無線LANの最新規格「Wi-Fi 7」では複数の新機能が実装されているが、導入している企業はまだ限られている。企業がWi-Fi 7への移行を決断しない背景には何があるのか。
無線LAN規格「Wi-Fi 7」(IEEE 802.11be)を導入している企業はまだ限られている。大半の企業は依然として「Wi-Fi 5」(IEEE 802.11ac)や「Wi-Fi 6」(IEEE 802.11ax)といった旧世代の無線LAN規格を使い続けている。企業はなぜWi-Fi 7に移行しようとしないのか。
無線LAN アクセスポイント(AP)のライフサイクルを考慮すると、Wi-Fi 7への移行対象となる企業は、主にWi-Fi 5を利用している企業だ。Wi-Fi 5の性能に不満がなくとも、企業が無線LANのアップグレードを検討する理由は複数ある。通信大手Verizon Communicationsのベス・コーエン氏は、企業がWi-Fi 5からの移行を検討する主な理由として次の2点を挙げる。
独立系無線通信アナリストのジェフ・ケーガン氏によれば、すでにWi-Fi 6の拡張版である「Wi-Fi 6E』を使用している企業は、6GHz帯の周波数帯で動作可能なクライアントデバイスを導入している。そうした企業は、ネットワーク技術を定期的にアップグレードすることの重要性を理解している。一方で「それらの企業はWi-Fi 6EからWi-Fi 7にアップグレードする十分な意義をまだ見出していない」とケーガン氏は分析する。
調査会社AvidThinkの創業者でプリンシパルのロイ・チュア氏は、企業が無線LANのアップグレードを決める要因として次の要素を挙げる。
「大半のクライアントデバイスでWi-Fi 6EやWi-Fi 7の機能を生かし切れないのであれば、APを移行する意味はほとんどない」とチェア氏は指摘する。チェア氏によれば、企業の近年のIT投資ではクラウドサービスや生成AI(人工知能)技術に重点が置かれ、一部のインフラは後回しにされる傾向にある。
ケーガン氏によると、エンドユーザーは無線LANのアップグレードにあまり関心を持っていない。一方で、企業は今後さまざまなネットワーク技術を導入することを計画している。例えば、関心が高まっている分野の一つにプライベート無線ネットワークがある。
次回はWi-Fi 7の新機能と、ネットワークの専門家が無線LAN分野の動向をどのように分析しているのかを紹介する。
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