シンガポールの金融機関は生成AIと連携したチャットbot「OCBC GPT」を導入し、約3万人の従業員が活用している。導入までの同行の取り組みと成果を紹介する。
シンガポールの金融機関Oversea-Chinese Banking Corporation(以下、OCBC銀行)は2023年10月24日(現地時間)、AI(人工知能)技術を活用したチャットbotの「OCBC GPT」を導入し、業務改善を目的として約3万人の従業員が使用することを発表した。
OCBC GPTはMicrosoftの「Azure OpenAI Service」で構築されており、インターネットのテキスト情報に基づいてクエリを分析して回答のテキストを自動生成する「生成AI」(ジェネレーティブAI)の機能を持つ。Azure OpenAI Serviceは、Microsoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」でAI技術ベンダーOpenAIの大規模言語モデル(LLM)を活用できるサービスだ。OCBC銀行の説明によると、OCBC GPTはセキュリティ対策を十分に施した環境で運用し、従業員が入力した情報は銀行内部にとどまるため、Microsoftや外部の関係者はアクセスできないようになっている。
OCBC銀行がOCBC GPTの試験運用を開始してから本格導入に至るまでの取り組みと、導入後の成果を紹介する。
OCBC GPTの本格導入に先立ち、OCBC銀行は6カ月間の試験運用を実施した。従業員1000人が投資調査レポートの作成や多言語翻訳、顧客対応の草案作成にOCBC GPTを使用し、成果が得られることを確認した。OCBC GPTが生成した回答のファクトチェックに掛かる時間を含めても、業務完了までの時間は平均で約50%短縮したという。
OCBC銀行でグループデータオフィスの責任者を務めるドナルド・マクドナルド氏によると、生成AIの導入を通じて従業員は時間を要する業務を自動化できるようになり、戦略的で付加価値のある仕事に集中できるようになった。「顧客理解(顧客の要望や課題を把握すること)に基づいた関係構築や、革新的なサービスの開発に時間を掛けられるようになり、顧客サービスの向上に役立っている」とマクドナルド氏は評価する。
OCBC GPTの他にも、OCBC銀行は生成AI技術をさまざまな分野で利用している。同行は2023年5月、生成AIを使ったコーディング支援ツール「OCBC Wingman」を導入し、技術者の生産性を約20%向上させた。コールセンターでは、顧客からの電話の内容をリアルタイムで文字起こしして要約するツール「OCBC Whisper」のパイロットプロジェクトを実施している。
OCBC銀行では以前からAI技術を積極的に活用している。例えばモバイルバンキングアプリケーションを利用する顧客に対してパーソナライズされた提案や洞察を提供したり、マネーロンダリング(資金洗浄)の防止策の一環として不審な取引を特定したりする場面で、AI技術を利用しているという。リスク管理や顧客サービス、営業などの分野で、毎日400万件以上の意思決定をAI技術が支えており、2025年までにその数は1日1000万件に増加すると同行は予測する。
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