EdTechフロントランナー【アルクテラス編】
「LINE」「Facebook」で授業ノートを貸し借りできる「Clear」
アナログな学習ツールであるノートをデジタル化。かつSNS連係でノートを共有できる――。こんな学習スタイルを可能にするのが、アルクテラスの「Clear」だ。
「1人ひとりの思考パターンに合った学びを提供したい」。アルクテラス(東京都大田区)はこうした思いの下、学習者の理解度に沿った学習方法「アダプティブラーニング」を追求する個別指導塾「志樹学院」や、学習者の個性に配慮した指導支援ツール「カイズ」などの事業を手掛けるEdTechプレーヤーだ。
生徒1人ひとりを大切にするという同社の思想から生まれたノート共有サービスが「Clear」である。その特徴とは何か。教育機関での活用の可能性とは。同社代表取締役社長である新井 豪一郎氏に聞いた。
Clearとは:生徒のノートを共有、最強のデータベースで勉強の困ったを解決
Clearは「ノート」というアナログ媒体を共有して、個別の学習者の課題解決を狙うWebサービスだ。「問題につまずいているときに、他の人の知恵が得られるとありがたいものだ」という新井氏の考えを基に開発した。
例えば、学生時代に数学の問題を解いているとき、解答・解説を読んでも納得できなかったり、途中で式が過度に省略されていて困ったりすることはないだろうか。そんなときは恐らく、友達や教員に助けを求めた人も多いだろう。それをITの力を借りて、オンラインで気軽にできるようにしたのがClearだ。
Clearできることは、大きく2つある。
- 第三者が作成したノートを検索し、閲覧する
- 自身のノートを撮影し、他の人に共有する
ノートをClearに取り込むには、専用クライアントアプリケーションのカメラ機能で1ページずつ撮影することになる(図1)。撮影したノート画像は台形補正・色調補正機能による自動補正が可能だ。補正エンジンは自社開発だという。
「iPhone」「iPad」といった米Apple製スマートデバイスに加え、「Android」端末向けのクライアントアプリを提供しており、いずれの端末でも無料で利用できる。「現状の機能に課金する予定はない」(新井氏)という。
登録されているノートは1200種以上
2014年7月時点では、既に1200冊超のノートをデータベース化している。ユーザーや同社スタッフによる投稿でノートの数は日々増えており、「このままいけば年内5000冊に至る勢い」(新井氏)だという。
Clearのクライアントアプリを起動すると、教科別に分類された公開ノートがズラリと並んでいる。「おすすめ」欄で人気の高いノートを表示したり、目当てのノートをキーワード検索したりすることも可能だ(画面1)。
取り込んだノートを公開せず、自分だけが閲覧できるようにすることも可能だ。ノートの共有はしたくないが、持ち運ぶノートを減らしたいという学習者のニーズも満たせる、というわけだ。
一部ユーザーにだけノートを限定公開することもでき、公開対象のユーザーとメッセージ機能を使ってやりとりができる。「ノートに予定などを記入すれば、ちょっとしたプロジェクト管理も可能だ。実際に社内ではそうした使い方もしている」と、新井氏は意外な使い方を明かす。
競合との違い:ユーザーとノートを増やす「SNS連係」
Clearを特徴付けている要素がSNS連係だ。具体的には「Twitter」「Facebook」「LINE」などのSNSを通してノートを共有する仕組みがある。学習者自身の授業ノートを仲間内だけで共有しやすいし、Clearのユーザーではない学習者への“導線”にもなっているうまい仕掛けだ。
とはいえ、ノートの一般公開が増えなければ、検索しても欲しいノートが見つからないという状況を招く可能性がある。その対策として用意するのが、「いいね!」や「コメント」といった機能を使って第三者がノートを評価する仕組みだ(図2)。
評価が高いノートは、上述したおすすめ欄に掲載される。ノートの公開による他ユーザーへの貢献を視覚化し、ユーザーの承認欲求を満たすのに役立つ。
ノートは「シール」機能でデコレーションできるようになっている。重要な部分を強調するだけでなく、「この部分が分からない」といった部分にシールを添付し、コメントやメッセージ機能を通して第三者に助けを求めるといった使い方も可能である。実際に、アプリ内では「教えてください!」といったようなタイトルの付いたノートも見られ、Clearを通した一種の学び合いが行われているようだ。
ノートを共有するサービスとしては「zuknow(ズノウ)」や「Evernote」などが挙げられる。だがこれらは、いずれもClearのようなノートに特化した編集機能やコミュニケーション機能などは備えていない。またノート撮影についても、豊富な画質補正機能を持つClearが利便性の面で優れる。
競合にあって、Clearにない機能も確かにある。例えばEvernoteは、取り込んだ写真内の文字をOCR処理して検索可能にする技術を実装している。ただし新井氏は、こうしたOCR機能については「現在、準備中」と説明しており、キャッチアップする計画があるようだ。
今後の展開:グローバル展開を視野に 検索機能も強化
2013年の年末にリリースされたClear。本稿執筆時点で登場からまだ半年強であるにもかかわらず、既にユーザー数は3万人に達している。「特にプロモーションはしていない」と新井氏は打ち明けるが、学習者にとって非常に身近な「ノート」に着目した分かりやすさも手伝い、利用の裾野は着実に広がっている。
新井氏には、Clearを「早い段階でグローバル展開したい」という強い思いがあり、既に具体的なプランもあるという。ノートの共有の需要は世界中であるはずなので、海外展開によって多様なユーザーが利用するようになれば、既存ユーザーも大きなメリットが得られそうだ。
機能強化も進める。上述のOCR機能に加え、次期バージョンでは「見たいノートをより検索しやすくする仕組み」(新井氏)を実装すべく、検索アルゴリズムの改修にもチャレンジしているという。
運営する個別指導塾での利用も
アプリストアにあるClearのレビュー欄には、「先生が生徒の学習管理に使っている」といったコメントがあるように、教育機関でのClearの利用も進みつつあるようだ。さらに新井氏によると、アルクテラスが運営する個別指導塾で、Clearを利用する計画があるという。その個別指導塾こそ、冒頭で触れた志樹学院である。
アルクテラスは現時点では、志樹学院でのClearの詳細な利用計画について明らかにしていない。同社は、Clearを個別指導塾での教育にどう生かそうとしているのか。推測の域は出ないが、アルクテラスはアダプティブラーニングを指向する企業なだけに、学習者の個性を最大限に発揮するためにClearを取り入れるだろう。
ノートを単元別に分離して、学習者に異なる解法を紹介するために講師が利用することも可能だ。逆に学習者に利用してもらい、他の学習者のノートからの発見を促すといった用途も見込める。成績に影響を与えるといわれるノート作成の指導の際に、支援ツールとして現場で使えるかもしれない。
これら以上に期待できるのが「検索」の可能性だ。学習者が自宅で学習塾の宿題に取り組む際に、関連ノートが検索できれば理解の助けになることもあるだろう。ただし、安易に検索できてしまうと、先輩が作った過去のノートに問題の答えが丸ごと存在するなど、宿題が丸写しできてしまうリスクもある。これはClearが今後普及するにつれて発生し得るリスクともいえる。
例えば、学習者の学習傾向(タイプ)に応じて若干問題を変えて、同一タイプの学習者のノートは検索に掛からないようにするなど、関連するノートをうまく見つけ出す一方で、完全一致するものはブロックするといった検索アルゴリズムが必要になるかもしれない。
Clearを生かし、どのようなアダプティブラーニングの形を見せてくれるのか。アルクテラスの今後の取り組みが楽しみだ。
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