オープンソースと商用ソフトウェアとの戦いは第2ラウンドに入った。オープンソースソフトウェアは体重以上に良いパンチを繰り出している。
「Windows」や「UNIX」「Oracle Database」のスキルは今や「レガシー」化したという認識が、IT業界で広がっている。新興企業から大手電子商取引サイトまで、オープンソースソフトウェア(OSS)の利用が拡大し、OSS関連スキルの需要が高まっている。
つい最近まで、多くのIT部門は商用ソフトウェアを運用していた。データセンターではプロプライエタリなUNIXサーバとx86ベースのWindowsサーバが稼働し、デスクトップはWindowsの独占状態だった。今、ユーザーコンピューティング環境はスマートフォンやタブレットの到来でかき乱され、データセンターでは「Linux」が勢力を増している。
実際、調査会社IDCは2015年8月の時点で、サーバ市場はOSSにシフトしつつあると指摘した。「サーバ市場における最近の成長トレンドは、『Docker』や『OpenStack』といったOSSプロジェクトのおかげで大規模なIT投資が行われていることの裏付けだ」。IDCのエンタープライズインフラ担当部門副社長アル・ギレン氏はそう語る。
Computer Weeklyが以前も伝えた通り、一部の企業は商用データベースライセンスの割合を減らす目的で、OSSの採用を選んだ。例えばABN AMRO Clearing BankはEnterpriseDBの製品を採用した。同社の製品は、オープンソースデータベースの「PostgreSQL」をベースにしており、「Oracle Database」の代替を提供するとうたう。
大量のユーザーを見込むWebスケールの企業にとって、OSSの価格は特に魅力が大きい。商用ソフトウェアと異なり、OSSは無料だ。企業は必要があれば商用サポート契約の料金のみを支払う。
Gartnerは、2015年4月に発表した報告書でオープンソースRDBMS市場について分析。EnterpriseDB製品のコストは3年間で4万1400ポンドと試算した。これに対して『Oracle Database Enterprise Edition』の場合は47万3100ポンドだった。
ソフトウェアのコストは、OSSの普及を後押しする大きな要因の1つだ。だがそれだけではない。コストは別にしても、一部の組織にとってOSSは技術的に優れた選択肢に映る。さらに、調査会社Forrester Researchの報告書「Application Modernisation, Service by Microservice」(マイクロサービスによるアプリケーションの現代化、サービス)は次のように指摘する。「クラウドサービスとOSSは、新たなコード入れ替えの代替を提供する。オープンソースプロジェクトやAmazon、Google、Microsoft、Salesforce.comといったクラウドサービス事業者は、質の高いコンポーネントとサービスを大量に提供し、マイクロサービスの導入を促し、組織が書かなければならないコードの量の削減を可能にしている。これによって、アプリケーション内のカスタムコード入れ替えの新たな可能性が開けている」
航空券販売を手掛けるグローバル企業のAmadeus IT Group(以下、Amadeus)は、約7億人の乗客にサービスを提供する。2014年には5億件を超す予約を受け付けた。同社が新しいAmadeus Cloud Servicesを支えるために必要としたのは、反応時間が極端に短く一貫性の高いシステムだった。同社はRed Hatの「OpenShift」やDocker、Docker管理ツール「Kubernetes」などで構成されるOSSスイートを選定。NoSQLデータベースの「Couchbase」と組み合わせて、グローバルな分散環境を横断する標準化された統合型導入プロセスを構築した。
Amadeusの航空IT担当研究開発ディレクター、クリストフ・デフェイエット氏は、「われわれはCouchbaseを使ってほぼリアルタイムのアクセスを提供し、システムの高い拡張性を実現している」と話す。
デフェイエット氏によれば、OSSを利用することで特定のサプライヤーの技術スタックに囲い込まれずに済む。「われわれにはソフトウェアスタックを習得する能力がある」と同氏は述べ、OSSコミュニティーへの積極的な貢献を通じて、Amadeusが製品ロードマップに影響力を行使する機会が持てると言い添えた。
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