初めてでも分かる「IHE」講座【第6回】
検査機器が多い「眼科」ドメインでIHEが果たす役割とは
医療情報システムの効率のよい構築・運用のために必要な規格として標準化が進められている「Integrating the Healthcare Enterprise(IHE)」。今回は「眼科ドメイン」における日本IHE協会の取り組みを紹介する。
医療情報システムの効率のよい構築・運用のために標準化が進められている「Integrating the Healthcare Enterprise(IHE)」。本連載では、IHEの推進団体である日本IHE協会(IHE-J)のメンバーがIHEの概要や各分野(ドメイン)での展開、導入事例などを紹介する。第6回となる本稿では、加藤 憲氏が「眼科」ドメインを解説する。【編集部】
眼科診療の特徴
眼科診療科の大きな特徴は、検査が多く、しかもほぼ全ての検査を自科内で行っている点である。大学病院レベルでは20種類以上、診療所でも10種類を超える検査機器を使用する。
一般的な診療科が中央検査室や集約的な検査部門で検査するのとは異なり、眼科においては診療科内に、診察室より大きな規模の明室・暗室の検査室を持つ。医師をはじめ、看護師や眼科独自の検査員である視能訓練士などのメディカルスタッフによって検査が行われる。
初診患者においても、ほぼ全ての患者に対して診察前に視力や眼圧などの事前検査を実施する。外来診療では、医師は視能訓練士や看護師とともにチームで診療を行う。1人の患者に対して、医師と看護師以外にも視能訓練士が関わる点も特徴の1つだ。また、1人の医師が検査、診断、治療に携わる。さらに、同じ検査でも関与する者が時と場合により異なる。「自科検査で眼科医自身がオーダーするケース」「オーダーした医師と異なる眼科医が検査するケース」「視能訓練士が検査するケース」「看護師による器具の準備が必要となるケース」などがある。そのため、自科検査の動線は単一の規則性に固定されず、ワークフローは複雑なものにならざるを得ない。
眼科部門システムの歴史
先に述べたように、眼科部門には数多くの検査機器がある。1990年代に眼底カメラのファイリングシステムが開発された。従来はアナログカメラで撮影した写真を「リバーサルフィルム(反転フィルム)」にし、自科で保存・管理していた。これがファイリングシステムによって、画像を電子的に保存する方法に置き換えられるようになった。
その後、眼底カメラ以外の画像検査機器にも順次対応が行われ、2000年代になると、ファイリングシステムの発展とともに、画像ファイリングシステムから、数値における検査データの保存も可能になった。これにより、眼科で発生する全ての検査データを一元的に管理できるシステムへと移行していった。
病院で病院情報システムの導入が始まり、病院全体の電子化が進んでいったが、眼科においては独自のシステムが既に導入されていた。大量のデータが蓄積された眼科部門システムは、眼科診療においては手放せないシステムとなっていた。またデータファイリングシステムから、部門独自の電子カルテへと発展していった。
眼科領域の標準化への取り組み
日本IHE協会、日本眼科学会、日本眼科医療機器協会は2007年、産学連携による眼科領域の医療情報環境への標準化の取り組みを開始した。そこでは「標準化における相互運用性・コストダウンを目指す」という目標が掲げられた。
眼科領域の標準化は2本柱で取り組まれている。1つは「検査機器からの出力データの標準化」である。眼科部門において一部の画像検査機器は、標準的な仕様であるDICOM規格が制定されており、眼科機器メーカーも準拠するように努めている。しかし、前述したように眼科には多くの検査機器があり、ほとんどの機器については規格の統一がされていない状況である。
そのため、技術委員会では検査機器と部門ファイリングシステムの通信データの標準化を進めている。2008年に、最も普及率の高いオートレフケラトメータの標準仕様書「JOIA STD」を制定したのを手始めに、順次対応の機種を拡大。2016年1月現在は7機種のJOIA STDの策定が完了している。現在も継続して他の機種への拡大を進めている。
もう1つは、眼科部門システムが独自の形に発展を遂げてきたことによる課題を解決することだ。部門システムと病院情報システム(HIS)との連係においても、各施設が連係部分を独自に構築しているのが現状である。このシステム間の連係についての標準化が課題となっている。日本IHE協会は現在、JAHIS(保健医療福祉情報システム工業会)との打ち合せを開始している。今後、部門システムを有効に活用するためにも、HISとの標準連係の仕様策定が必須となる。
IHE-J眼科の組織
日本IHE協会の眼科ドメインは企画委員会と技術委員会によって組織されている。企画委員会は医師による組織で、前述したような複雑な診療ワークフローを解析し、その作成作業を行っている。またアンケートを実施し、各医療施設の問題点の把握と解決手法を検討している。
技術委員会には、日本眼科医療機器会員の眼科機器メーカーが参加しており、技術的な面での標準化に取り組んでいる。日本眼科医療機器協会の標準化技術委員会がバックアップしており、こちらでは特に検査機器からの出力データの標準化に向けた活動を実施している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
初めてでも分かる「IHE」講座
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握 -
製品資料
[株式会社マクニカ] 「脆弱性総まとめ」解説 被害事例から考える必須の対策ポイント -
製品資料
[Splunk Services Japan合同会社] サイバー脅威「トップ50」完全解説ガイド、新たな攻撃手法に対抗するには -
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」完全ガイドブック:メリットから資格取得のポイントまで -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] はじめての「自治体/官公庁入札」 必要な知識がすぐに学べる入門ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
「ITインフラとデータ保護・バックアップ対策」に関するアンケート
-
3
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
4
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
5
エージェンティックAIで、コンタクトセンターの「おもてなし」をどう進化する?
-
6
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
7
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
10
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー