ネットワーク管理者のための3つの心得
ブームが去った後にこそ真価が問われるSDN
大手ベンダーらが中心になって進めている“標準化のゲーム”に入れてもらえなくても、現場のネットワーク管理者はSDNの動きを長期的な視点で追い続けることが大切だ。
ネットワークの専門家たちは、SDN(Software Defined Networking)の誇大宣伝に我慢できなくなっている。彼らは、実世界の技術の欠落や、資金力のあるベンダーによって運営される標準化団体に対して、次第に批判的になりつつある。
しかし、われわれネットワーク技術者は、SDNに対して長期的な視点を持つ必要がある。3年後、5年後、10年後、SDNで何を達成したいと望んでいるかを自問し、それを実現するためにどうすればいいのか考えなければならない。たとえ大手ベンダーが十分な利益を得たあと、その先のイノベーションに興味を失ったとしても。
1%がSDNの全てを決定したらどうなるか?
ほとんどの市場サイクルがそうであるように、大手ベンダーは既にSDNの収益機会を評価しており、想定する利益の大部分を得てしまえば、それ以上の投資は行わない。次なる目玉の技術においても、80/20の法則は適用される。ベンターは全投資の20%で全利益の80%を獲得し、それで成功としがちだ。しかしSDNの場合、それを受け入れるわけにはいかない。開発の残りの80%で、われわれの考えるネットワークをその後も変革していかなければならない。ビジネスやキャリアを賭けることのできる完成されたリッチな機能性がもたらされない限り、われわれはCLI(コマンドラインインタフェース)から逃れることはできないのだ。
そうであるにも関わらず、ほとんどのネットワーク技術者たちはいま、標準化のゲームからシャットアウトされている。米Cisco Systemsや米IBM、米Hewlett-Packard、そして 米CitrixSystemsなどは、オープンソースプロジェクト「OpenDaylight Project」に50万ドルを支払い、20人以上の技術者を送り込んでいる。それらのOpenDaylightメンバーが、ネットワーキングを真剣に考える人々のブログや、エンジニアたちの書き込みに溢れる掲示板に目を通していることを願うばかりだが、それでも彼らはそこに書かれた主張に従う義務はない。
さらに言えば、彼らには彼らなりの課題があり、それはしばしばネットワーク管理者たちの利益と対立する。結局、少なくとも短期的には、1%の大手ネットワーク企業がSDNの方向性を決定してしまうことを、現場の技術者たちは傍観者として外から眺めている他はないのだ。
持てる者と持たざる者
それが具体的な形になったとき、1つの懸念が生まれる。果たしてSDNは、持てる者と持たざる者の間で分断されることはないだろうか?
持てる者たちとは、既に何年も前からプロプライエタリな仮想ネットワークシステムを構築しているクラウドプロバイダーや大規模なデータセンター運用業者だ。米Amazon、米Rackspace、米Google、そして米Facebookはいずれも既にソフトウェア型アーキテクチャを活用している。こうした企業にとって、SDNは既に確立したベストプラクティスを標準化するだけものであり、ベンダーはビルトインサポートを拡大することによってコスト削減を実現する。実際、Facebookが主導する「Open Compute Project」の普及加速とネットワーキングへの浸透は、大手ベンダーのSDN投資を促す大きなモチベーションになるはずだ。
一方、持たざる者とは、特定の、時代遅れのシングルベンダーハードウェアスタックに縛られた組織、あるいは高度な技術的専門知識を持たない組織のことだ。もちろん、そうしたところでも、仮想化ネットワーキングの恩恵をある程度受けることはできるだろう。しかし彼らは、今日のサーバ仮想化スタックと同じレベルでしか、SDN機能を利用することはできない。
仮想化によるサーバの統合は容易であり、ROI(投資対効果)は向上する。だが、動的プロポジショニングやバーストスケーリングなどを駆使して、「VMware vSphere」の持てる力を最大限に引き出すためには、チームの技術力、経営陣の熱意など、それなりの条件をクリアしなければならない。もしユーザーの99%が最終的に、ネットワーク全体を管理するために必要な機能のサブセットを提供するもう1つのGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)に行き着くだけなら、それはほとんど意味を持たない。
管理者たちはトレーニング、オープンマインド、時間を必要としている
ベンダーの多くは、短期的な目標を達成すれば、マーケティングの武器を取りまとめ、他の戦線へ移動し始めるだろう。しかし、われわれ実装技術者たちは、少なくともその先の10年、平和維持軍としての使命感を持ち、「SDN」と書かれた白いトラックに乗って、戦場にとどまらなければならない。身近な小競り合いを収拾し、腰を落ち着けて共存、団結、相互運用性の確立を目指す必要がある。もっとも、幸いなことにネットワーク管理者はITの建国者であり、ツールや手法に長年関わってきた。いま、われわれには3つの達成すべきゴールがある。
第1は、たとえ気難しい管理者でも広い心を維持し、ネットワークの定義にソフトウェアを利用することが正しい道であると受け入れることだ。第2は、実用的な教育である。CiscoはいつCCS(Common Channel Signaling)のDNAを提供するのか? SDNは単なる履歴書の追加事項ではない。それはもう1つの一般に認められる技術証明でなければならない。第3は、時間だ。実験の時間、遊ぶ時間、失敗する時間が必要となる。CLIの技を蓄積した年月は、一夜にして現れたわけではない。それは塹壕戦における困難な勝利だった。
雇用者側は、管理者が実験棟でSDNインフラを構築、分解する研究開発プロジェクトに必要十分な時間を確保しなければならない。われわれが重要度の低いシステム上でSDNのテストを行うとき、時折サービスを破壊してしまうのも許容すべきだ。CIOへのアプローチがいかに素晴らしくとも、「インストールしてすぐ使える」というベンダーの言葉を信じる上層部に管理者が妥協することはない。われわれが長期的な視点を持ち、誇大宣伝の後に自信を持って賭け金を倍にすれば、SDNは世界を変えてしまうことさえできるのだ。
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