データ分析ニュースフラッシュ
三菱重工が「Azure OpenAI Service」を使う理由 生成AIツールをどう作った?
三菱重工の生成AIツール開発事例や、AWSが発表した製薬業界における生成AI活用動向、セキュリティ領域における生成AI動向予測など、生成AI関連の主要なニュースを紹介する。
2022年11月にAI(人工知能)技術を搭載したチャットbot「ChatGPT」が登場したことをきっかけに、テキストや画像などを自動生成するAI技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)ブームが起きた。さまざまな企業が生成AIや大規模言語モデル(LLM)の活用に乗り出し、最近では実用化段階に入った事例も見かけるようになった。
生成AIの実用化においては解決すべき課題が山積している。LLMが事実に基づかない回答を出力する「幻覚」(ハルシネーション)、社内データの流出などさまざまだ。企業はどのような手段でこうした生成AIの課題を解決しているのか。Microsoftの「Azure OpenAI Service」を活用した三菱重工業の生成AIツール開発事例や、Amazon Web Services(AWS)が発表した製薬業界の生成AI活用状況、セキュリティリスク評価ベンダーSecurityScorecardによるセキュリティ領域の生成AI動向予測など、生成AIに関するニュースを3本紹介する。
三菱重工が生成AIツール開発 「Azure OpenAI Service」を使う理由
三菱重工業は、発電プラントの監視やデータ収集、分析機能を有するクラウド型の運用保守サービス「TOMONI」を提供している。同社は2023年5月に、現場経験のある人材の減少といった問題を解決するため、TOMONIの新機能として、生成AIを活用したナレッジ検索機能の開発に着手した。同社は社内データ流出とハルシネーションへのリスク対策の課題を解決するため、OpenAIのモデルをMicrosoftのクラウドサービス群で運用する「Azure OpenAI Service」を採用。三菱重工業のセキュリティ基準とLLM利用規約に準拠していることと、モデルの性能が採用の決め手となった。開発では、ハルシネーションを回避し、自社データに基づいた回答を出力するように「RAG」(検索拡張生成)(注1)の仕組みを構築した。同年7月に新機能として「TOMONI TALK with ChatGPT」を社内の一部部門に展開。2024年2月時点ではメールや報告文章の推敲(すいこう)などに利用している。同社は今後、活用範囲の拡大に取り組むと同時に、将来的には扱うデータの種類を広げ、社内外における意思決定の迅速化を支援する計画だ。(発表:三菱重工業、Microsoft<2024年02月20日>)
※注1 学習データ以外に外部のデータベースから情報を検索、取得し、LLMが事前学習していない情報も回答できるように補う手法。
製薬業界のAI活用が本格化、リスク回避の仕組みとは AWSが発表
AWSは2023年11月に開催した年次イベント「AWS re:Invent 2023」で、製薬業界における生成AI活用について紹介した。アマゾンウェブサービスジャパンの益子直樹氏(技術統括本部エンタープライズ技術本部ヘルスケア&ライフサイエンス部長)は、研究から開発、製造、販売まで、“製薬バリューチェーン”の全領域で進む状況を解説した。製薬会社PfizerはLLMを特許出願用の文章作成に役立てている。製薬会社Gilead Sciencesは内部文書を参照できるQ&AシステムをLLMで構築した。ヘルスケア企業Johnson & Johnsonは、回答の正確性を確保するためにRAGを採用。電子カルテをはじめとする各種データをクラウドストレージ「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)にインデックス化して格納し、検索サービス「Amazon Kendra」で該当部分を検索して抜粋する仕組みを構築した。益子氏は、製薬業界におけるLLM活用の課題となるハルシネーションの対策として、RAGの採用や、データソースを回答に含めるなどの手法を挙げた。(発表:アマゾンウェブサービスジャパン<2024年02月07日>)
生成AIでサイバー攻防戦が激化、モデルに変化も SecurityScorecardが予測
サプライチェーンのセキュリティリスク評価サービスを提供するSecurityScorecardは、2024年のセキュリティに関する予測を発表した。同社は「生成AIの活用が攻撃と防御の双方で進む」と予測している。攻撃面では、攻撃者がLLMを悪用してエクスプロイト(脆弱<ぜいじゃく>性悪用プログラム)作成にかかる平均時間を削減する結果、2024年はゼロデイ脆弱性(パッチ未配布の脆弱性)を悪用した攻撃が指数関数的に増加するという。防御面においてもLLM活用が進む。SecurityScorecardはLLMを用いて、競合他社のセキュリティリスク評価に関する情報や、業界、国ごとのセキュリティリスク調査に役立てている。別の視点では「今後セキュリティ部門が扱う言語モデルはLLMから小規模言語モデル(SLM)に移行する可能性がある」と同社は予測する。SLMはLLMと比較してトレーニングにかかる演算量が少ないため、コストや時間を抑えつつ、専門的なデータを反映できるというメリットがある。(発表:SecurityScorecard<2023年12月13日>)
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