設計、製造、販売、サポートなど製品の全てのライフサイクルを一貫して管理できるPLM。PLMは企業の複数の部門にまたがって運用されるため、導入が難しいという理由で敬遠されがちだ。特に中小企業ではIT部門が整備されていないことが多く、導入へのハードルが高い。PTCジャパンは、PLMのうちPDM(製品データ管理)に機能を絞ったソリューションを展開することで、PLMへの道筋を広げた。
PTCジャパンは、中小企業向けのPLMソリューション「PTC Windchill PDM Essentials」の販売を開始した。同社のエンタープライズ向けPLMソリューション「PTC Windchill」のうち、一部の機能をパッケージ化したものである。
企業の規模が小さくても、製造業が抱える課題は大企業と同じだ。「モノづくり前のモノづくりが求められている。同様に販売後のケアも重要だ。過去においては、PLMは設計部門と製造部門をつなぎ、製造現場における品質管理や歩留り向上にも役立つツールと考えられていた。現在は開発、製造、販売、アフターサービス全てに同一の(設計)情報を生かす取り組みが進んでいる」(PTCジャパン ソリューション戦略企画室PLMシニアエキスパート 後藤智氏)。
PLMは企業全体にまたがるソリューションであるため、導入前の調査や準備、導入までの手間が掛かる。このため、PLMを敬遠する中小企業が目立っているのだという。しかし、中小企業こそPLMの恩恵を受けるべきだろう。なぜなら、米PTCによれば、米国の製造業の99%が従業員数500人未満であり、これらの企業が生産総額の半分以上を生み出しているからだ。
今回のPTC Windchill PDM Essentialsは中小企業に受け入れられることを目指したソリューションだ。導入作業の手間を減らすため、インストールと設定をウィザード形式で進められるように改良した他(図1)、データ格納に用いるMicrosoft SQL Serverを含む全ての必要なソフトウェアをパッケージ化した。Webベースで動作するため、設計部門以外であっても、必要な情報を引き出しやすい。
なお、PTC Windchill PDM Essentialsを導入後、PLMの全機能を利用可能になるパスも用意した。PLMソリューション「PTC Windchill」を新規に導入することなく、拡張できるような設計を採った。拡張時にはデータベースのアップグレードや技術的な移行作業は不要だ。
PTC Windchill PDM Essentialsは、PDM(製品データ管理)に力点を置いたソリューションだ。CADデータを企業内で有効活用できれば生産性の向上につながる。そのためには、CADデータを自由に検索し、即座にアクセスできる環境が必要だ(図2)。
しかし、設計部門を越えて、CADデータへ無制限にアクセスできるような仕組みは危険をはらむ。他部門のスタッフにとっては、どのデータが最新版なのか分かりにくいことはもちろん、不用意なアクセス(上書き)が起こる可能性が高まる。そこで、データの整合性を維持し、セキュリティを確保できるよう工夫した。社内外の許可されたユーザーのみにデータの読み出しと更新を許可するように設定でき(図3)、更新履歴を自動出力するようにした。
CADデータのライフサイクル管理も実行できる。設計部門が作り出すCADデータは、当初不完全で、製造や購買などの部門からアクセスできないことが望ましい。レビュープロセスを完了した後、データの閲覧や更新が可能になる時点を指定できる。これによって、製造に使うべきではない版のCADデータを誤って参照する恐れがなくなる。
PTC Windchill PDM Essentialsでは3次元表示や、マークアップ機能を利用できる(図4)。CADデータから、ビューデータやサムネイル情報、PDFなどを出力する機能も備える。ExcelやWordなどに貼り付けたビューデータの更新がたやすくなるよう、CADデータの管理に用いるチェックイン、チェックアウト機能を使って管理できるようにした。
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