サーバを収納するなら知っておきたい「データセンター設計指針」とは建てたらもうやり直せない(2/2 ページ)

2016年01月07日 12時00分 公開
[Robert McFarlaneTechTarget]
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データセンターの設計を変更する

 システム構成を変更する必要があるという理由で自社所有のデータセンターを運用している企業もある。学術機関は大規模な研究システムの“予期せぬ”登場を期待する。また、さまざまな理由で変化が激しい部門はどの企業にも存在するだろう。こうした度重なる変化に対応するために、データセンターには迅速かつ容易に能力を調整することが必要になる。こうした調整は通常、現場での作業になる。スペース、電力、冷却の各要件の大規模かつ何度にもわたる変動は、ホスティング施設の利用料金の増加を伴う。

 変動率は運用履歴に基づいて容易に数値化できる。この情報はデータセンター設計で考慮すべき柔軟性の許容範囲に大きく影響する。演算処理能力に対する要求が変化し、それに対応してもエネルギー効率を維持し、そして、エネルギーコストを最小限に抑えるには、更新情報を正確に把握しなければならない。

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電力負荷と熱負荷

 設計ガイドの基本的な要件を理解したら、実際のパラメータを決定する。手始めは電力負荷と熱負荷だ。“1平方フィート当たりのワット数”という時代遅れの指標は避けるべきだ。現代のデータセンターは、決してスペース全体にわたって一様ではない。平均値を基準として設計すると、ある場所では容量が不足し、別の場所では容量過剰という事態を招く。一方、施設全体に予測最大負荷を適用すると、不要なコストが発生する。

 さらに、負荷の算定はキャビネット単位で行うべきだ。既存キャビネットの負荷は、スマート型OAタップや電気工事用のクランプメーターを使えば簡単に測定できる。クランプメーターから得られる回路負荷の測定値は瞬時値であり、一定時間の平均値ではないが、キャビネットの相対的負荷の目安となるため、設計者はこれに基づいて負荷の規模を判断できる。

データセンターを収容するビルの影響

 理想的なデータセンター設計にどこまで近づけるかという点では、ビルの果たす役割を避けて通ることはできない。新築のビルにも現実的な制約があるが、既存の構造物を使わなければならない場合、ビルの状態がデータセンターの設計とコストに深刻な影響を及ぼすことも多い。既存の柱でキャビネットの列を分断すると、非効率的なスペース配置になる。床スラブに対して構造的な補強を施したり、荷重を分散するためにキャビネット列の間隔を広くしたり必要があるかもしれない。フロア間の高さが低いために、通気用の二重床を施工する余裕がない場合もあるだろう。

 還気プレナム(空調装置に戻る空気が通る空間)を使えるかどうか、あるいは共同高架インフラを設置するスペースがあるかどうかは、部屋の高さによって決まる。二重床がなければ、電源、ケーブルトレイ、冷却用パイプ、照明などを全て上部に配置しなければならず、他の設備と干渉する恐れがある。

 窓はデータセンターで大きな問題になるため、ビルの規格(と関連する法律)が許す範囲内で除去する必要がある。荷物エレベータへのアクセスは必須だ。急勾配あるいは急角度の通路で高価な機器を運搬するリスクを避ける必要があるからだ。当然のことながら、ビルに十分な電源がなかったり、通信事業者の回線にアクセスできなければ、増設や回線引き込みのために必要な工事のために大幅なコストアップが生じるか、さもなければデータセンターの能力を恒久的に制約することになる。

 データセンター施設には、冷却塔、熱交換器および発電機のためのスペースも必要不可欠だ。これらの大型設備は騒音を発生するので、設計者はビル内で勤務する人々や近隣に迷惑が掛からないような対策を講じなければならない。

 データセンターに“標準規格”は存在しない。コンテナ化したモジュールでも、ある程度のカスタマイズが必要だ。それだけに、特定用途向けのデータセンターの場合、多額の投資に見合う成果を出すためにも十分な時間をかけて設計を検討する必要がある。ここで紹介したガイドラインを参考にした検討項目から予算を策定し、データセンターの建設に取り掛かっていただきたい。

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