無線LAN(Wi-Fi)の最新規格「Wi-Fi 7」では旧世代の無線LANに比べて複数の新機能が実装されているが、現状は導入している企業は限られている。企業がWi-Fi 7への移行を決断しない背景にあるものは何か。
無線LAN規格「Wi-Fi 7」(IEEE 802.11be)に準拠した無線LAN アクセスポイント(AP)が市場に出回り始めたが、企業によるWi-Fi 7導入は進んでいない。「Wi-Fi 5」(IEEE 802.11ac)や「Wi-Fi 6」(IEEE 802.11ax)によって構築した無線ネットワークがまだ広く企業の役に立っている。以降で紹介する通りWi-Fi 7では幾つもの進化が起きているにもかかわらず、なぜ企業はWi-Fi 7に移行しないのか。
調査会社AvidThinkの創業者でプリンシパルのロイ・チュア氏によれば、Wi-Fi 7は次のような高度な機能を実装している。
大半の企業ネットワーク内のクライアントデバイスはWi-Fi 7に準拠しておらず、これらの新機能を活用することができない。「古いクライアントデバイスがネットワークに多数あると、新しい無線LAN規格にアップグレードする意欲が下がる要因になる」とチェア氏は分析する。無線LANだけアップグレードしてもネットワーク機器や、エンドユーザーが利用するクライアントデバイスの処理性能にユーザーエクスペリエンス(UX)は左右されるからだ。
ネットワークエンジニアのコミュニティーを運営するNetwork Automation Nerdsの創業者であるエリック・チョウ氏は「統一されたベンダーサポートやドキュメント、ネットワークに関する知識が不足していることも、企業におけるWi-Fiのアップグレードが進まない主な要因だ」と述べる。
無線ネットワークに関するコンサルタントを提供するEJL Wireless Researchのプレジデント、アール・ラム氏は「通信容量やスループット、その他の性能指標がアップグレードを必要とするしきい値を超えたときに、Wi-Fi 7にアップグレードする組織は増える」と予測する。
各種業界団体の調査は、企業が間もなくWi-Fi 7を導入する計画であることを示している。例えば、無線LANの業界団体Wireless Broadband Allianceの2023年11月のレポートでは、回答した200組織のうち41%以上が、2024年末までにWi-Fi 7を導入する予定だと答えている。7.5%は、すでに導入済みと回答した。
チュア氏によれば、AvidThinkの調査結果もWBAが出した調査結果を肯定している。「企業は今後12〜18カ月の間にWi-Fi 7にアップグレードしたいと考えているようだ」(同氏)
無線LANをアップグレードする前には、ネットワークスイッチや無線LANケーブルなどのインフラを段階的に強化することで、ネットワーク全体の伝送容量や信頼性を高めることができる。
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