建てたらもうやり直せない
サーバを収納するなら知っておきたい「データセンター設計指針」とは(1/2 ページ)
企業の移転、IT更新サイクルの短期化、仮想化の導入などの要因がデータセンターの設計に影響を与える。こうした変化に柔軟に対応するために「知っておかなければならない」指針がある。その内容を紹介しよう。
データセンターの設計要件とコストに影響する基本的要素は幾つかある。予算策定と基本設計の前に、これらの要素を正しく理解することが重要だ。この点を軽視すると、データセンターの稼働後に必ず問題が発生するだろう。
データセンターの稼働後に問題を修正するのは困難で高い費用が掛かるだけでなく、運用面でも危険だ。しかし、データセンターの施工担当チームがこの記事で紹介するプランニングガイドを参考にして最初の段階で要件を正しく決定し、現在のIT業界における標準と慣行に準拠した設計を採用すれば、今後何年もの間、大幅な改修の必要がなくなるだろう。
データセンターの設計で最も重要な要素は3つある。「信頼性のレベル」「拡張/縮小の可能性」「構成変更やハードウェアの更新の間隔」だ。
ITの信頼性に対する真のニーズを把握する
「自分たちが使用するシステムとアプリケーションはミッションクリティカルだ」と誰もが思っている。だが真の指標は、これらのシステムやアプリケーションに障害が起きると業務にどのような影響が及ぶのかということだ。システム障害がセキュリティや人命などの深刻なリスク要因を浮き彫りにする場合もあれば、その深刻度が金銭的損失や企業のイメージダウンとして測定できる場合もある。
障害による影響の度合いは、障害の期間の長さによって数値化できるはずだ。15分、30分、1時間、4時間、8時間、あるいはそれ以上かということだ。この指標を使えば、設計者はデータセンターにどの程度の冗長性を含めればよいかを判断でき、企業は信頼性確保のコストと潜在的なリスクを比較できる。
多くのデータセンター運用担当者が米Uptime Instituteの厳格な最高基準「Tier IV」レベルのアップタイムを要求しながらも、それが設計の複雑さ、初期投資、運用管理といった面で実際に何を意味するのかを十分に理解していないのが実情だ。Tier IVが妥当な大規模データセンターでも、データセンター全体にこの基準を適用する必要はないだろう。施設のゾーン分けを検討し、重要度が比較的低い機能は「Tier III」あるいは「Tier II」区域に配備すればいい。
設計作業を始める前に、システムごとに重要度を現実的に評価することがデータセンター設計の第一段階になる。データセンターの設計者は、この情報に加えて、実際に何が分類の基準になっているかを理解した上で、最も適切で費用対効果に優れたアプローチを決定する必要がある。
冗長性と信頼性に関してデータセンター全体で統一的な目標を設定した場合でも、アップタイムに関する判断を通じて、大規模な障害の発生時にどのシステムの復旧を急ぐべきかという優先順位を決めることが可能だ。
拡張予測をめぐる問題
キャビネットを新たに追加するスペースがなくなったデータセンターでは、急場しのぎとしてクラウドを利用できるが、多くの企業は今でも、重要なコンピューティングシステムを自社の管理下に置いている。データセンターのプランニングガイドでは、段階的拡張だけでなく、データセンター内での移動も考慮に入れる必要がある。サービス事業者を利用したものの、コストやパフォーマンスの問題で自社のデータセンターでの運用に逆戻りした企業は少なくない。
拡張の予測が困難な理由は、IT機器のキャビネットの数が減少しても、それとは無関係に電力負荷と熱負荷および設置スペースが増加する場合が多いからだ。IT機器が小型であれば通常、垂直方向の寸法が減少するが、ハードウェアの奥行きが深くなる場合が多い。現在のキャビネットにおける本体サイズの奥行きは、従来型の36インチ(900ミリ)ではなく42~48インチ(1060~1200ミリ)となっている。一方で、データセンターでは、ラック内や機器内で作業をするために通路幅を広くする必要がある。本体サイズの幅が従来型の24インチ(600ミリ)よりも広いキャビネットであれば、高密度のケーブルに加え、デュアルOAタップ、それに付随する大量の電源コードを収納しても、排気の流れを阻害しない。現在のITキャビネットに対する推奨規格は公称幅30インチ(760ミリ)だ。キャビネットの奥行きと幅がともに拡大したことで、キャビネットの台数が従来と同じなら、より広いフロアスペースが必要となる。
キャビネットに収容するITハードウェアが多くなればなるほど、また各機器のパフォーマンスが高くなればなるほど、より多くの電力が必要になり、より高密度の熱を冷却しなければならない。データセンターの設計にこのような変化をもたらした最大の要因は、仮想化と統合化だ。高密度機器の運用には、無停電電源装置(UPS)、配電装置(PDU)および空調機器用(HVAC)に広いスペースが必要とされる。
現在、こうした設備の多く機器をラックの列に組み込んでいる。新たなアプローチによってフロアスペース全体に及ぼすような要求でない場合でも、レイアウトを物理的に変更する必要があるかもしれない。特に、合併や買収を行う企業や、補助金によって本格的なコンピューティングシステムをいきなり導入する可能性のある研究施設などでは、将来的にどのように拡張するのかの予測が困難だ。
ただ、数年先を見越した拡張を正確に予測するのは無理でも、拡張の見込みを現実的に評価することにより、長期間にわたって柔軟な拡張と縮小に対応できるモジュラー設計が可能になる。こうした柔軟性こそが、現在のデータセンター設計で必要な成功の条件だ。
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