HDDとNAND型フラッシュメモリの事業を分社化する方針を明らかにしたストレージベンダーWestern Digitalに、立ち消えになっていた“キオクシアとの統合”の話が再浮上した。状況を整理しておこう。
キオクシアとの経営統合に向けた交渉が再開する見込みだと報じられるなど、ストレージベンダーWestern Digitalの今後を左右する状況が、やや込み入ってきた。
かねて臆測が飛び交っていたキオクシアとWestern Digitalの経営統合に関する協議は打ち切りになり、Western Digitalは事業分割の方針を発表していた。HDD、SSD両分野におけるWestern Digitalの方針を整理して、状況をまとめる。
Western Digitalは2023年10月30日(現地時間)に開催した2024年度第1四半期(7〜9月期)の収支報告会で、2024年下半期に分社化する計画を株主に報告した。Western Digitalの社名はHDD事業が引き継ぎ、NAND型フラッシュメモリの事業は切り離して独立するという内容だ。
その決定に至るまでの数カ月は、特にSSDやNAND型フラッシュメモリを取り巻く市場の低迷が顕著になり、Western Digitalとキオクシアの合併交渉がいよいよ加速し、決定する可能性があるという“うわさ”が広まっていた。
そうした中でWestern Digitalは分社化の方針を発表した。その際、同社CEOのデービット・ゲックラー氏は「分社化の決定は既に検討を終えている戦略見直しの一環であり、キオクシアとの合併の可能性とは関係がない」と述べた。
Western Digitalの価値を高めるためには「これが現時点で下せる実行可能な最善策だ」とゲックラー氏は強調した。分社化する理由について同氏が説明したのは、HDD事業とNAND型フラッシュメモリの事業でそれぞれ独自のロードマップを策定し、それを実行に移すための資金を個別に設定できるようになる、という点だった。
2022年、米国のアクティビスト(物言う株主)として知られる投資会社Elliott Investment Managementは、Western Digitalに約10億ドルを投資していることを明らかにした。それと同時に、2つの事業部門を分離することを含め、事業方針の見直しを検討するようWestern Digitalに求めた。
2023年1月には、Western Digitalは米国の未公開株式投資会社Apollo Global ManagementとElliott Investment Managementから、転換型優先株(議決権は付与しないが優先配当の受領権や残余財産分配の優先権がある株式)の発行を通じて9億ドルを調達することを発表。戦略見直しに向けた財務面での強化を図っていた。
「HDD事業もNAND型フラッシュメモリ事業も、単独で成功できる、強力な事業基盤の上で運営されており、分社化によって長期的成功をさらに追求できるようになる」とゲックラー氏は強調した。
一方でこの話とは別に、Western Digitalとキオクシアが合併するという臆測は、2021年ごろから出ていた。両社は3次元(3D)構造のNAND型フラッシュメモリの共同開発を続けるなど、協力関係を構築してきた。さまざまなメディアが報じてきたように、合併の話は極めて現実的な話だったのだ。
合併の話がいったん立ち消えになったのは、2023年10月のことだ。キオクシアに出資している韓国の半導体メーカーSK hynixは、2023年10月後半に開催した決算報告会で「キオクシアへの投資価値に関する全体的な影響を考えると、キオクシアとWestern Digitalの合併は支持できない」という姿勢を表明した。
そうした中でキオクシアとWestern Digitalの合併交渉は破断したものと考えられていた。だが交渉再開に向けた調整が進んでいることを共同通信が2024年1月末に報じるなど、両社が合併する可能性が再び浮上した。
次回は、Western DigitalがHDDとSSDの事業を分割する影響について、技術的な観点から考える。
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