「学生が生成AIを使うと学びが深まらないのではないか」という懸念が根強く残る一方で、当の大学生はどう考えているのか。調査結果と共に、イーストアングリア大学のIT責任者の考察を紹介する。
エンドユーザーの指示を基にテキストや画像、音声などのデータを生成するAI(人工知能)技術の「生成AI」は、世の中のあらゆる分野に期待と不安をもたらしている。これは高等教育の分野も例外ではない。
イーストアングリア大学(University of East Anglia)の学習指導委員会(Learning and Teaching Committee)で、デジタル&データ部門のディレクターを務める筆者は、高等教育における生成AI活用の可能性と懸念について、同業者とさまざまな議論を交わしている。大学生、教員、学校職員、それぞれの立場から考える「生成AIへの期待」とは。
学術研究によると、生成AIに対する学生の見解はまちまちだ。香港大学のセシリア・カー・ヤク・チャン氏とウェンジエ・フー氏は、学術誌『International Journal of Educational Technology in Higher Education』2023年20号で、生成AIに対する学生の意見を調査した論文を発表した。その論文「Students' Voices on Generative AI: perceptions, benefits, and challenges in higher education」によると、生成AIに対する学生の見解は複雑かつ微妙であり、期待と不安の両方を抱いている。
この調査に参加した学生は全体的に、学習や研究、将来のキャリアにおいて、生成AIを利用することに前向きな姿勢を示していた。ただし生成AIの能力と限界もよく理解しており、以下の点に対して懸念を抱いていることが分かった。
これまでに登場した新技術と同様に、生成AIも急速に進歩し、日々新しい機能が生まれている。生成AIは、学生の活動や教育、研究の質を高める大きな可能性を秘めている。生成AIと連携した音声アシスタントは、健全な学生生活を支援し、24時間365日利用可能な学習コーチになり得る。リアルタイムの文章翻訳や同時通訳もできるため、距離や国家の垣根を越えた学習機会を得やすくなることもメリットだ。教育機関にとっては、短期学習コースから大学・大学院の学位まで、オンラインで遠隔地の学生にさまざまな学習機会を提供できるようになり、収益増につながる。創作活動においては、生成AIを使ってブレーンストーミングをしたり、共に美術作品を作成したり、作曲したりできる。
どの新技術にも賛成派と反対派がいる。生成AIの登場をきっかけに、「AI技術は社会に恩恵をもたらすのか、それとも弊害をもたらすのか」という議論が活発になった。生成AIの悪用を企てる者から社会を守るためには、抑制と均衡が必要だ。一方で生成AIは、世の中の知識と生産性を向上させる。高等教育の分野は、このような社会的議論の縮図となっている。
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