プライベートクラウドソリューション最前線【第5回】
あらゆるOSやハイパーバイザーを自前でサポート――日本ユニシスのプライベートクラウド
クラウド時代を予見し、いち早くクラウドサービスプロバイダーとなった日本ユニシス。同社は、マルチベンダーならではの豊富なバリエーションでプライベートクラウドを展開する。
メインフレーマーからサービスプロバイダーへ、時代のシステム環境に合わせてダイナミックにビジネスを展開するのが日本ユニシスだ。同社では、クラウドコンピューティングが広く認知される前からコンピューティングインフラ(IaaS:Infrastructure as a Service)を提供する「ICTホスティングサービス」を提供していた。同サービスは、サービスの実行基盤を提供するPaaS(Platform as a Service)、アプリケーションをサービスとして提供するSaaS(Software as a Service)のプラットフォームとしても利用されている。既に金融・流通・小売業界などで、クラウド環境を利用した導入事例を数多く持っている。そして2011年の初めからは、オンプレミス型システムにクラウド環境を用意する、新しいプライベートクラウド構築サービスも開始する予定だ。
連載インデックス
IaaSから始めたプライベートクラウド
企業システムの在り方が「所有から利用へ」とシフトする中、SIベンダーからサービスプロバイダーへと大きくかじを切ろうとしているのが、日本ユニシスである。同社は、クラウドコンピューティングという言葉が一般化する以前から、企業システムのサービス化に注目。従来のシステムインテグレーションで培ってきたサーバ仮想化のノウハウを活用し、ユーザーが利用する論理的なシステム環境に、物理的なハードウェア障害などの影響を及ぼさない技術を確立した。それを自社が所有するデータセンターに適用するとともに、IaaSのサービスメニューとして商品化した「ICTホスティングサービス」を提供している。
「当社は2008年4月にIaaS、PaaS、SaaSの事業を開始しました。2008年10月には、IaaSをICTホスティングサービスという名称にしたサービスを開始しました。ICTホスティングサービスという名前からは、クラウドコンピューティングを連想しないという指摘もありますが、当時使われていたクラウドという言葉はパブリッククラウドを連想させるものだったので、それらのサービスとは差別化する意味で名付けたものです。基本的には、お客さまの既存システムからのマイグレーションに耐え得る、エンタープライズ向けのシステム基盤といえるサービスです」(日本ユニシス ICTサービス本部 基盤サービス部長 廣田博美氏)
日本ユニシスでは、このICTホスティングサービスを当初よりエンタープライズ向けシステムの基盤として考えてきた。そして、オンプレミス型システムと同等の可用性、安全性を担保するとともに、リソースを柔軟に変更可能で即座にシステムを用意できる利用型のサービスというクラウドの特長を生かすことにこだわった。その結果、基幹システムでもマイグレーションできるサービスを提供するに至ったという。
「ICTホスティングサービスの最大の特徴は、お客さまが企業内にローカルで作り上げたシステム体系をそのまま持ってくることができるという点です。IPアドレスや認証環境もそのまま移行できますが、これらを個別対応ではなくプライベートコネクションという標準サービスとして提供しているのは、当社の大きな差別化要素になっています」(廣田氏)
豊富なバリエーションをサポートできる強み
基幹システムを移行可能なICTホスティングサービスだが、実際には既存システムをクラウド環境に一気に移行する企業はない。日本ユニシスのICTホスティングサービスを利用する企業の多くが、まずは部分的に使い始めるという。
「企業がクラウドを導入する本来の目的は、ITインフラの構築・運用から解放されたいというところにあります。しかし、開発を伴い、刷新しながらクラウドへ移行するというのは、すべての企業ができることではありません。そこで当社では、企業内に構築されたオンプレミス型システムと、クラウド環境をハイブリッドで一元的に運用管理することを想定した仕組みを用意しています」(廣田氏)
企業内にあったシステム体系をクラウド環境に移行できることが売りなだけあって、ICTホスティングサービスのバリエーションは非常に豊富である。多くのIaaSは、例えばWindows ServerとRed Hat Enterprise Linuxなどに対応OSを固定しているが、日本ユニシスの場合は違う。Windows 2000やWindows NT 4.0のように、OSメーカーがサポートを終了したレガシーOS環境に対応している。SolarisやHP-UXのようなUNIX環境であっても、IaaS上のプライベートクラウドを利用することが可能だ。クラウド環境を実現するサーバ仮想化技術も、VMware ESX、Hyper-V、Oracle VMなど、顧客のニーズにあるものはすべてサポートしている。
「お客さまの要件に柔軟に対応できるのは、日本ユニシスの大きな強みだと考えています。当社はグループ会社を含めてマルチベンダー対応のシステム構築を手掛けてきた実績があり、特に子会社のユニアデックスは、あらゆるOSやハイパーバイザー環境をすべて自前でサポートできる能力があります。クラウド環境では、すべてをワンストップで対応することが求められます。これを実現する体制を用意できるのが、日本ユニシスグループの特徴です」(廣田氏)
所有型プライベートクラウドの提供も開始
こうしたサービスの提供により、多くの顧客企業がクラウド環境をテスト導入するのではなく、すぐに本番導入に組み込むという。企業にとっては、既存システムの“足回り”だけを変えるイメージがあるようだと廣田氏は言う。
現在、日本ユニシスのICTホスティングサービスを利用する企業は、200社を超えている。顧客企業の中には、例えば銀行、メーカー系物流会社、大手家電量販店などがあり、いずれも高可用性・高信頼性が求められる業務システムのインフラとして採用している。
そして、日本ユニシスが間もなく本格的なサービスの提供を始めるのが、企業内にプライベートクラウド環境を構築するというものだ。ただし、このプライベートクラウドは、顧客ごとに独自色が強いというものではない。日本ユニシスがIaaSとして提供するサービスとコンパチブルなプライベートクラウド環境を企業内に構築するのだ。
「お客さまによっては、『この部分は絶対に外に出さない』というシステムもあります。そうしたシステムを企業内設置型・所有型のインターナル・プライベートクラウドに移行することが可能になります」(廣田氏)
これにより、ICTホスティングサービス上に構築したシステムと一元的に管理できるほか、所有型のインターナル・プライベートクラウドから利用型のエクスターナル・プライベートクラウドに段階的に移していきたいというニーズにも応えられる。所有型のインターナル・プライベートクラウドのバックアップ先やディザスタリカバリシステムとして、ICTホスティングサービス上のエクスターナル・プライベートクラウドを利用するような使い方も実現できる。
今後の展開として、日本ユニシスでは、他社クラウドとのハイブリッドな環境をトータルでサポートする取り組みについても研究中とのことだ。
さらに、ICTホスティングサービスのサービスメニューを拡充する形で、企業システムのクライアントをクラウド環境に移行するDaaS(Desktop as a Service)のサービスにも乗り出す考えだ。
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