光ファイバーでも無線LANでもない「光無線通信」とは何か?光無線通信の利点と課題【第1回】

光を利用してデータを送受信する光無線通信には、他の通信にはないメリットがある一方で、制約やデメリットも存在する。基礎から解説する。

2024年10月02日 10時15分 公開
[Venus KohliTechTarget]

 1990年代以降、世界各国で光を利用してデータを伝送する「光無線通信」(Optical Wireless Communication、以下、OWC)の導入が進んでいる。OWCには他の通信方式では容易に実現できないメリットがある一方で、特有の課題もある。OWCとは何かを基礎から解説する。

「光無線通信」とは何か? 必要な要素は?

 OWCは、光を用いてデータを伝送する技術だ。データの伝送に物理的な光ファイバーを使用しない。利用する光は、波長に応じて主に以下の種類がある。

  • 可視光線(VLC)
    • 波長380〜700ナノ
  • 赤外線(IR)
    • 波長750ナノ〜1ミリ
  • 紫外線(UV)
    • 波長10〜400ナノ

 OWCによるネットワークを構築するには以下の要素が必要となる。

  • 光源
    • LEDやレーザーダイオードなどの半導体部品
    • 通常、屋根や埋め込むか天井に設置する
  • エンコーダー(データを他の形式に変換する機器)
    • 電気信号を光信号に変換する装置
  • モジュレーター(変調器)
    • データを伝送しやすいように信号を変調する装置
  • トランスミッター(送信機)
    • データを送信する装置
    • 目と皮膚に対する安全基準に従う必要がある

 トランスミッターがデータを光信号に変換して、さらに最適な信号に変換する「変調」のプロセスを経てから空間を経由して伝送される。光信号を受信する側にもさまざまな機器が必要だ。

  • フォトディテクター(光検出器)
    • 入射する光信号を検出する
  • 増幅器
    • 光信号の品質を向上させる
  • デモジュレーター(復調器)
    • 変調されたデータを元の形に戻す
  • デコーダー
    • エンコードしたデータを元の別形式のデータに復号する

 OWCによるデータ伝送を実現するには、受信機と送信機の間に遮蔽(しゃへい)物が無い状態である「見通し」(LOS:Line of Sight)の確保が必要だ。十分なスペクトル効率(一定の周波数帯域幅で伝送可能なデータ量)を達成するために、送信機に向けて検出面をできる限り広く確保するように受信機の角度を保つ必要もある。送信機からの光信号を受信すると、受信機はそれを復調し、デコードして元のデータを抽出する。


 次回はOWCのメリットを紹介する。

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