“HDD老舗”のWestern Digitalに迫る「SSD分社化の宿命」ストレージベンダー再編の影響【前編】

Western Digitalが公表しているHDDおよびSSD事業分社化のタイミングが迫っている。この再編による影響と共に、同社がなぜ分社化をしなければならなかったのかを考える。

2024年10月01日 08時00分 公開
[Adam ArmstrongTechTarget]

 HDDとSSDの両事業を分社化する方針を明らかにしているストレージベンダーWestern Digital。同社は共に注力してきたHDDとSSDの事業をなぜ分社化しなければならなくなったのか。その分社化のタイミングが迫る中、この事業再編による影響を踏まえて分社化の背景を探る。

「SSD分社化」は逃れられない宿命だった?

 Western Digitalが発表している計画によれば、分社化した後はHDD事業がWestern Digitalの社名を引き継ぐ。スピンオフするSSDおよびフラッシュメモリ事業の新会社の社名は未定だ。Western Digitalは2024年内に分社化すると公表しているが、その詳しいタイミングは明らかになっていない。

 Western DigitalはHDDベンダー3社のうちの1社だ。他にはSeagate Technologyと東芝デバイス&ストレージがHDDを提供している。Western Digitalの再編がこのHDD市場に与える影響はそれほど大きくないと業界アナリストはみている。

 1970年、Western Digitalは半導体試験装置のメーカーとして創業した。1980年代にストレージ事業に参入し、ストレージのコントローラーを手掛けてきた。1990年代にはHDDの製造に乗り出し、HDDメーカーとして知られるようになった。

 SSD市場に参入したのは、SSDベンダーSiliconSystemsを買収した2009年のことだ。2016年にはSanDiskを買収してSSD製品群を拡充した。同社はそうして発展させてきたSSD事業を、今回の再編で切り離そうとしている。

 調査会社TRENDFOCUSのアナリスト、ジョン・チェン氏は「これまでSSDとHDDを同時に成功させたベンダーはない」と語る。チェン氏によると、フラッシュメモリおよびSSDの事業は、HDDの事業と似ているように見えて実は根本から異なる。フラッシュメモリを製造するには多大な資本が必要だ。市場の価格変動が激しいという難しさもある。一方、HDDはある程度同じ装置を使いながら、データ記録がより高密度な新型の製品を製造できる。

HDD、SSD市場への影響

 「Western Digitalは分社化することで、それぞれの主力製品に資本を集中させられるようになる」。調査会社IDCのアナリスト、エド・バーンズ氏は分社化のメリットをそう語る。HDD事業の観点から見ると、フラッシュメモリの市場に気を取られることなくHDD事業に専念できるようになるということだ。

 専念することのメリットは、事業の拡大だけではない。「会社の規模を縮小することで、注力すべき領域に照準を絞ることもできる」とバーンズ氏は言い添える。

 チェン氏も同じ見方をしている。「フラッシュメモリの変動性がなくなれば、経済的な負担が減り、Western Digitalは進む方向性を決めやすくなる」と同氏は指摘する。

 SSDおよびフラッシュメモリ市場でも、Western Digitalの分社化による大きな変化はないとみられる。ただし新会社は一定のメリットを得られる可能性がある。「フラッシュメモリの新会社は新しい経営陣で新たな照準を見据え、成長が期待できる企業向けSSD分野で高成長を目指せるようになる」。調査会社Gartnerのアナリスト、ジョセフ・アンズワース氏はそう語る。


 次回は、Western Digitalの分社化が業界の他ベンダーに与える影響を考察する。

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