Egenera BladeFrame導入事例
【事例】「仮想化システムを3週間で完成せよ」――スピード構築成功のウラ側
不正アクセスによるサービス停止を経験したゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)は、3週間で新システムを構築した。スピード構築こそがリスク軽減につながるというその発想はどのようなものなのか。
中国市場への展開も開始
2000年5月に設立されたゴルフダイジェスト・オンライン(以下、GDO)は、インターネットによる「リテールビジネス」「ゴルフ場ビジネス」「メディアビジネス」の3本を軸にビジネスを伸ばしてきた。気軽にゴルフを楽しめる環境を作り、ゴルファーの活性化とゴルフ人口の拡大を目指している。2004年に東証マザーズに上場し、2009年9月には同社サイトの会員制度「GDOクラブ」の会員数が150万人を突破した。
不況にもかかわらず日本のゴルフ市場は順調に伸びており、日本のゴルフ人口は現在1000万人前後だといわれている。また、中国では日本を伸び率では上回っており、今後の成長が大いに期待できる市場となっている。GDOは、このほど発表した中期経営計画で中国と米国市場への事業展開を明らかにした。2007年から2009年までの3年間で連続して増収増益を達成しているGDOにとって、この挑戦は「機が熟した」といったところだろう。
発表された海外展開の具体的なプランでは、中国のゴルフ総合サービス大手企業と提携して、中国の富裕層に日本へのゴルフ旅行などを販売するという。今後もGDOの海外展開はますます活発化していくと考えられるが、そこでこれまで以上に重要性を増すのが同社のITインフラの安定性である。GDOにとってITインフラは事業の根幹を成すものであり、ひとたび安定性を失えばこれまで培った顧客との信頼関係を大きく損ねかねない。
GDOは、2008年10月に外部からの不正アクセスによって10日間オンラインサービスを停止した経験を持っている。まさに顧客との接点を断たれたわけで、事業の根幹が揺らぐ事態だった。それを乗り越え、同社は仮想化技術によるサーバ統合を短期間で実現し、これまで以上に強固なシステムを作り上げた。
サーバ統合でコストを半分に
不正アクセスによるサービス停止が起こる1年前から、GDOではサーバ統合のプランが持ち上がっていた。ホスティングサービスの利用でIDCに支払っている年間数千万円のコストを半分にする、というのが具体的な目標だったという。
GDOのシステム部 部長の渡辺信之氏は次のよう語る。
「2007年末から古くなったサーバのリプレース計画の中で、仮想化技術を使うという案が社内で出ていました。当時は70台弱のサーバと15台ほどのネットワーク機器で構成されていましたが、時間の経過に伴ってどうしてもブラックボックス化が進み、障害対応に不安があったのです。もちろん何が起こっても対処できる状態にしていましたが、対応スピードなどは万全とはいえなかった。そこで、サーバ仮想化によるインフラの統合で、コストダウンと同時に運用管理の簡素化を実現し、システム部門が利益に貢献できる力を身に付けていく必要があると考えていました」
実は渡辺氏には、サーバ統合を行うに当たって具体的な製品を腹案として持っていた。イージェネラの「BladeFrame」である。渡辺氏は2007年以前から同製品について調査を続けていたのだ。
「最初は、外観がこれまで見たブレードサーバとはまったく違って非常にスマートだったので印象に残りました。その後さまざまな機能を知るたびに、うちで必要なのはこういう製品だと考えるようになっていったのです」
BladeFrame以外の製品も当然調査していた渡辺氏だが、選定においてある壁にぶつかったという。
「多くの製品は抜きん出た性能を持っているわけではない。大体できることとできないことは似ている。そうなるとユーザーが重要視するポイントをもう一度考え直して製品を見ていく必要がある。当社が重視するのは、障害が発生してから復旧するまでの時間が短いこと。そして操作が簡単で人為的なミスが起こりにくいということでした」
BladeFrameは、障害が起こるとオペレーターの介在なしに瞬時に待機マシンにスイッチして直ちにOSのブートが始まるので、ハードウェアの切り替えの必要がない。それだけでも障害時にハードウェアの切り替えを要する製品とはフェイルオーバーの所用時間で差が出る。またOSのブート時間も他社製品に比べて短かったという。「テストでいきなり一部のブレードを抜いても、すぐに復旧が始まったのには驚いた」と渡辺氏は話す。この速さを実現しているのは、BladeFrameを統括管理する「PAN Manager」というソフトウェアだ。
PAN Managerは物理的な障害、仮想環境での障害双方の問題に対して自己修復する能力を持っている。そしてこのソフトウェアは運用管理の簡素化にも貢献しているという。「運用管理に関して精通していないスタッフでも十分に操作できる」と渡辺氏も話す。
また、渡辺氏は「N+1の冗長構成は必須の条件だったが、それもBladeFrameはクリアしていた」と話す。本番のブレードサーバ以外に待機サーバを何台も用意しておく必要があるようではコスト削減などできない。これもPAN Managerの障害対応能力の高さが、冗長構成で統合メリットを減じることを防ぐ。
3週間で新システムを構築
このようにシステム部内では評価が高かったBladeFrameだったが、すぐさま導入とはいかなかった。これまでイージェネラ製品を導入した実績がなかったことが主な要因だった。サーバ製品の選定はいったん振り出しに戻る形となったわけだが、そんなときに不正アクセスの問題が起きた。
10日間サービスが停止したことによる被害想定額はおよそ3億円。応急処置を済ませサービスを再開したが、急いでこれまで以上に堅固なシステムを作り上げる必要が出てきた。当然、仮想化も取り入れてコスト削減も図った上でのものだ。システム部内ではアプリケーションの脆弱性の検証をすぐさま開始し、1つずつ解決していく作業を進めた。ここで問題となるのは、アプリケーションのチェックが一応終了しても本番の環境であらためて検証する必要があるということだ。そこを通過しなくては堅固なシステムはできない。だが、肝心の本番のシステムの完成にはどうしても4カ月から6カ月程度かかるという事態が発生した。そこで渡辺氏はもう一度イージェネラに連絡を取り、BladeFrameによるシステム構築に精通しているSIerを紹介してもらうことにした。
「アプリケーションの脆弱性チェックは外部の専門企業にも協力してもらって進めました。ただし、最終的には本番環境でのチェックが必要です。その環境が数カ月先の完成では話にならないわけです。そこで浮かんできたのがBladeFrameです。構築期間が短いというメリットも知っていたので、国内でそれを確実に実現する企業を探したところ、パナソニック電工インフォメーションシステムズ(以下、パナソニック電工IS)さんを紹介してもらったのです」
2008年10月末の金曜日、渡辺氏はパナソニック電工ISの担当者に会って詳細を伝え、月曜日までに構築コストの概算を出すように依頼した。パナソニック電工ISは自社でもBladeFrameを活用しており、ハイスピードの要求にも応えた。そして約3週間で仮想サーバで統合されたシステムが完成。GDOシステム部が脆弱性対応ソフトのテストを進め、2009年6月に新システムは本稼働した。
ユーザーとしての経験値を上げていきたい
渡辺氏は現システムでの障害復旧時間を5分としている。これは同氏が会社に対してコミットしている数字だという。「5分でも本当は余裕がある」と笑う渡辺氏だが、それが実現できたのもBladeFrameだからこそだと話す。また導入後、20人のシステム部スタッフのサーバの運用管理体制も変わったという。これまでは専任者が2人以上いる状態が続いていたが、導入後は専任者を2人とし、ほかのスタッフが兼任としてサポートするようになったという。
「Windowsのような感覚で操作できるので、専任者をサポートできる人員が増えました。オペレーションが難しいということは、それだけ人為的なミスが発生しやすいということです。これはシステム構築期間にもいえます。4カ月から6カ月もかかるということは、それだけ人の手が入って、ブラックボックス化が進むということです」
GDOのサイトは、平日の昼間12時45分から13時までの15分間がアクセスのピーク。今回のシステム再構築は、そのピークに合わせてサーバを用意している非効率性をどうにか解消しようという狙いがあった。そして10本あったラックは4本まで減った。BladeFrameはそのうちの2本だという。15分のピークのために仮想サーバを増減させる作業が相当にあるのではないかと想像したが、渡辺氏によると複雑な操作をしているわけではないとのことだ。
「ラックも減らしてコスト削減しましたが、ぎりぎりで運用しているということではないので、余裕はあります」(渡辺氏)
渡辺氏は、イージェネラ製品のユーザーとしての経験値を上げていくことについては意識しているという。そして非常に厳しい環境の中でオンラインビジネスを続ける企業として、仮想化導入も含めたコンサルティングサービスができないか、というプランも持っているという。さらに中国、米国と海外展開が活発化していく中で、GDOシステム部も業務が大きく変化していく可能性がある。そうした状況の中で今回の短期間でのシステム構築は、人手と時間を膨大にかけたプロジェクトとは違う、貴重な体験となったようだ。
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