ネイティブツールの限界によって、クラウドの移行に関するサードパーティーのエコシステムが誕生している。米Unitrends、米Racemi、米RiverMeadow Software、米HotLink、Zertoなどが製品やサービスを提供しており、ほとんどがネイティブのインポート/エクスポートツールの限界を克服している。それはつまり、ハイブリッドクラウド管理に対応するベンダーは増えたものの、環境間で移行されないものは依然として存在する。
ポンセ氏によると、一部のベンダーは移行の問題を十分解決しているという。だが、ネットワークサービスなどを起動する仮想マシンの設定メタデータの問題解決にはまだ時間がかかる。
「仮想マシンの外部にある仮想マシン用のVMware環境で設定する内容は、それをAWS環境にどう移行するかを考えたときに非常に大きな問題になる」(ポンセ氏)
米ニュージャージー州ジャージーシティに拠点を構えるAWS向けマネージドホスティングサービスのプロバイダーのDatapipeで自動化とDevOpsを担当しているパトリック・マクローリー氏は次のように語る。「サードパーティー製ツールは、既存の環境を分析して、移行する内容を決定するためによく使用される。だが、このようなツールも見直しが必要だ」
「大部分のツールには本当に失望している。というのも、いまだに過去のデータセンターテクノロジーを使用しているからだ。データセンターの移行レベルについて考えることは無意味ではない。だが、移行する内容だけでなく、移行方法やその順番まで検討しても意味はない。この分野に関しては、まだ経験に依るところが大きいからだ」(マクローリー氏)
「ハイブリッドクラウド移行ツールは、オンプレミスクラウドベースのリソースとパブリッククラウドベースのリソースの間にある根本的な不整合には必ずしも対応していない」とマクローリー氏は指摘する。例えば、米Microsoftの「SharePoint」をVMwareからAWSに移行することは、最新のツールを使用しても困難だ。
「AWS環境のWindowsマシンにSharePointを移行して『RDS(Relational Database Service)』を使用したいが、SharePointはマスターデータベースにアクセスする必要がある。そのためRDSは使用できず、独自のSQL Serverデータベースクラスタを構築しなければならない」とマクローリー氏は話す。
こうした理由から、ハイブリッドクラウドでワークロードをスムーズに移行するという考えは、最先端を行くハイブリッドクラウドユーザーにとってもいまだに夢物語である。vSphereプライベートクラウドとAWSパブリッククラウドの混在環境では、特にそうだろう。
これは、米FlightStatsのプラットフォームエンジニアリングの統括責任者であるアレックス・ウィザースプーン氏が今までの苦労から学んだことだ。同社は米オレゴン州ポートランドに位置し、VMwareとAWSの両方をベースにした大規模なハイブリッド環境を利用して、航空情報のグローバルデータサービスを提供している。
「任意のVMwareのイメージをAWSに移行する場合、突き詰めるとAWS向けに設計されていないものをAWS環境に投入することになる。そのため、完全な統合にはほど遠い状態だ。Amazonの『Identity and Access Management』のセキュリティは若干怪しい。ストレージでさえデータをレプリケートして、それが機能することを期待しているのだ」(ウィザースプーン氏)
FlightStatsは高性能のハードウェアを選んで調整できるオンプレミスのVMware環境に備わっている制御機能を好んで使用している。そして、データ処理の大半はAWSパブリッククラウドの外で実行している。
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