不正リスク対応基準案は監査人の「職業的懐疑心の強調」「不正リスクに対応した監査の実施」「不正リスクに対応した監査事務所の品質管理」の3つで構成する。
金融庁は12月11日の企業会計審議会 監査部会で、会計不正に対応する監査手続きを定めた「不正リスク対応基準」(仮称)の公開草案を公表した。金融商品取引法の適用企業を対象に、会計不正などのリスクがある場合に、より慎重な監査手続きを求める内容。金融庁は2014年3月期決算から適用する方針だ。
不正リスク対応基準案は監査人の「職業的懐疑心の強調」「不正リスクに対応した監査の実施」「不正リスクに対応した監査事務所の品質管理」の3つで構成する。「職業的懐疑心の強調」については、現行の監査基準の内容に加えて、不正リスクの評価、不正リスクに対応する監査手続きの実施や監査証拠の評価という各段階で、職業的懐疑心を発揮することを求める。
今回の不正リスク対応基準案で注目されるのは、2つ目の「不正リスクに対応した監査の実施」。監査の各段階における不正リスクに対応した監査手続きを規定する。監査人に対しては、監査計画の策定に当たり、入手した情報からその企業に「不正リスク要因」があるかどうかを評価することを求める。ここでいう「不正リスク要因」とは、企業に不正を実行する動機やプレッシャー、機会、その姿勢が存在する状況を示す。不正リスク対応基準案では付録で、典型的な不正リスク要因を挙げている。
また財務諸表全体に関連する不正リスクが存在する場合には、抜き打ち監査や、往査先や監査実施手続きの変更など、「企業が想定しない要素を監査計画に組み込むことが必要になる」としている。
さらに監査を実施する中で「不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況」が判明した場合には、経営者に質問して説明を求めると同時に、追加的な監査手続きを実施するとしている。「不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況」は、「特に注意をすべき状況」として付録で例示をしている。金融庁は「あくまでも例示」としていて、「チェックリストとして取り扱うことを意図したものではない」と説明している。
これらの監査手続きによっても監査人が十分かつ適切な監査証拠を入手できず、不正が強く疑われる場合は、「不正による重要な虚偽の表示の疑義」として、不正リスクに直接的に対応した監査手続きを実施するとしている。また監査事務所で慎重に審議したり、企業の監査役や監査委員会と協議し、対応を検討することを求める。
不正リスク対応基準案では「不正リスクに対応した監査事務所の品質管理」についても規定している。監査事務所に対しては、不正リスクに対応できる品質管理システムの整備や運用、監視を求める。また監査契約の新規締結や更新についても監査事務所として慎重な検討が必要としている。
監査手続きによって企業の「不正による重要な虚偽の表示の疑義」が分かった場合は、通常の審査に加えて、監査事務所による、より慎重な審査を求める。そのための審査担当者の設置や審査の方針、手続きの規定も必要としている。
監査事務所による監査の引き継ぎについても明記した。前任監査事務所は、後任監査事務所に対して、企業との重要な意見の相違など監査上の重要な事項を伝達する必要があると記載。また後任監査事務所から監査調書の閲覧が求められた場合はその要求に応じるとし、双方で引き継ぎに関する方針を定めることを求める。
不正リスク対応基準案はパブリックコメント後に正式決定し、2014年3月期決算から適用する。「不正リスクに対応した監査事務所の品質管理」については監査事務所の準備が必要なことから、2013年10月1日から実施する。不正リスク対応基準の適用に合わせて、現行の監査基準にも、監査人に対して監査役等と適切な連携を図ることを求める文言などを追加する。
また、不正リスク対応基準の実施に当たっては、日本公認会計士協会が実務指針を策定する予定。日本公認会計士協会は2013年2月または3月に実務指針の公開草案を公表する。2014年3月期の監査計画が策定される2013年夏までに決定する見通しだ。
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