VMware買収がIT戦略に与える影響【前編】
「VMwareの仮想化」はBroadcom配下でどうなる? “仮想化の歴史”は終わらない
VMwareを買収したBroadcomの新たな方針は、VMwareが設立当初から取り組んできた事業において何を意味するのか。オープン化からの仮想化の歴史を振り返りつつ、VMware製品群の変更点をまとめる。
Broadcomが2023年11月に買収を完了させて話題を呼んだVMwareは、1998年に米国で誕生した仮想化ソフトウェアベンダーだ。Broadcomによって買収される以前にも、VMwareは買収を経験してきた。2004年にEMCがVMwareを買収し、2016年にはそのEMCをDell Technologiesが買収した。2021年にDell TechnologiesがVMwareの株式を売却し、今回のBroadcomによるVMware買収へとつながっている。
そうした事業体制の変遷と比較してみると、BroadcomがVMware買収後に打ち出してきた方針は、ユーザー企業や市場にさまざまな点で影響を与える変更だったと言える。元をたどるとVMwareは、オープン系システムが台頭するのとともに成長してきたベンダーだ。その歴史をたどりつつ、Broadcomによる買収後のVMware製品群がどこへ向かうのか、新たに打ち出された変更とは何なのかをまとめる。
オープン化と共にあった「VMwareの仮想化」は今後どうなるのか?
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「VMware買収」のこれまで
VMwareが設立した当時、データセンター業界はいわゆる「オープン化」の流れの中にあった。プロプライエタリ(ソースコード非公開の独自システム)なシステム、要するにベンダー独自の仕様に基づくシステムから、オープン系システムに移行する動きが起きていた。オープン系システムとは、技術的な仕様が公開されている、あるいは標準的な仕様に準拠するソフトウェアやハードウェアを組み合わせて構築するシステムを指す。例えばIntelのx86系プロセッサを搭載するサーバで稼働するシステムがある。OSとしてはMicrosoftが提供する「Windows NT」があった他、オープンソースソフトウェア(OSS)として「Linux」が台頭していた。
データセンターでそうした変革が起きている中で、VMwareはx86系サーバで「ハイパーバイザー」を使用し、「仮想マシン」(VM)を構成するための方法を提供した。同社はその後、そうしたサーバ仮想化の製品群だけではなく、デスクトップ環境にリモートアクセスするための仕組みである「仮想デスクトップインフラ」(VDI)や、モバイルデバイスを一元管理するための仕組みである「モバイルデバイス管理」(MDM)にも事業を拡大した。データセンターに仮想化の手法をもたらし、クラウドコンピューティングの仕組みでITインフラを管理する道を切り開いてきたのがVMwareだった。
Broadcomによる買収が完了後、VMwareの製品戦略はどこに向かっているのか。これは、突き詰めると次の2点にまとめることができる。
- インフラの仮想化製品を使い、ユーザー企業が自社独自のクラウドインフラを構築する「プライベートクラウド」や、プライベートクラウドとクラウドサービスを連携させる「ハイブリッドクラウド」の構築を支援すること
- クラウドインフラの構築支援をするのと同時に、ユーザー企業のインフラをモダナイゼーション(最新化)するための手法を提供すること
Broadcomは、クラウドインフラの構築と運用をするためのソフトウェア群である「VMware Cloud Foundation」(VCF)への重点的な投資を計画している。このVMware Cloud Foundationにはサーバ仮想化やストレージ仮想化、ネットワーク構築など、プライベートクラウドを構成するために必要なソフトウェア群が含まれる。
その他VMwareは主要な製品として、アプリケーションのデプロイ(配備して利用可能な状態にすること)を加速するためのコンテナ管理製品群「VMware Tanzu」や、アプリケーション通信の負荷分散をするためのロードバランシング機能、セキュリティ機能などを提供してきた。そうしたVMwareの製品は、Broadcomによる買収後に「VMware by Broadcom」のブランドの下で提供されるようになった。
VMwareの製品ポートフォリオはどうなるのか?
VMware by Broadcomの今後の方針として重要なのは、Broadcomがクラウドインフラ構築用の製品群を重視していることだけではない。同社が製品ラインアップの簡素化を掲げていることも忘れてはいけないポイントだ。
BroadcomのCEOホック・タン氏は、2023年12月に開催した第4四半期決算報告会で、VMwareの「エンドユーザーコンピューティング(EUC)事業」を売却する方針を明らかにした。このEUC事業には、VDI製品である「VMware Horizon」が含まれている。買収後に一部の製品群が売却になる可能性が予測されていた中で、BroadcomとしてはVDIを提供する方針ではないことを認めた形だった。その表明の通り、2024年2月26日(現地時間)に、投資会社KKRがBroadcomからEUC事業を買収する契約を結んだという発表があった。その手続きが完了すると、EUC事業はBroadcomからは切り離された会社が提供することになる。
Broadcomは製品ポートフォリオを簡素化するのと同時に、ソフトウェアの「永久ライセンス」の販売を終了してサブスクリプション型の提供モデルに全面的に移行することを決めた。その方針の一環で、ハイパーバイザー「VMware vSphere Hypervisor」の無償版がEOGA(一般提供終了)になった。これの代替製品は存在しない。
次回はライセンスを含めて、VMware製品群の変更がユーザー企業にどのような影響を与えるのかについてまとめる。
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