MicrosoftはAIツールを導入したことで、営業活動の効率化を実現した。しかし、その導入に当たっては、幾つかの課題にも直面したという。
Microsoftは、営業活動の効率化を目指してAI(人工知能)ツールを活用している。その狙いは、「提案依頼書」(RFP)や「情報提供依頼書」(RFI)に対する回答作成をよりスムーズに実施することだ。RFPとRFIは、企業や政府などの発注者が製品やサービスを調達するために、受注先候補に送る文書を指す。製品やサービスの提供事業者は、RFPやRFIの内容を基に提案し、契約の獲得を目指す。
増え続けるRFPとRFIの管理負担を減らすために、Microsoftは2020年にAI機能を搭載したRFP管理ツール「Responsive」を導入。Responsiveの導入により業務効率化は順調に進んだが、チームは幾つかの課題に直面した。
1つ目の課題は、ガバナンス審査による導入遅延だ。Microsoftの厳格な内部ガバナンス審査の影響で、導入は当初の予定より数週間遅延したという。審査では、セキュリティ、「責任あるAI」(公平性や透明性、安全性の確保を考慮したAI技術)、アクセシビリティー、ソースコードの品質などが確認された。
2つ目が、自動化への過度な依存だ。Responsiveのユーザーは、AIが生成した初稿の正確性を十分に確認しない傾向があったという。提案管理者や営業担当者、専門家(SME)は、自動生成された内容を確認し、必要に応じて修正する必要がある。不正確な情報が提案書に記載されたまま提出されると、組織の業績に悪影響を及ぼしかねない。この課題を克服するために、人間が最終チェックを実施する「ヒューマン・イン・ザ・ループ」を徹底し、明確なガイドラインを策定する必要がある。
3つ目が、法的・専門的表現の維持が困難であることだ。AIツールは回答を生成する過程で、元のデータを要約したり、言い換えたりするため、法的文言や特有の表現が変更されるリスクがある。その結果、法的リスクや信用の低下といった悪影響を及ぼしかねない。
この問題に対処するため、ジョーダン氏のチームはMicrosoftの法務部門およびResponsiveの開発チームと連携し、「一言一句変更不可」の内容にはタグを付与し、AIが原文のまま回答する仕組みを導入したという。
これらの課題に直面したものの、ResponsiveのAI機能を導入したことで、提案チームや営業担当者の作業時間は大幅に削減されたという。成長する組織にとって、業務効率化は極めて重要だ。「競争優位性を確保し、少なくとも競合に後れを取らないための強力な武器となる」とジョーダン氏は話す。
ジョーダン氏によれば、AI導入を成功させる秘訣は「単なるツールの導入にとどまらない、組織全体での文化醸成」にあるという。失敗を恐れず、試行錯誤を歓迎する文化を築くことで、チーム内のイノベーションが促進されるからだ。
AI導入を目指す場合、リーダーに全てを任せるのではなく、現場のチームが主体的に関与することが不可欠だ。現場のチームこそが実務プロセスを熟知しており、日々の業務課題に最も精通しているからだ。
AI技術をどのように提案業務に組み込むか、現場のチームが上層部に伝えなければ、逆に指示を受ける立場になってしまう。「チームのかじは自分たちで取る方がいい」とジョーダン氏は話す。
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