IPOトラブルに続く不安要因はモバイル
Facebookのモバイル事業、出来の悪いアプリで大失敗か
いまだ混乱が続くFacebookのIPO。だが同社にとってはモバイル事業の将来の方が不安だ。“出来の悪い”モバイルアプリ、不透明なマネタイズの行方、使えない検索エンジンなどを改善する方法はあるのか。
IPOの目前、米Facebooのモバイル関連事業の業績予想が下方修正されていた。それに追い討ちをかけるように、Facebookでの広告は「効果が薄い」という理由で、米GMがFacebookでの広告打ち切りを決めたニュースが流れた。ふたを開けてみれば、FacebookのIPOは悲惨な結末を迎えている。
同社のマーク・ザッカーバーグCEOにとって最高の一日となるはずだったその日は、次々と訴訟を起こされ、政府が調査に乗り出すなど、広報と法務が対応に追われる悪夢の始まりとなった。
この一連の流れは、Facebookが抱える深刻な問題を映し出している。つまり、Facebookはデスクトップ分野(デスクトップPCとノートPCのユーザーを含む)では成功を収めたが、モバイルをどうマネタイズし、この分野で収益を上げていくか見当もついていないのだ。しかし、拡大をしているのは、モバイル分野である。
Facebookのユーザー数は10億人弱で、そのうちの半数がモバイル端末からアクセスしているといわれる。従って、約5億人の目には広告が届いていないことになるが、IPOの申請時に提出された目論見書によると、同社の収入の82%は広告から来ている。
しかし、モバイルからの利用は拡大している。米comScoreの最新のMobile Metrix 2.0リポートによると、米国で3月の1カ月間に、ユーザーがスマートフォンからFacebookを利用した時間は441分間であり、PCからの利用時間391分を上回っている。そして、PCであれば少なくとも広告が表示されるが、モバイル端末からアクセスしている場合は、ユーザーの目に広告が触れることはない(参考ホワイトペーパー:Facebookの利用状況に関する調査結果)。
これは、注目すべきポイントだ。米Sterling Market Intelligence(SMI)の創設者兼代表者のグレッグ・スターリング氏は、「Facebookのモバイルアプリケーションは、多少言葉を和らげて表現すると“出来が悪い”。使いにくいし、エレガントでもなく、基本機能もそろっていない。それでも、モバイル端末からのアクセスの方が多い」と指摘する。
「モバイルアプリケーションの方が利用されるのは、こちらの方がシンプルだということも理由だと思う。エレガントではないにしても、PC版よりユーザーインタフェースはすっきりしている。意識的であるかどうかに関わらず、ユーザーは広告を無視するものだ。余分な情報(広告)が無くて、特定の操作に集中できる方が好まれる」と、スターリング氏は分析する。
ビジネス向けFacebook、SNS利用についての記事
Facebookには、他にもマネタイズできていない収益機会がある。英国の調査会社、Strand Groupのリポートによると、FacebookはSMSの代わりに使われているという。SMSの場合、一定の使用量を超えると追加料金が発生するため、ユーザーはFacebookのチャットや、米AppleのiPhoneであればiMessageなどを利用して、通信会社にとって大きな収益源であるパケット通信を避け、通信費を抑えるようにしている。
しかし、一度無料で提供してしまった以上、今さらFacebookがチャットサービスからマネタイズすることはできないだろう。スターリング氏は「チャットが課金されることになったら、さまざまな不満が生じ、退会者が多くなるだろう。無料で始めたサービスなので、今となっては課金することは非常に難しい」と話す(参考記事:ChatterとTwitter/Facebookの違いと、Chatter利用時の注意点)。
実際のところ、Facebookは、モバイルサイトにバナー広告をすぐに掲載できる。バナー広告は、大半のモバイル開発者がサイトのマネタイズに使っている手段である。しかし、大量の広告表示は、サイトが敬遠される要因にもなるため、十分な注意が必要だとスターリング氏は警告する。
スターリング氏は、現在、Facebookには埋もれている収益機会が多数あると見ている。「アドセンス(米Googleの広告ネットワーク)のようなネットワークを構築すると思う」とスターリング氏は話す。「ユーザーのサインイン時にターゲット広告を表示する。Facebookはこのような手段を取ることになるだろう。あれだけ多くのサイトでFacebook Connectがサインインに使われているのだから、これを利用しない手はない」
さらに、スターリング氏は、Yahooの新しいWebブラウザからヒントを得て、Facebookも独自のブラウザを開発して、マネタイズすると良いと考えている。その他、Facebook Creditと、オフラインの世界でのロイヤルティーポイントプログラムとを連係することでも、商機を作り出せる可能性がある。「オンラインで使用できるFacebook Creditをプログラムの特典として提供している企業もある。これはオンラインとオフラインのビジネスを結ぶ興味深い事例だ。これをさらに推し進めて、収益につなげられる可能性がある」とスターリング氏は話す。
Facebookには、よい検索エンジンも必要だ。現在の検索エンジンはひど過ぎる。うわさでは、IPO後に株と引き換えに、米MicrosoftからBingを譲り受けるような話が出ていた。現実的な動きは何も確認されていないが、今ならMicrosoftはこの話を喜ぶだろう(参考記事:Bing、Kinect……血まみれになってITパワーを維持するMicrosoft)。
スターリング氏は「巨額の投資をするなら、InstagramよりもBingに投資した方がよい。Bingの方がいろいろなことに使える。しかし、現時点では本当にそんな動きがあるかどうか、私は知らない。ただ、Facebookが本当に使える検索ネットワークを一から構築するのは、実に難しいと思う」と話し、うわさはともかく、Facebookに検索エンジンが必要なことは確かで、恐らくすぐに購入した方が良いとの見方を示している。
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