Ask The Expert
【Q&A】プロセスだけではプロジェクトの成功は見込めない
質問:わたしはプロジェクトマネジャーですが、即断即決が多く、6週間以上先の(細かい)計画は立てません。それでも極めてうまくいくことが多く、ほかのプロジェクトマネジャーから「プロセス」を教えてほしいと頼まれます。こんな無鉄砲なやり方から、手本となるようなプロセスを導き出すことはできるでしょうか。
わたしのキャリアで何度も目にしてきたサイクルがある。わたしはこれを「FSOPサイクル」、つまり「Flying by the Seat Of your Pants Cycle」(勘や経験を頼りに行動するサイクル)と呼んでいる。成功したパターンやアプローチを、より幅広い問題に当てはめようとする中で、このサイクルは何度も繰り返されてきた。これが、質問者の成功が、はたからどう見えるかを理解してもらう一助になるといいのだが。
このサイクルは、心理療法家のバージニア・サティアによる変化モデルをプロセス進化の問題に当てはめて描いてみたものだ。
わたしはこれを、ソフト開発のコンテキストにおけるプロセスの意義について考えながら作り上げた。反復可能な開発プロセスという考え方は、多くのIT専門職にとって究極の目標のようだが、わたしは信奉しない。それは神話にすぎないと思う。開発プロジェクトの成功を保証するために、たとえプロセスで何かできたとしても、たいした役には立たないと考える。特定のプロセスに従えば誰でも飛行機を発明できるとか、確立されたプロセスを使えば北西航路を発見できると考えるのと同じくらい、理屈に合わない。
プロセスは、プロジェクトの予算支出や人員配置といった、大切だが周辺的な局面を継続的に把握する助けにはなるが、プロジェクト成功の保証はできない。プロセスを重視し過ぎると、プロジェクト関係者に処理できないほどの負担が掛かり、失敗を招くことも多い。
プロジェクトの成功とプロセスへの固執を結び付けるIT専門職や識者が多いのは不合理だと確信している。わたしは過去10年で多数のプロジェクトにかかわってきたが、この2つに相関関係があるとは思っていない。実際、わたしが携わった中で成功したプロジェクトは、厳密なプロセスで邪魔されたりしないのが普通だった。むしろ、勘で事を進めるタイプの優秀で目的意識がはっきりした人物が担っていた。こうした人物は、成り行きで事を進めているわけではない。実際はその逆だ。常に計画を立て、継続的に、時には毎日それに立ち返っていた。進展させ、障壁を除き、できるだけ効率的なリソース利用のため計画を調整することに力を入れていた。計画は毎日立てるが、長期計画は立てない。大雑把な日々の計画と当面の目標に的を絞った行動の組み合わせこそ、今のわたしがよしとする唯一の「プロセス」だ。
ここで1つ言っておきたいことがある。わたしはこの「プロセス」によってプロジェクトの成功が保証されると確信しているわけではない。ルイスとクラークによる北西航路発見の助けになるプロセスなどあり得なかった。そんなものは存在しないのだ。物事には実現不可能なことがあり、たとえ些細なことであっても、プロセスによって不可能が可能になることはない。
ITは、プロセスが宗教的にあがめられている数少ない分野の1つだ。例えば多くのIT専門職のプロセスに対する考え方と、科学者の科学的手法についての考え方を比べてみるといい。科学的手法によってがんの治療法発見の成功が必ず保証されると、科学者が信じているだろうか。もちろんそんなことはない。科学的手法は、研究や実験を通じて学んだことが信頼できる真実かどうかを保証する一助となる。しかしそれでも失敗する可能性はあり、そして普通は失敗するものだ。
では、プロセスをどう位置付ければいいのだろう。わたしの考えでは脇役だ。プロジェクト管理の特定の局面がうまくいくことを保証するために使うツールの1つであるべきだ(経費の把握、顧客への料金請求、ベンダー選定など)。運転席に座らせるべきものではない。プロジェクト計画テンプレートに定義されたフェーズや行動として出てきてもいけない。これは目標に到達する助けにはならない。優秀な人物を運転席に座らせ、現在地から目的地までの行き方をその人物に見つけてもらうことだ。目標に到達するにはこの方法しかない。プロセスだけではそこに連れて行ってはくれないのだ。
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