「サステナブルPC」とは? “ごみ製PC”から“CO2相殺ゲーミングPC”までLenovo、Dell、HPが挑戦

HP、Lenovo、Dellはユーザー企業がサステナビリティに取り組む動きを受け、環境に配慮したノートPC製品を相次いで投入している。具体的に、どう「サステナブル」なのか。

2022年02月11日 05時00分 公開
[Mike GleasonTechTarget]

 HP、Lenovo、Dellの大手PCベンダー3社は、サステナビリティ(持続可能性)を追求したノートPCの投入に動いている。自然に配慮した素材を採用するなど、環境に優しい製造方法を切り口として、サステナビリティに取り組んでいる企業に売り込む。

 3社は、2022年1月に開催された家電やデジタル製品の見本市「CES 2022」で、「オーシャンバウンドプラスチック」(海へ流入する前に回収されたプラスチックごみ)や「ビーガンレザー」(動物の皮を使わず、革を再現した合成皮革。フェイクレザーとも)を使用したノートPC製品を披露。製造時の環境への配慮に加え、使われなくなった後のリサイクルのしやすさを訴求した。

「サステナブルPC」の気になる中身とは? 環境保護の専門家の見解は?

 HPのノートPC「HP EliteBook 805 G9」シリーズは、スピーカー筐体(きょうたい)にオーシャンバウンドプラスチックを5%使用している。同社は2016年、海岸の地域で回収されたプラスチックごみをオーシャンバウンドプラスチックとして再使用する取り組みを始めた。2021年6月に発表したサステナビリティの報告書「HP 2020 Sustainable Impact Report」によると、同社がインクカートリッジやPCモニターに使ったオーシャンバウンドプラスチック量は累計約771トンだった。

 Lenovoは2022年5月、ノートPC「ThinkPad Z」シリーズから、筐体のアルミニウムの75%に再生素材を採用した「ThinkPad Z13」と「同Z16」を発売する。いずれも、天板には再生プラスチックを100%使用し、革のような見た目や質感を再現。天板の素材には化石燃料を使わない。2022年第2四半期(4月〜6月)に発売する2-in-1デバイス(タブレットとしてもノートPCとしても使えるデバイス)「Yoga 6」は、天板と電源アダプターに再生プラスチックや再生アルミニウムを採用している。

 他にもLenovoは全てのノートPCの箱に、堆肥化可能なタケとサトウキビの繊維を使った素材を使用。デスクトップPCの「ThinkCentre Neo」シリーズは、梱包(こんぽう)材にオーシャンバウンドプラスチックが含まれるという。同社はゲーミングノートPC(ゲーム用ノートPC)「Legion」シリーズとYogaシリーズの購入者を対象に、二酸化炭素(CO2)排出量を相殺(オフセット)できるサービスの提供も開始した。

 DellはCO2の排出削減を目指し、製造工程の改善に取り組んでいる。2022年春に発売するノートPC「XPS 13 Plus」は、水力発電による再生可能エネルギーを使用して製造した。使用しているアルミニウムは100%再生可能だという。同社は最近、ノートPC製造に使用する部材を減らしたり、PC製品のリサイクルを容易にしたりする取り組みも進めている。

 非営利の環境保護団体「Ocean Conservancy」でプロジェクトディレクターを務めるイーディス・チェッキーニ氏は、再生素材の利用を進めるPCベンダーの取り組みを歓迎している。「オーシャンバウンドプラスチックの使用だけでは、海洋プラスチックの問題は解決しない」とチェッキーニ氏は指摘しつつ、ユーザーのエコロジー意識を高める上で、PCベンダーの動きは「有意義だ」と評価する。

 国連が「SDGs」(持続可能な開発目標)を打ち出していることを背景に、大手PCベンダーは近年、サステナビリティを追求した製品作りに力を入れている。調査会社Technalysis Researchの創業者、ボブ・オドネル氏は「サステナビリティを取り入れる企業が増えているので、PCベンダーにとって環境に配慮した製品は販売しやすい」とみる。調査会社IDCが2021年11月に発表した調査では、1000人の企業経営幹部のうち、43%が「サステナビリティはIT製品を購入する際の重要な決め手だ」と回答した。

 Ocean Conservancyのチェッキーニ氏は、PCベンダーには環境保護のために「まだまだできることがある」と言う。長期にわたる修理体制を整えてノートPCの寿命を延ばせば、廃棄物を減らせると同氏は指摘する。

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