企業における活用が広がる見通しの「生成AI」。その使用には一定の課題やリスクがある。企業が生成AIを最大限活用していくために必要な視点を3つ解説する。
テキストや画像などを生成するAI(人工知能)技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)がビジネスにもたらすメリットに注目が集まり、企業における生成AI導入が進む可能性がある。一方で、生成AIの利用には一定の課題やリスクが伴うことを忘れてはならない。企業が生成AIに振り回されず、使いこなすためには何を押さえるべきなのか。3つのポイントを紹介する。
企業は生成AIを活用することで、コンテンツ制作に掛かるコストを削減できる。一方で、サイバー攻撃者も同じメリットを享受していることを忘れてはならない。攻撃者は生成AIを用いて、深層学習(ディープラーニング)技術を利用した偽(フェイク)の動画や音声「ディープフェイク」を従来よりも容易に作成できるようになった。動画や音声のなりすましや美術作品の贋作(がんさく)、標的型攻撃などが懸念される。
攻撃者による悪用以外に、生成AI自体がユーザーを惑わすこともある。生成AIのハルシネーション(幻覚)は、誤った情報を事実かのように生成する現象だ。調査会社Gartnerのテクノロジーイノベーション部門でアナリスト兼バイスプレジデントを務めるアルン・チャンドラセカラン氏は、「ハルシネーションの発生率は生成した回答の10〜20%に上ることもある」と話す。
AI技術が引き起こし得る法的リスクの一つが、知的財産の侵害だ。例えば生成AIで出力した内容を著作物に利用した場合、気付かないうちにクリエイターの著作権を侵害してしまっている可能性がある。
学習用データに含まれるバイアス(偏見)も法的リスクの要因となる。欠陥のあるデータや偏りのあるデータで訓練を実施すると、バイアスが反映された、もしくは不完全な内容を生成してしまう。生成したコンテンツをよく確認せずに利用した結果、気付かないうちに差別を増長してしまうようなビジネスの意思決定につながる恐れがある。
バイアスが反映された生成AIモデルは他のデータセットにもバイアスを広める可能性があり、注意が必要だとチャンドラセカラン氏は警告する。
生成AIの効果的な導入や活用を目指す上で重要な役割を果たすのが、社内外における生成AIの利活用を推進する「CoE」(センターオブエクセレンス)だ。CoEは、従業員の生成AI使用方法を定めるポリシーの設計や決定、リスクマネジメントなどを担う。IT部門や法務部門、リスクマネジメント部門、マーケティング部門だけでなく、人事部門や研究開発部門など、社内の利害関係者の意見を収集する。
ITコンサルタント企業West Monroeでパートナーを務めるパブロ・アレホ氏は、CoEをあらゆる業界や企業に立ち上げるべきだと主張する。「生成AIといった新しい技術を理解して活用法を研究する組織がなければ、その技術は陳腐化してしまう恐れがある」(アレホ氏)。
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
世界のモバイルアプリ市場はこう変わる 2025年における5つの予測
生成AIをはじめとする技術革新やプライバシー保護の潮流はモバイルアプリ市場に大きな変...
営業との連携、マーケティング職の64.6%が「課題あり」と回答 何が不満なのか?
ワンマーケティングがB2B企業の営業およびマーケティング職のビジネスパーソン500人を対...
D2C事業の約7割が失敗する理由 成功企業との差はどこに?
クニエがD2C事業の従事者を対象に実施した調査の結果によると、D2C事業が成功した企業は...