スポーツウェアのECサイトを手掛けるGymsharkは「Google Cloud Platform」(GCP)の採用を発表した。どのような背景から移行を決意し、どう活用を進めるのか。
スポーツウェアの直販事業を手掛けるGymsharkは、2012年に創業してEC(Eコマース:電子商取引)事業を開始。2022年に英ロンドン中心部のリージェントストリートにオープンした基幹店では、客に合わせた商品の提供や地域に根差したイベントの実施に取り組んでいる。
GymsharkはGoogleのクラウドサービス群「Google Cloud Platform」(GCP)を採用し、システム標準化やカスタマーエクスペリエンス(CX:顧客経験価値)強化を実施する他、Googleの知見を基にAI(人工知能)技術活用にも取り組むと発表した。2023年10月にGoogleが開催したカンファレンス「Google Cloud Next London 2023」でGymsharkが発表した、GCPの採用理由や活用方法について紹介する。
「Gymsharkのような、デジタル技術によって成長してきたデジタルネイティブ企業やスタートアップ企業が、当社のクラウドサービスやAIツールを積極的に採用している」。Googleのクラウドサービス部門Google Cloudで英国・アイルランド担当マネージングディレクターを務めるヘレン・ケリスキー氏は、Google Cloud Next London 2023の基調講演でこのように話した。
ケリスキー氏と共に登壇したGymsharkのCEOベン・フランシス氏は、GCPへの移行前について次のように振り返る。「当社は急成長を遂げたものの、まだスタートアップの段階にあった。インフラは雑然とした状態で、テープで貼り合わせたような状態だった」。同社はECサイトの購買履歴といった顧客情報を手にしているが、データの質は洗練されておらず、本当の意味でデータを把握できているとは言い難かった。GCPはデータの質を改善するインフラとしての役割を果たし、顧客に合わせたエクスペリエンス(業務における従業員の体験や経験)の提供を可能にした。
Gymsharkは、トレーニング方法の解説やトレーニング計画の管理といった機能を持つフィットネスアプリケーションを提供している。同社はこのアプリケーションで収集したデータを、ECサイトの取引データと組み合わせる取り組みを実施している。例えば、顧客がアプリケーションでよく選ぶトレーニングの種類と、ECサイトの購買履歴を組み合わせることで、より顧客の嗜好に合った商品の提案が可能になる。このように違う場所にあったデータを組み合わせることで、データの質を深めることができたという。
他にもGymsharkは、テキストや画像などを自動生成する「生成AI」(ジェネレーティブAI)の活用が実験段階にあることを紹介した。フランシス氏は一例として、フィットネスアプリケーションから取得した顧客のトレーニング履歴を基に、翌日のトレーニング内容を提案するといった使い方を説明した。
Gymsharkが2012年に創業した当時、ECビジネスはまだ発展していない状況で、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)市場やインフルエンサー(他のエンドユーザーの行動に影響を与えるTikTokユーザー)市場に多額の投資をする人はあまりいなかった。「創業以来、当社は新しい技術をビジネスの中心に据えてきた。これからもできる限りの探求心を持ち、新しい技術を取り入れていく」とフランシス氏は述べる。
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