IT人材の“売り手市場”が続く見通しの中で、高度なスキルを持つ人材に長く勤めてもらうために企業はどのような対策を取るべきなのか。Gartnerアナリストの見方から探る。
調査会社Gartnerが2022年10月に開催した年次カンファレンス「Gartner ReimagineHR 2022」では、IT部門における離職率の高さが話題の一つとなった。その背景には、高度なスキルを持つ人材が引く手あまたになっている現状がある。
有能なIT人材が世界的に不足している原因は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)を契機として広まった業務のデジタル化だ。大手IT企業のリストラや新規雇用の凍結といった話題を見聞きした結果、IT人材の労働市場が落ち着くことを期待して採用を先送りする企業があると考えられる。そのような動きに対して、「ITの労働市場が落ち着くのを待つのは賢明な判断とは言い難い」と指摘するのは、調査会社Gartnerで調査部門のバイスプレジデントを務めるリリー・モク氏だ。
Gartner ReimagineHR 2022でこう話したモク氏は、「この市況を乗り切る鍵はデジタル技術だと企業が認識しているため、ITの人材不足は2023年も続くと考えられる」とも述べた。
IT人材の獲得競争が沈静化するのはまだ先のことになる可能性がある。アジャイル型(小規模な変更を短期間のうちに繰り返すシステム開発手法)の開発を実施できるスキルや、データベース言語のスキルといった需要の高い分野での実務経験を持つIT人材の争奪戦は激化する見通しだ。
IT人材の採用と定着を図るための対策としてモク氏が挙げるのが、スキルベースの採用と報酬の支払いだ。このアプローチでは、学歴や職歴ではなく、候補者のスキルのみを踏まえて選考する。
「ビジネス戦略を実行するためにどのデジタルスキルが不可欠なのかを、企業は見極めなければならない」とモク氏は指摘する。加えて「従業員が新技術を習得することや、既存スキルを磨く取り組みに報酬を支払う仕組み作りも大切だ」と同氏は助言する。そうした報酬が、従業員の継続した成長やモチベーションの向上につながるためだ。
後編は、スキルベースの採用に対して企業の採用担当者はどのような見方をするのかを、具体例を交えて紹介する。
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