メリットを享受できるのは?
“冷静と情熱”を巻き起こしたMicrosoftのクラウド新技術
Microsoftが「TechEd North America 2014」で発表したクラウドに関するさまざまな新技術は、企業のIT担当者に戸惑いをもたらしたようだ。
米Microsoftは、同社の開発者向けイベント「TechEd North America 2014」で、新製品・新技術のフルラインアップを広げ、「クラウドベースエンタープライズ」というビジョンを企業IT担当者に広めようとした。
しかし問題は、「それを享受できる企業ユーザーが、どれほどいるか?」である。
同社は今回のTechEdで、今後半年以内に発売する一連の新製品と新サービスを明らかにした。これらの製品およびサービスで、オンプレミス製品とパブリッククラウドの接続を容易にするとともに、パブリッククラウドとハイブリッドクラウド間でのデータの共有と統合を目指す。
Microsoftは、同社のクラウド環境である「Microsoft Azure」(以下、Azure)を、他のクラウドベースの製品およびサービスとともに、この先の予測可能な未来における全ての必要不可欠なイニシアチブを推進するエンジンとして位置付ける考えを鮮明にした。
「増え続ける接続デバイスを携えた多くのユーザーが大量のデータを生み出しつつあり、われわれはつい最近まで、それらを管理することは不可能だと考えていた」と、Microsoftの副社長 ブラッド・アンダーソン氏は語る。「われわれのゴールは、そうしたデータをクラウドの中の最適な場所に全て統合することだ」
しかし、TechEdに足を運んだユーザーの中には、こうしたMicrosoftのクラウドメッセージに冷静な反応を示す向きもあった。彼らは、「クラウドベースの新製品や新技術を実装できる段階にはない」、あるいは「Microsoftには、もっとわれわれが日常的に直面する具体的な問題を解決してほしい」と話す。
「クラウドへの移行は、あまり議論していない」と語るのは、食品加工技術を手掛ける米The Vincit Groupのシステムセンター管理者、ジェフ・バーク氏だ。
バーク氏によると、現時点で同社のビジネス環境はそれほど大きくないと話す。「5年後は分からないが、今はクライアント端末からインターネットやVPN経由でリモート接続をしている程度であり、特にクラウドへの移行の必要性は感じない」
他のユーザーも、クラウドへの移行は基盤から再構築になると見る。
「たとえクラウド導入が価値のある新しい分野であるにしても、Azureのようなパブリッククラウドに対応するために、既存の環境に新しい技術を組み込むのは容易ではない」と語るのは、オーストラリアのIT企業Vigilant ITのコンサルタントエンジニア、スティーブン・ホスキング氏だ。
Microsoft Azureの何が新しいか
もっとも、クラウドニュースのラッシュに、全ての来場者が戸惑ったわけではない。企業の購買担当者たちに、クラウド環境をもっと魅力的に見せようと意図するAzure関連の新製品と新サービスは、それなりに注目を集めた。既に、次のサービスが利用可能だ。
Azureとオンプレミス環境の間にプライベート接続を構築できる「Microsoft Azure ExpressRoute」、複数の仮想マシン間での単一ファイルの共有を可能にし、クラウドストレージの性能を改善する「Microsoft Azure Files」、リージョン内およびリージョン間の仮想ネットワーク接続でのさまざまなサイズの計算集約型仮想マシンなどだ。さらに、Azureの「API管理」では、部門間における情報共有を強化し、クラウドからAPIを開示することによって新しいビジネスモデルを構築できる。
クラウドに焦点を絞り込むMicrosoftの戦略は、米建築設備会社ABMのインフラ担当アシスタント副社長、アンドレ・ガルシア氏にとっては良い兆しだ。同氏は特に、パブリッククラウドとハイブリッドクラウドの間に横たわるデルタ地帯をシームレスに橋渡ししようと試みるMicrosoftの取り組みを歓迎する。
「われわれがこれに大きく期待するのは、われわれにとって、欠落していたもの、すなわち複数のVLANを手に入れられることになるからだ」とガルシア氏。「隔離されたVLANと考えれば、VPNに接続するサイトの実装が可能になる。これが、今まで欠けていた」
今後数カ月間にわたって提供が始まる大企業向けの製品やサービスは、主に災害復旧とセキュリティに関するものだ。
「Microsoft Azure Site Recovery」は、2014年6月にプレビュー開始が予定されている。「Microsoft Antimalware for Azure」のプレビュー版は、クラウドと仮想マシンの双方にインストールできる。Microsoftが米Symantec、米Trend Microと共同開発した新しいセキュリティサービスもある。また、2014年7月に提供が開始される「Office 365」のビジネスユーザー向けの新しい暗号化技術によって、「SharePoint Online」および「OneDrive for Business」に保存される全てのファイルが独自のキーで暗号化される。
Microsoftはまた、米国時間2014年5月12日に「Azure RemoteApp」のプレビュー版をリリースした。これを使えば、モバイルワーカーがさまざまなデバイスでWindowsアプリケーションにアクセスできるようになる。
Azureと連動する新製品は、同社の「Remote Desktop Services」と組み合わされる。Microsoftのアンダーソン氏によると、このサービスを利用すれば、企業はWindowsアプリケーションを非Windows系デバイスに配信することが可能になるという。現在、Azure Remote Appは、iOS、Android、そしてWindows RTを搭載するWindowsクライアントをサポートしているが、今後登場するプラットフォームもサポートする予定。
Microsoftは、新サービスの一般提供に関する具体的な日時を明らかにしていない。それでもIT管理者たちは、気になるようだ。
「ハイブリッド版に注目している」と語るのは、カジノを運営する米Muckleshoot Casinoのシステム管理者、ニック・バンナイス氏である。同氏によると、新しい技術はさまざまな領域に導入することが可能だという。
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