿命を延ばせば、廃棄物を減らせると同氏は指摘する。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
近年の情報システム部門は多数の業務を抱えており、中でもPCの運用・管理担当者の業務負荷をいかに軽減するかが大きな課題となっている。1030人を対象に行った調査をもとに、PC運用・管理業務のあるべき姿を探った。
“100年企業”スズキでは、DX推進のアクションプランに、「仕事のシンプル化」「ムダの削減」「全社的な可視化」を挙げている。同社はあるツールを導入したことで、業務の見える化や標準化、残業時間の35%削減を実現したという。
企業では「マルチLinux」環境が有効な取り組みとして浸透しているが、一方で管理の複雑化という課題も浮上している。本資料ではマルチLinux環境が浸透してきた背景やその利点を整理し、新たな課題の解決策について解説する。
デジタル化やクラウド利用の進展に伴い、企業のデータ量は増加し続け、これを狙うサイバー攻撃も激化している。データを守るためには保管場所が必要だが、低コストかつセキュアな環境を構築するためにはどうすればよいだろうか。
Windows 10のサポート終了が迫り、Windows 11へのアップデートを考えている組織も多いことだろう。当然、アップデートには失敗したくないはずだ。ポイントを本動画で把握して、スムーズなOS移行を実現したい。
デザイン性も機能性も“インカム越え”? 進化した接客用連絡ツールの特徴は? (2025/4/14)
「PoCをした企業」がほぼ導入するアプリケーション監視の新たな解決策 (2025/4/8)
DX推進に向かうにはまず守りの業務の改善から (2025/3/6)
企業のIDを内外から狙う攻撃が急増 ID漏えいを前提とした対策が必要な時代に (2025/3/3)
カスハラから従業員も映像も守る ボディーカメラはあのカメラとどう違う? (2025/1/24)
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...
Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...