「2012年はPaaS元年」という見方があった。実際の2012年の市場はどの程度拡大したのか。ITの調査会社であるIDC Japanに市場動向を訊いた。
IDC Japanでは2011年の国内PaaS市場規模を2011年は160億円、2012年は260億円と算出している。IDC JapanのITサービス リサーチ マネージャーの松本聡氏は市場規模の背景を次の様に説明する。
「2012年はPaaS市場が本格的に広がる年という見方からすると、違和感がある数値となっているかもしれない。2011年時点で160億円という実績となっているのは、アプリケーションのデータベースが含まれるためだ。既に起ち上がっているアマゾン ウェブ サービスのAmazon Relational Database Service(RDS)、セールスフォース・ドットコムのForce.comなど、元年といわれた2012年以前から普及している商品が大きな割合を占める(関連記事:豊富なテンプレートを備えたアプリケーションプラットフォーム「Force.com」)。また、2012年になっても大きく市場が伸張したという状況ではない」
2011年あたりからPaaS市場拡大を見込んで商品も登場。2012年のPaaS市場は本格的に拡大すると思われていたが実際には市場は広がらなかった。
それではなぜ、広がると見られていたPaaS市場が2012年に大きく伸張しないまま終わろうとしているのか。
「PaaSで利用する技術が現時点では落ち着いていない」と松本氏は原因を指摘する。
「現在は導入に向けての技術検証が進んでいる段階にとどまっている。開発に関してはアプリケーションサーバとの相性を見極めるといった作業が行われている段階。開発者が試験的に利用を開始し、運用をどうするのかといった課題を検証している」
その一方でPaaSを利用している企業の事例も出てきている。例えば、楽天は2011年時点でオープンソースのPaaS基盤ソフトウェア「Cloud Foundry」を採用し、プライベートPaaSを構築すると表明している(関連記事:楽天がプライベートPaaSを構築――「Cloud Foundry」を選んだ4つの理由)。
先行してPaaSを導入している企業と、そうではない企業との違いはどこから生まれているのか。
「PaaSを利用しているという企業を見ると、楽天やソーシャルゲームメーカーなどネット企業が多い。ネット企業の場合、利用するアプリケーションが従来型業務アプリケーションではなく、新規Webアプリケーションだからこそ利用できる。現段階では、従来型業務アプリケーションをPaaSで利用しようとすると、作り直しをしなければ稼働しない」
例えばWindows Azureでは「既存資産の有効活用」がアピールされているが、これは既存アプリケーションをそのままPaaSに載せて利用できるというわけではない。アプリケーション側は新たに作り替えた、全く別なアーキテクチャとなっていることがほとんどだ。
また、先行しているForce.comの場合は「日本のユーザーの場合、SaaSを利用しながらもカスタマイズをしたいという要求がある。その要求に応えるために、Force.comを利用している。いわゆるPaaSというイメージでの利用とは異なる」という。
それではWebアプリケーションを対象としたPaaSの利用はどうなのか。
「現段階では特別な事例が先行している状況だが、WebアプリケーションのためのPaaSが広がり始めていることは間違いない。これが売り上げにつながるのが2013年だと見ている」
日本の場合、ネット企業もアプリケーション開発フレームワーク部分はユーザー側で作り直している場合が多い。今後、自分達が作ったライブラリーはどう使うべきかといった仕組みが明確になる企業が増え、2013年にはルールが明確化してくる見込みだ。
Webアプリケーション向けPaaSに関しては2012年が元年となり、2013年に本格稼働するといえる。
それでは従来型業務アプリケーション向けPaaSは拡大する見込みはないのだろうか。
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