委員からは現状の制度のままで会計監査人が会計不正を発見、調査することの難しさを指摘する意見が相次いだ。
会計不正に対する会計監査の役割や監査基準の見直しについて議論する金融庁の企業会計審議会監査部会が6月27日に開催された。委員が米国の対応を説明し、日本で検討すべき項目を指摘した(前回審議の記事:「期待ギャップ」をどう解消――会計不正で監査基準見直しへ)。
青山学院大学大学院教授の八田進二氏は米国における会計不正への対応を説明した。その上で、日本において「監査人の役割は、『不正に起因する財務諸表の虚偽記載の有無を検証することにある』ことを再確認すべき」と指摘。監査人が虚偽記載を発見できるようにするため、「監査人が行うべき監査手続を包括的に整理して、基準として示すことも一法だ」と話した。
八田氏は、監査人による虚偽記載の発見について、監査基準の改訂の他に、「監査基準に収まらない場合は『会計リスク等に対応した監査の基準(不正対応基準)』として整備し、監査基準と一体に適用することも考えられる」と話した。
また、同氏は監査制度全体の実効性を高めると同時に、「循環取引」など複数の企業が共謀する会計不正に対応するため、公認会計士や監査役(監査委員)、内部監査人の連携強化が必要とも主張。その際は、監査人の守秘義務がどのような場合に解除されるかについても検討すべきとした。
関西学院大学教授の林隆敏氏はPCAOB(米国公開会社会計監督委員会)のリスク評価・対応監査基準について、日本の監査基準と比較しながら説明した。また金融庁の事務局も会計監査を巡る海外の動向を説明した。
これらの説明に対して、委員からは現状の制度のままで会計監査人が会計不正を発見、調査することの難しさを指摘する意見が相次いだ。泉本小夜子氏(公認会計士)は、監査報酬との関係について言及した。会計監査人が企業の不正の兆候を発見しても、企業や部門ぐるみで行っている経営者不正の場合、会社側は否定することが多い。そのため調査のために監査時間を延長することは歓迎されないという。「兆候が見つかった場合、追加の監査報酬がないかもしれないが、監査意見を出すために調べるしかない」(泉本氏)という厳しい状況に置かれることも考えられるという。
八木和則氏(横河電機顧問)は、「不正は内部通報から分かることが多く、会計監査人が見つけることは少ない。特に初期の会計不正では、内部通報以外で見つけるのは難しいだろう」と指摘。その理由として「調査能力は持っているが、調査権限を持っていないのが会計監査人の弱みだ」と話し、会計監査人を会計不正の発見にこれまで以上に関与させるには「監査役との連携が重要になる」と指摘した。
監査部会では今後も審議を行い、7月中に検討すべき論点を洗い出す予定だ。その後に具体的な検討を行い、監査基準や監査手続に反映させる。早ければ2014年3月期から新しい基準などを適用する。
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