IT業界に身を置く女性管理職は、業界で潜在的に続く「人材不足」や「多様性の欠如」といった問題は、教育制度と地続きだと考えている。英国の成績データから見える、コンピュータサイエンスの男女差は。
英国における義務教育後の卒業認定試験「GCSE」(General Certificate of Secondary Education)には、STEM(科学、技術、工学、数学)分野の科目がある。受験科目でコンピュータサイエンスを選択する女子生徒数は2022年以降、増加傾向を示す。
しかし専門家は、女子生徒がSTEM分野に興味を持つことを妨げる障壁が依然として存在することを問題視し、STEM科目を選択する女性比率の向上に取り組むべきだと主張する。GCSEにおけるコンピュータサイエンスの成績は、男女でどれだけの差が見られるのか。
ID管理ツールベンダーOktaでUK&I担当のバイスプレジデントを務めるレイチェル・フィリップス氏は、「われわれは義務教育レベル以上のSTEM科目を選択する女性比率の向上を目指さなければならない」と述べる。その上でフィリップス氏は、技術分野で管理職として働く女性の一人として「この問題に取り組む必要性を痛感している」と強調する。STEM科目に関連のある職種は、男女格差や人種格差など多様性の問題を抱えているというのが同氏の見解だ。どの業界でも多様性の欠如は深刻な影響をもたらしかねないことから、同氏は「この問題を重く受け止める必要がある」と語る。
STEM科目を選択する女性比率を向上させる方法として、専門家は幾つかの対策を提案している。代表例は以下の通りだ。
英国の8つの試験実施・資格授与機関から成る会員制組織Joint Council for Qualifications(JCQ)が2023年に公開したデータは、2019年、2022年、2023年におけるGCSE受験者の成績を比較している(注1)。
※注1 2020年と2021年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的流行)の影響で試験に基づいた成績評価がなかったため、比較対象に含まれていない。
コンピュータサイエンスで好成績を収めた生徒の割合は、2019年よりも2023年の方が高くなっている。2023年には24.6%の生徒が最高レベルの「A/7」以上、64.8%の生徒が合格点「C/4」以上の成績を収めている。2019年の場合、A/7以上の生徒は21.7%、C/4以上の生徒は62.7%だった。
2023年の結果では、女子生徒の方が男子生徒よりも高成績を収めている。コンピュータサイエンスでA/7以上の成績を収めた生徒の割合は女子30%に対して、男子は23.1%だった。C/4以上の成績を収めた生徒の割合は、女子が71.4%、男子は63.1%だった。
しかし2021年から2023年までの間で、コンピュータサイエンスの成績は下降傾向が見られる。2023年にコンピュータサイエンスでA/7以上の成績を収めた生徒(男女合計)の割合は24.6%だったが、2022年は34.1%、2021年は39.7%だった。
後編は、IT業界が抱える人材問題を解消するために、英国の教育制度に求められている変化について、女性管理職の見解を紹介する。
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