企業向けシステムを構築するパブリッククラウド【第12回】
インスタンス型ではなく“リソース型”を提唱する「GMOクラウド Public」
GMOクラウド Publicの最大の特徴は、仮想サーバ(インスタンス)の「貸し出し方」にある。「インスタンス型クラウド」と称される他のパブリッククラウドとは区別される「リソース型クラウド」とは?
本連載「企業向けシステムを構築するパブリッククラウド」ではさまざまなパブリッククラウドについて解説している。今回はGMOクラウドの「GMOクラウド Public」を取り上げる。サービスインから約1年で顧客数約1000社という急成長の理由はどこにあるのか。同社への取材をベースに、その特徴を整理してみたい。
これまでの連載
- 第11回:ユニークなサービスで差別化を図る「BIGLOBEクラウドホスティング」
- 第10回:システム管理者に優しいIaaS「ニフティクラウド」
- 第9回:AWSが2010~2012年に増強したエンタープライズ向け機能を一挙紹介
連載インデックス:企業向けシステムを構築するパブリッククラウド
GMOグループのパブリッククラウド
GMOクラウドは、GMOグループの一翼を担うIT基盤提供会社である。GMOグループは証券会社からオンラインゲーム、DNSサービスまで、インターネットを活用した幅広い事業をカバーする66の企業から成る。「日本を代表する総合インターネットグループ」を掲げているが、その名に恥じないカバレッジを誇っている。その中でGMOクラウドは、ホスティング事業(旧「アイル」)をベースとし、2005年9月に「GMOホスティング&セキュリティ株式会社」という商号を経て、2011年4月に現在の名前「GMOクラウド」になった。
GMOクラウドの事業内容は、大きく分けて次の3つである。
(1)ホスティングサービス(従来型およびクラウド型)
(2)セキュリティサービス(証明書発行、マルウェア検知など)
(3)ソリューションサービス(SaaS提供)
このうち(1)ホスティングの中のクラウド型にもさらに2種類ある。プライベート型の「IQCloud」と、今回紹介するパブリック型の「GMOクラウド Public」である。
GMOクラウド Publicの概要
GMOクラウド Publicの最大の特徴は、仮想サーバ(インスタンス)の「貸し出し方」にある。本連載でこれまでに紹介してきたIaaS型のクラウドサービスとは考え方が大きく異なっているので、そのあたりから説明していきたい。
まず、「GMOクラウド Public」は、「リソース型クラウド」を旗印としている。同社によればAmazon Web Services(AWS)などをはじめとする他のパブリッククラウドは「インスタンス型クラウド」と称され区別される。リソース型クラウドでは、ユーザーはリソースを借り、その上にインスタンスを立てるという2ステップになる。直接インスタンスを借りられる他のクラウドと比べると1ステップ増える。ユーザーには仮想化基盤のハイパーバイザー機能(の一部)が開放される。ハイパーバイザーは、多機能な「Xen」と、高パフォーマンスな「KVM」から選択できる。ただ、ユーザーは、ハイパーバイザーを直接操作するのではなく、Webの管理画面(クラウドポータル)を通じて行うので、専門的な知識は必要ない。
リソースは、一定のボリューム単位でセットになっており(「パック」と呼ばれる)、月単位で契約して利用するのが一般的なようだ。パックの一覧を表1に示す。
ユーザーは、借りた「リソース」を自由に分割してインスタンスとして使う。例えば表1の「パック10」では、8vCPU(仮想CPU)と48Gバイトのメモリが与えられるが、これをそのまま1インスタンスとして利用することもできるし、[2vCPU+12Gバイト]のインスタンスを4台確保することもできる。もちろん、[2vCPU+12Gバイト]が2台で、[4vCPU+24Gバイト]が1台の計3台という構成でも構わない。
| リソースパッケージ | 仮想CPU数 | メモリ | HDD | 月額利用料 |
|---|---|---|---|---|
| パック1 | 1 | 2Gバイト | 20Gバイト | 2400円 |
| パック2 | 1 | 3Gバイト | 20Gバイト | 3650円 |
| パック3 | 2 | 4Gバイト | 20Gバイト | 4900円 |
| パック4 | 2 | 6Gバイト | 20Gバイト | 7300円 |
| パック5 | 3 | 8Gバイト | 20Gバイト | 9800円 |
| パック6 | 3 | 12Gバイト | 20Gバイト | 1万4600円 |
| パック7 | 4 | 16Gバイト | 20Gバイト | 1万9600円 |
| パック8 | 4 | 24Gバイト | 20Gバイト | 2万9600円 |
| パック9 | 6 | 32Gバイト | 20Gバイト | 3万9000円 |
| パック10 | 8 | 48Gバイト | 20Gバイト | 5万2800円 |
| パック11 | 10 | 64Gバイト | 20Gバイト | 6万4000円 |
| パック12 | 12 | 96Gバイト | 20Gバイト | 8万1600円 |
| パック13 | 12 | 128Gバイト | 20Gバイト | 9万6000円 |
「パック13」の12コアと128Gバイトが最大かといえば、さにあらず。後述するオプションを組み合わせることで最大24コア、メモリ140Gバイト超の巨大インスタンスを生成することが可能だ。HDDのサイズも2Tバイトまで追加して確保することができる。逆に、最小サイズは、1コア、メモリ128Mバイト、HDD 6Gバイトである(Linux系)。
前述のパック(月額課金型)とは別に、オンデマンド/時間従量型でリソースを借りることもできる。料金は表2の通りだ。なお、仮想CPUのコア占有率は100%で固定とした。ハイパーバイザーにXenを指定した場合は、占有率を1%単位で指定でき、率に応じた料金となる。
| リソース | 単位 | 時間単価 | 月額換算(時間×24×30) |
|---|---|---|---|
| 仮想CPU追加 | 1コア単価 | 1.4円 | 1008円 |
| メモリ追加 | 1Gバイト単価 | 2.048円 | 1475円 |
| HDD | 1Gバイト単位 | 0.025円 | 18円 |
パックで確保したリソースに、オンデマンドのリソースを随時追加することもできる。一時的にインスタンスの処理能力を上げる必要がある場合に有益だ。これまでに紹介したクラウドサービスでは、「スケールアウト」(インスタンスの台数を追加すること)での対応だったが、GMOクラウドPublicでは「スケールアップ」(インスタンス自体の処理能力を強化すること)の対応ができる。スケールアウトで対応できるアプリケーションばかりではないので、このような選択肢は有益といえる。
ここで、上記のリソースの追加が、稼働中のインスタンスに対してリアルタイムで行えるという点は特筆したい(ただし、OSがLinux系のとき。Windowsの場合はリブートが必要)。特にHDD容量が動的に可変する点については、ユーザーから非常に好評だという。これまで紹介してきたインスタンス型クラウドのIaaSでは、こうは簡単にはいかない。パブリッククラウドのメリットの1つに「事前にキャパシティープランニングが必要ない」「スモールスタートができる」(必要に応じてインスタンスのサイズを変えられる)というものがあるが、それでもインスタンス型クラウドは、サイズ変更にはそれなりの作業が伴うので、インスタンスを借りる前にリソースの適正規模をある程度見積もる必要がある。この点、GMOクラウドPublicは「事前キャパシティープランニング不要、真のスモールスタート」を顕現しているといえるのではないか。リソース型クラウドという新しい概念ならではのアドバンテージだろう。
表1、表2で紹介した料金は、日本のデータセンターを利用した場合の価格だ。この他にも米国およびマレーシアにデータセンターがあり、ほぼ類似のサービスが使える。パックのサイズや1インスタンス当たりの最大リソースには制約がある(日本の2分1~3分の1)。また、海外の方が日本より割高になっているようだ。ちょっと意外な感じもあるが、日本国内と同様のサービスを海外でもスムーズに享受できるメリットに見合う追加料金と考えたい。
意外といえば、アジアではシンガポールではなくマレーシアを選択したという点は、「そう来たか」という(ポジティブな)印象があった。この点を質問したところ、既にシンガポール市場は成熟しており、コスト高な割にデータセンター事業者にとって競争の激しいフィールドだという認識と、マレーシアの将来性を見越してのチョイスだということだった。確かに、日本企業、特に製造業の海外進出は激しくなっており、彼の地での日本企業のIT需要は上昇機運と聞く。その意味でこの選択は「当たり」かもしれない。今後の発展に期待したい。
さて、GMOクラウドは、GMOクラウドPublicとは別に、全く異なるプライベート色の強いサービスを提供している。専用サーバサービス「CORE SERVER」がそれだ。物理サーバを独占して月額利用できるサービスであり、サーバ単体であればスペックに応じて月額約1万~3万円で利用できる。ストレージにSSDが選べるなど、パフォーマンス面も重視されている。
初期費用が必要で納期に3営業日かかるなど、あまりクラウドらしくはない。わざわざ本稿で取り上げたのは、このサービスがGMOクラウド Publicのハイブリッド構成用のオプションと見ることができるからだ。
CORE SERVERのサーバ群はGMOクラウド Publicと同一のデータセンター内に配備されている。これらは構内配線で直結させることが可能であり、パブリッククラウドの拡張性の高さと専用サーバの機密性、ハイパフォーマンス性を兼ね備えたシステムを構築することが可能だ。なお、「データセンター」という言葉を用いたが、ここにはユーザーが自前のサーバ類や物理回線を持ち込むことは想定されていない。この点は前回紹介したBIGLOBEクラウドの「データセンター」とは、異なっているので注意が必要だ(参考:ユニークなサービスで差別化を図る「BIGLOBEクラウドホスティング」)。
CORE SERVERもGMOクラウド Publicも、サポートが一元化されている(日本語で24時間対応可能)のも長所といえる。残念ながら、現時点では、GMOクラウド PublicのコンソールとCORE SERVERの管理画面(サーバパネル)は一元化されていないが、こちらについては検討中ということであった。詳細は教えてもらえなかったが、CORE SERVER相当の物理筐体をオンデマンド提供することも考えているようだ。AWSの「Amazon EC2 Dedicated Instances」や、IIJ GIOの「IIJ GIO VWシリーズ」(関連Webキャスト:業務システムクラウド化の不安を解消する「持たないプライベートクラウド」とは)とどう肩を並べていくのか、今後が楽しみである。
最後に、GMOクラウド Publicの課題について見ていこう。
エンタープライズ用途のサービスがいまひとつ
現在、GMOクラウド Publicの主力ユーザーは、インターネットサービスないしオンラインゲームのプロバイダーなどだ。インスタンスレベルで高いパフォーマンスや巨大なメモリ容量を確保できる点が好評という。リソース型クラウドの面目躍如といったところだが、せっかくのこの特徴をエンタープライズ用途で使い倒そうとすると、まだまだユーザー側で工夫が必要なようだ。この観点から幾つか指摘してみよう。
国内のデータセンターは1カ所しかない
業務用途で、ディザスタリカバリ(DR)構成などを考えると、国内に複数のデータセンターが欲しいところだ。
Amazon S3相当のサービスがない
いわゆるクラウドストレージ(オブジェクトストレージ)が提供されていない。こちらについては検討中だそうである。
ネットワークのオプションがない
VPNや専用線接続などのオプションがない。接続は全てインターネット経由(SSL認証)となる。前述のCORE SERVERにはVPNオプションがあるが、GMOクラウド Public自体に備わっているわけではないので、ここは改善を望みたい。
クラウドのVPN/専用線に関する記事
バックアップ用のストレージが割高
HDD容量は1Gバイト当たり月額18円で追加できるが、これを含めたインスタンス全体のバックアップについては、なぜか単価が2倍(1Gバイト当たり月額36円)になってしまう。他社サービスと比較して割高感は否めない。この点は急ぎ改善を計画中とのことであった。
以上、GMOクラウド Publicについて概観した。読者各位においてクラウド利用の選択肢が広がれば幸いである。なお、取材や資料調査には最大限の注意を払っているが、本稿の内容に事実と異なる点があれば筆者の責によるものであることをあらかじめお断りしておく。
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