BPMは厳しいときを切り抜けるための一時しのぎと見られがちだが、その主眼は継続的な向上にあるという。
ビジネスプロセスマネジメント(BPM)は2009年、景気低迷の中でプロセス合理化と効率化の手段として再浮上してきた。そして今後も、時には斬新な手法で、全社的なプロセスワークフロー向上の助けになりそうだ。
BPMで成功を収めたIT担当幹部2人が過去1年を振り返り、その教訓と、同様のメリットを達成するにはどうしたらいいかを語ってくれた。
サウスカロライナ医科大学(MUSC)の最高執行責任者(COO)、ステュワート・ミクソン氏は苦境に立たされていた。大学にあるのはレガシーシステムとメインフレーム、統一性のないアプリケーションばかりだったが、時間のかかるERP導入に踏み切るだけの予算もリソースもなかった。
IT関係者の間ではBPMよりERPの方が理解度も知名度も高く、多くのステークホルダーがまず選ぶのはERPだったが、ミクソン氏のチームは、手早くかつ効率的にビジネスプロセスを整理できるBPMソフトを採用することにした。導入から6週間でMUSCは、ERPより低コストで導入も容易なBPMソフトを使い、情報転送エラーが起きる頻度を劇的に減らすことができた。
もし新しいERPを購入できるだけの予算があったとしても、実装にはあと2年以上かかっていただろうとミクソン氏は言う。
BPMのもう1つのセールスポイントは、ERPシステムのバックエンドで変化をもたらそうとした場合に比べ、BPMを通じたビジネスルール変更の方が手間が掛からないことだという。
「新しいERPがいかに有望に思えても、新しいシステムなどの追加が必要になることを忘れてはならない。それでは問題は解決しないだろうというのがわたしの個人的な意見だ」(ミクソン氏)
しかしミクソン氏によると、このことは見過ごされがちだという。BPMとは何かをまだ理解していない人が多いためだ。「善意にあふれ、合理的で知識が豊富な同業者でも、BPMは厳しいときを切り抜けるための一時しのぎであると思っている人がいる。新しいERPを購入してBPMに入れ替えれば問題がすべて解決するという認識がまだ一部に残っている」(ミクソン氏)
景気が回復したときに、BPMは一時しのぎ、あるいは別のシステムへのつなぎだと見なされるのを防ぐため、IT部門は常にその成功を説き続けなければならない。「ただそれを導入して後は忘れてしまい、それでコンセプトが理解してもらえると思ってはいけない」(ミクソン氏)
複数の拠点を持つ中堅規模の組織では、各拠点の従業員がそれぞれ独自のやり方で業務をこなす状況に陥りがちだ。これは効率が悪いだけでなく、情報とデータの流れが統一されない原因にもなる。住宅投資会社Waterton Residentialの最高技術責任者(CTO)、ジョン・ビリム氏のケースがまさにそれだった。ビリム氏は、社内の効率の悪さと統一性のなさに対処するためBPMソフトを導入した。
結果は比較的早期に表れた。ビリム氏は言う。「統一性ができたことは、特に別々の部門から管理職に情報を提出する場合においては大きかった。これで最終データの全社的な理解が行き渡るようになり、プロセス全体の効率が上がった」。
従業員とともにプロセスのマッピングとワークフロー定義に取り組んだことにより、特定の業務が全体のどの部分にどのように組み込まれているかを示しやすくなり、教えるのも容易になったともビリム氏は言う。「BPMのおかげで従業員は、自分のしていることがどのような成果をもたらすのかを把握しやすくなり、より大きな全体像の中で参加意識を高められる」(同氏)
ビリム氏によると、ビジネスプロセスの定義にかかわる主な関係者が、第一線で起きていることを正確に把握しているとは限らず、マッピングの段階で仮定ばかりが多過ぎるということもあり得る。BPMソリューションをいったん稼働させた後も、ユーザーから提案されたプロセスの変更や修正を取り入れる柔軟な姿勢を保った方がいいとビリム氏は助言する。
「いったん導入したら、従業員からフィードバックを募ることだ。大抵の場合、考えてもみなかった事柄が出てきたり、もっと良いやり方が出てくるものだ」(ビリム氏)
ビリム氏によると、上層部がマッピングやワークフロー作成の重要性を理解せず、時間の無駄だといわれることも時にはある。しかし、これをやることは大切であり、成果はあると同氏は言う。
「従業員が今日実際にやっていることを上層部に示すために、そして効率が高まっていることを証明するために、プロセスマッピングを使ってほしい」とビリム氏は話している。
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