Nutanixがアジア太平洋地域で業績を伸ばしている。背景には競合であるVMwareがBroadcomによって買収されたことがある。同社の戦略やユーザー企業の本音とは。
半導体ベンダーBroadcomによる仮想化ベンダーVMwareの買収を契機に、VMware製品のユーザー企業に不安が広がっている。中には、VMware製品の利用をやめる「脱VMware」を検討するユーザー企業も出ているが、そうしたユーザー企業からの注目を集めているのがNutanixだ。Nutanixは実際にアジア太平洋(APAC)地域での存在感を強めている。Nutanixの製品を採用するユーザー企業は何に注目しているのか。
Nutanixの最高経営責任者(CEO)ラジブ・ラマスワミ氏は、英Computer Weeklyの取材で同社の戦略について説明した。同氏によるとNutanixは、オーストラリア、インドネシア、マレーシア、台湾、香港を含むAPAC地域における2024年の売り上げが、前年比で10%以上成長した。ラマスワミ氏によれば、Nutanixの製品群はさまざまな業界のニーズを満たしており、それが成長につながっている。「どの企業にも、モダナイズしてクラウドサービスで実行したいアプリケーションがある」(同氏)
アプリケーションのモダナイズ需要に加えて、Broadcomが買収したVMware製品の今後の方向性について、ユーザー企業の間で不安が高まっていることが、Nutanixへの追い風となっている。「Broadcomの買収はVMware製品のユーザー企業にとって大きな不安材料だ」とラマスワミ氏は述べる。同氏は、さまざまな組織がVMware製品を使い続けるか、それとも代替策を探るべきか悩んでいる、と指摘する。
BroadcomはVMware製品の永続ライセンスを廃止して、サブスクリプションライセンス移行することユーザー企業に要請している。ライセンス変更によってコストが上昇したユーザー企業は、長期的なIT戦略を見直し始めている。
こうした状況を受けてラマスワミ氏は、Nutanixが長期的なパートナーシップに注力していることを強調する。「価格を3〜4倍に引き上げるような短期的取り組みがどのような結果を招くことになるかは分かっている」(同氏)
ラマスワミ氏によると、APAC地域ではクラウドサービスとオンプレミスインフラを併用する「ハイブリッドクラウド」戦略を導入しているユーザー企業はまだ限られているが、ハイブリッドクラウドが最適な戦略であるという認識がユーザー企業の間で広がっているという。
Nutanixの製品群は、ハイブリッドクラウド戦略を採用するユーザー企業に適しているとラマスワミ氏は強調する。同氏はその一例として、オーストラリアの株式管理サービス事業者のComputershareの事例を挙げた。ComputershareはVMwareのハイパーバイザー「VMware ESXi」による仮想マシン2万4000台を、Nutanixのハイパーバイザー「AHV」に1年で移行した。
「一般的なユーザー企業、特に大企業がハイパーバイザーを移行するには数年必要だ」とラマスワミ氏は強調する。同氏は移行期間が長引く主な要因を以下に挙げる。
さらにファイアウォールの設定や、マイクロセグメンテーション(ネットワークを複数のセグメントに分割する技術)構成を複製する作業は複雑で、時間がかかりがちだ。ラマスワミ氏は、Nutanixがユーザー企業と緊密に連携してこれらの課題を乗り越え、スムーズな移行を実現すると強調した。
ラマスワミ氏は「NutanixはAI(人工知能)技術の導入を推進する企業だ」と語る。同氏はAIアプリケーションを、データソースから物理的に近い場所で実行することが重要だと指摘。「特にコストやセキュリティ、規制などの理由からデータをオンプレミスインフラに置きたい組織では重要だ」と述べた。
NutanixはAI用のインフラやツールをオンプレミスインフラで利用しやすくする「Nutanix GPT-in-a-box」(以下、GPT-in-a-box)を提供している。ラマスワミ氏は、ユーザー企業や開発者がGPT-in-a-boxを使うことで、オープンソースの機械学習ツール導入や、事前学習済みAIモデルの導入などを効率化できると説明する。
次回はシンガポールの企業SBS TransitのNutanix製品導入事例を紹介する。
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