ハイブリッドワークが普及して働き方が変化する中、IT部門は従業員が利用するノートPCやプリンタからセキュリティまで、多方面からIT利用を見直す必要がある。具体的にどのような変化があるのか。3つの観点で解説する。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響で、オフィスワークとテレワークを組み合わせたハイブリッドワークの採用が企業の間で進んだ。パンデミックが終息してオフィス回帰の動きが見られる一方で、ハイブリッドワークを継続する企業は一定数存在する。
ノートPCやプリンタなどのハードウェアや、ソフトウェアにはこれからどのような機能が求められるのか。企業のIT部門は、オフィスで働く従業員と自宅でテレワークをする従業員の、両者に適したハードウェアやソフトウェアを提供する必要がある。そのために考えるべきポイントが3つある。
ハイブリッドワークに適するデバイスや、ベンダーとの契約内容について、IT部門は再考する必要がある。スウェーデンの通信機器ベンダーEricssonは、PCベンダーHPの顧客の一社だ。HPはEricssonが保有するデバイスの90%以上を提供しており、140カ国でハイブリッドワークを実施するEricssonの従業員約13万人がHPの製品を使用する。
Ericssonの従業員は、各自の職務に合わせて調整された各種ノートPCモデルの中からモデルを選ぶことができる。モデルの選択後、デバイスは従業員の自宅もしくはオフィスに配送される。HPで北西欧州のワークフォースソリューション提供責任者を務めるリー・エリオット氏は、「エンドユーザーがメールアドレスを入力して多要素認証(MFA)を実施すれば、10分程度でデバイスを使用できるようになる」と話す。
HPのノートPC「HP EliteBook」シリーズは、ハイブリッドワークに欠かせない以下のような機能を提供する。
2022年4月、英国の調査会社Quocircaは英国、フランス、ドイツ、米国の会社員1021人とIT意思決定者521人を対象に調査を実施し、その結果をまとめたレポート「Quocirca Future of Work, 2025」を同年9月に発表した。回答者の56%は「物理的なワークスペースは、会議など対面でのコラボレーションを目的とした場所としてのみ使用される」と答えており、オフィスの用途や重視されるポイントが変化している状況が明らかになった。
オフィスに設置されるプリンタが今後減少するのは、Quocircaの調査からも明らかだ。従来のオフィスは、印刷、スキャン、コピーの機能を集約的に備える大型複合機を採用するケースが一般的だった。近年はテレワークの影響で、印刷データをインターネット経由で社内プリンタから出⼒できる「クラウドプリント」サービスや、自宅にも設置できるA4サイズ用プリンタの導入が進んでいる。
ハイブリッドワークでプリンタを使用する際の、セキュリティに関する懸念も深刻だ。社外のプリンタを使用した際、出力トレイに印刷物を置き忘れてデータ損失につながるケースや、機密情報を印刷した紙を自宅に持ち帰った際、子どもが落書き用紙として学校に持っていった事例もあるという。
Quocircaの調査によると、完全なペーパーレス化を実現している企業は11%に過ぎず、75%の企業は紙媒体の電子化に取り組んでいるのが実情だ。オフィス回帰により印刷量が回復する業界もあるが、印刷関連のベンダーにとって、ハイブリッドワークに適した製品やサービスの開発は大きなチャンスになり得るとQuocircaは見る。
イノベーション(技術革新)の速度が加速し、新しい製品とサービスが絶えず開発されている。例えば近年、従業員の生産性に重点を置いたAI(人工知能)技術の開発やツールへの組み込みが進んでいる。そうした中で特に注意すべき懸念が、データの流出だ。
Quocircaが2023年11月に公開したブログエントリ(投稿)によると、56%の企業が機械学習をはじめとするAI技術を活用する計画を立てている。ハイブリッドワークを採用するかしないかに関わらず、AI技術の使用は社内データ流出のリスクを伴う。AI技術の使用時に、従業員がデータ保護法に違反する可能性も否めない。
いつの時代も将来を予測するのは難しいが、企業におけるハイブリッドワークの採用やAI技術の活用は今後も続く見込みだ。セキュリティベンダーAirbus ProtectでITサイバーセキュリティアーキテクチャのテクニカルオフィスリーダーを務めるライオネル・ガラコッチェ氏は、「企業は、直面する脅威のレベルがかつてないほど高い事実を従業員に周知し、理解を促さなければならない」と警告する。
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