「Google Cloud」を選んだスタートアップが“急成長”できた理由とは?EC事業者のGCP活用事例

スポーツウェアのECサイトを手掛けるGymsharkは「Google Cloud Platform」(GCP)の採用を発表した。どのような背景から移行を決意し、どう活用を進めるのか。

2023年11月21日 07時00分 公開
[Caroline DonnellyTechTarget]

関連キーワード

人工知能 | クラウドサービス | Google


 スポーツウェアの直販事業を手掛けるGymsharkは、2012年に創業してEC(Eコマース:電子商取引)事業を開始。2022年に英ロンドン中心部のリージェントストリートにオープンした基幹店では、客に合わせた商品の提供や地域に根差したイベントの実施に取り組んでいる。

 GymsharkはGoogleのクラウドサービス群「Google Cloud Platform」(GCP)を採用し、システム標準化やカスタマーエクスペリエンス(CX:顧客経験価値)強化を実施する他、Googleの知見を基にAI(人工知能)技術活用にも取り組むと発表した。2023年10月にGoogleが開催したカンファレンス「Google Cloud Next London 2023」でGymsharkが発表した、GCPの採用理由や活用方法について紹介する。

EC事業者が「GCP」で解決できた悩みとは?

会員登録(無料)が必要です

 「Gymsharkのような、デジタル技術によって成長してきたデジタルネイティブ企業やスタートアップ企業が、当社のクラウドサービスやAIツールを積極的に採用している」。Googleのクラウドサービス部門Google Cloudで英国・アイルランド担当マネージングディレクターを務めるヘレン・ケリスキー氏は、Google Cloud Next London 2023の基調講演でこのように話した。

 ケリスキー氏と共に登壇したGymsharkのCEOベン・フランシス氏は、GCPへの移行前について次のように振り返る。「当社は急成長を遂げたものの、まだスタートアップの段階にあった。インフラは雑然とした状態で、テープで貼り合わせたような状態だった」。同社はECサイトの購買履歴といった顧客情報を手にしているが、データの質は洗練されておらず、本当の意味でデータを把握できているとは言い難かった。GCPはデータの質を改善するインフラとしての役割を果たし、顧客に合わせたエクスペリエンス(業務における従業員の体験や経験)の提供を可能にした。

購買履歴と“あのデータ”を組み合わせてCX強化

 Gymsharkは、トレーニング方法の解説やトレーニング計画の管理といった機能を持つフィットネスアプリケーションを提供している。同社はこのアプリケーションで収集したデータを、ECサイトの取引データと組み合わせる取り組みを実施している。例えば、顧客がアプリケーションでよく選ぶトレーニングの種類と、ECサイトの購買履歴を組み合わせることで、より顧客の嗜好に合った商品の提案が可能になる。このように違う場所にあったデータを組み合わせることで、データの質を深めることができたという。

 他にもGymsharkは、テキストや画像などを自動生成する「生成AI」(ジェネレーティブAI)の活用が実験段階にあることを紹介した。フランシス氏は一例として、フィットネスアプリケーションから取得した顧客のトレーニング履歴を基に、翌日のトレーニング内容を提案するといった使い方を説明した。

 Gymsharkが2012年に創業した当時、ECビジネスはまだ発展していない状況で、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)市場やインフルエンサー(他のエンドユーザーの行動に影響を与えるTikTokユーザー)市場に多額の投資をする人はあまりいなかった。「創業以来、当社は新しい技術をビジネスの中心に据えてきた。これからもできる限りの探求心を持ち、新しい技術を取り入れていく」とフランシス氏は述べる。

Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術

米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

技術文書・技術解説 ドキュサイン・ジャパン株式会社

導入が進む一方で不安も、電子署名は「契約の証拠」になる?

契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

VMware「永久ライセンス」を継続する“非公認”の方法

半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品の永久ライセンスを廃止した。その永久ライセンスを継続する非公認の方法とは。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

無計画なハイブリッドクラウドが招く弊害、次世代のITインフラでどう解消する?

クラウドファーストの流れが加速する中、無計画に構築されたハイブリッドクラウドの弊害が多くの企業を悩ませている。ITオペレーションの最適化を図るためには、次世代のハイブリッドクラウドへのモダン化を進めることが有効だ。

市場調査・トレンド 日本ヒューレット・パッカード合同会社

ハイブリッドクラウド環境におけるワークロードの配置を最適化する方法とは?

ワークロードを最適な環境に配置できる手法として注目され、多くの企業が採用しているハイブリッドクラウド。しかし、パフォーマンス、法令順守、コストなどが課題となり、ハイブリッドクラウド環境の最適化を難しくしている。

市場調査・トレンド 株式会社QTnet

業種別の利用状況から考察、日本企業に適したクラウドサービスの要件とは?

システム基盤をオンプレミスで運用するか、データセンターやクラウドで運用するかは、業種によって大きく異なる。調査結果を基に、活用の実態を探るとともに、最適なクラウドサービスを考察する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。