IoT対応を進める英気象庁がMicrosoft Azureを選んだ理由「利用できるクラウドは全て比較した」

各地の気象観測所から自動的にデータを収集するため、英気象庁はGoogleのクラウドからMicrosoft Azureに移行した。「利用できるクラウドは全て比較した」移行担当者がAzureを選んだ理由とは何か。

2016年10月12日 08時00分 公開
[Cliff SaranComputer Weekly]
Computer Weekly

 英気象庁(Met Office)は、IoT(モノのインターネット)のサポートを目指し、「Microsoft Azure」を利用して気象情報サイト「Weather Observations Website」(WOW)を開発し直した。

Computer Weekly日本語版 10月5日号無料ダウンロード

本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 10月5日号」(PDF)掲載記事の抄訳版です。本記事の全文は、同プレミアムコンテンツで読むことができます。

なお、同コンテンツのEPUB版およびKindle(MOBI)版も提供しています。

ボタンボタン

 Met OfficeがRoyal Meteorological Societyと英教育省のサポートを受けてWOWを立ち上げたのは2011年6月のことだ。WOWの目的は、英国全土の気象観測員を支援することだった。

 WOWは当初Googleのクラウドサービスを使用していたが、これをAzureに移行して、リアルタイムデータを提供するセンサー数の増加に対応できるようにした。

 Met OfficeのCIO技術顧問を務めるマーク・バーゴイン氏は、「WOWは本来、独自に気象観測所を所有する気象愛好家に協力を求めることを目的としていた」と言う。

 Met Officeが2011年に構築したGoogleベースのWOWは、自動気象観測所だけを対象とするものだった。だが、最新バージョンのWOWは新たにインターネット接続型センサーを考慮に入れる必要が生じたとバーゴイン氏は話す。

 「Met Officeにとって重要なのは、スマートメーターのようなIoTだ。センサーが増えれば、収集できるデータも増える。新たな装置が登場すればそれを簡単に追加できるようにして、もっと手軽に拡張できるようにしたいと考えていた」と同氏は話す。

気象データの収集

 WOWは、気象愛好家が運用する自動気象観測所からデータを収集する。こうしたインターネット接続型のセンサーにはコストが数百ポンドのものから千ポンドを超えるものまでさまざまな種類がある。各観測所からMet Officeに提供されるのは、風、気温、雨を計測するセンサーで構成され、定期更新される密度の高いネットワークだ。これにより、各地の気象に関する最新情報をリアルタイムに取得する。

 「Met Officeは、上空から見下ろす衛星と気象観測所のコアネットワークを頼りにしている。だが、気象学者にとっては、非常に密度の高いセンサーのネットワークを提供するWOWが役に立つ」と同氏は言う。

 気象愛好家の気象観測所はインターネットに接続し、HTTPを使ってWOWと通信する。各観測所が収集したデータは自動的にアップロードされる。

 WOWは英国のプロジェクトと考えられているが、気象愛好家のコミュニティーは全世界に広がっており、世界中の気象観測所から送られてくるデータを記録する。

 「WOWは、気象の観測場所、詳細レベル、報告の頻度を問わず、地球全体の現在の気象観測を共有するプラットフォームになる」とバーゴイン氏は言う。

クラウドプロバイダーの選択

 Met Officeは、新しいWOWに最適なテクノロジーの決定を責任者に委ねた。「利用できるクラウドは全て比較した」と、Met Officeで観測部門のプロジェクト管理者を務めるマリア・ドロシー氏は言う。

 そして、MicrosoftパートナーのNew Signatureと協力して、AzureにWOWを実装することを選んだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

技術文書・技術解説 ドキュサイン・ジャパン株式会社

導入が進む一方で不安も、電子署名は「契約の証拠」になる?

契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

VMware「永久ライセンス」を継続する“非公認”の方法

半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品の永久ライセンスを廃止した。その永久ライセンスを継続する非公認の方法とは。

市場調査・トレンド 株式会社QTnet

業種別の利用状況から考察、日本企業に適したクラウドサービスの要件とは?

システム基盤をオンプレミスで運用するか、データセンターやクラウドで運用するかは、業種によって大きく異なる。調査結果を基に、活用の実態を探るとともに、最適なクラウドサービスを考察する。

製品資料 発注ナビ株式会社

商談につながるリードをなぜ獲得できない? 調査で知るSaaSマーケの課題と対策

SaaSサービスが普及する一方、製品の多様化に伴い、さまざまな課題が発生している。特にベンダー側では、「商談につながるリードを獲得できない」という悩みを抱える企業が多いようだ。調査結果を基に、その実態と解決策を探る。

製品資料 株式会社ハイレゾ

GPUのスペック不足を解消、生成AIやLLMの開発を加速する注目の選択肢とは?

生成AIの活用が広がり、LLMやマルチモーダルAIの開発が進む中で、高性能なGPUの確保に問題を抱えている企業は少なくない。GPUのスペック不足を解消するためには、どうすればよいのか。有力な選択肢を紹介する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。