「ERP構築に1年は長過ぎる」、ユーザーの新常識にベンダーはどう応える?識者が語る「ERP製品選択の目」:アイ・ティ・アール 浅利浩一氏

回復の兆しが見え始めたERP市場。注目すべきは海外での事業活動が活発な中堅企業の動向だ。アイ・ティ・アールの浅利氏にユーザー企業のトレンドやERPベンダーの思惑を聞いた。

2012年04月19日 09時00分 公開
[垣内郁栄,TechTargetジャパン]

 「ERPに対して、はっきりと旺盛な投資意欲があるのは中堅企業だ。特に売り上げ規模が100億〜500億円、500億〜1000億円の2つのレンジに入っている中堅企業が顕著だ」

 アイ・ティ・アールのプリンシパル・アナリスト 浅利浩一氏は国内のERP市場をこう分析する。中堅企業でも特に海外での売上比率が5割を超えるようなグローバル企業でERPへの投資が活発だという。システムのグローバル化は大企業でも顕著だが、中堅企業は大企業に比べてITインフラが身軽なため、投資行動が見えやすい。では、このようなシステムのグローバル化を目指す企業が今後、ERPを選ぶ上で考えるべきことは何なのか。

 アイ・ティ・アールの調査によると、国内のERP市場は2011年度に全ての企業規模で出荷金額が前年度を超える予測だ。2010年度に3.6%成長だった100億〜500億円未満の企業では2011年度は5.7%成長を予測。2010年度にマイナスに落ち込んだ500〜1000億円未満の企業では2011年度は3.9%成長と回復する見通しだ。全企業規模での平均成長率は7.8%の予測で、2010年度の4.7%を上回る。

ERP市場:売り上げ規模別出荷金額推移
2010年度 2011年度(予測値)
金額 前年比 金額 前年比
5000億円以上 44億5700万円 103.7% 51億6600万円 115.9%
1000億〜5000億円未満 89億7400万円 97.9% 102億3200万円 114.0%
500億〜1000億円未満 146億5900万円 98.7% 152億3000万円 103.9%
100億〜500億円未満 204億9200万円 103.6% 216億5700万円 105.7%
10億〜100億円未満 161億6800万円 111.0% 174億5500万円 108.0%
10億円未満 91億4000万円 113.8% 100億3100万円 109.7%
売り上げなし 23億1000万円 111.5% 23億7900万円 103.0%
合計 762億円 104.7% 821億5000万円 107.8%
出典:ITR「ITR Market View:ERP市場2012」

 2011年度における中堅企業のERP投資の伸びについて浅利氏は「リプレースが増えたため」と指摘する。「中堅企業ではERPをできるだけ長く使い切る方針が多い」(同氏)。リプレースにも2つのパターンがあり、1つは8〜10年使ったERPを刷新すること。この場合、オープン系システムを使ったERPが多い。もう1つはオフコンやメインフレームなど、場合によっては塩漬けされていたシステムをグローバル化の要請で刷新するパターンだ。

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