IoTと交わるモビリティの未来――5Gネットワーク、コネクテッドカーの動向はモビリティの将来を握るARとVR

2020年ごろまでには、5Gネットワーク、コネクテッドカー、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)がモノのインターネット(IoT)と交わることになるだろう。モビリティの今後について専門家が意見交換をした。

2017年03月25日 08時00分 公開
[Erin DaleTechTarget]
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 未来はまるでHanna-Barbera Productionsが製作した米国のテレビアニメ「The Jetsons(邦題:宇宙家族ジェットソン)」の世界のようだ。具体的には、ロボット、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、スマートハウス、自動運転車が日常的なものになるだろう。

 モビリティは、ARやVRの世界への扉となるデバイスと共に、こうしたデジタル改革では中心的な存在になる。モビリティとモノのインターネット(IoT)もまた同じ方向に進んでいる。2020年までに5Gネットワークが実用化すれば、この2つはさらに大きく交わることになる。

 「SFの世界が現実のものになっている」とジョージ・ウェスターマン氏は語る。同氏は、MIT SloanのInitiative on the Digital Economyで研究者として働いている。

 2017年3月8日に米国で開催された「IDC Directions」カンファレンスで、ウェスターマン氏をはじめとする専門家が、クラウドコンピューティング、ソーシャルメディア、人工知能(AI)、IoTにおけるモバイル技術のこれからとその役割について意見を交わした。こうした技術が交わることで、過去に見たことがない変化の波が押し寄せることになると同氏は述べている。

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モビリティの将来を握るARとVR

 現在、市場には、さまざまな種類のARシステムとVRシステムが出回っている。GoogleやSamsung Electronicsのハードウェア製品もあれば、Microsoftの「Windows」やGoogleの「Android」で実行する自己完結型のスタンドアロン製品もある。

 IDCでバイスプレジデントを務めるトム・メイネリ氏は次のように話す。「ハードウェア要素は軌道に乗り始めている。VRは十分成熟し、地位の確立を目指す競争が発生するようになっている。企業は一定の地位を獲得するために争い始めるようになるだろう」

 VRは映像と音を生成することで人工的な環境を作り出す。一方のARは実在の物理世界に情報を重ね合わせることで現実の世界を拡張する。

 AR製品とVR製品が増えれば、企業のユースケースやチャンスの増加につながる可能性がある。

 メイネリ氏によると、シリコンバレーの企業では既にVRが活用されているという。その一例がNVIDIAだ。同社は新本社屋の建設の真っ只中で、着工前にVRを使用して新本社の全体構造を視覚化している。他にも、世界各地で働く同僚と仮想会議を開いたり、共同作業を実施したりするためにVRを活用している企業もある。

 ただし真の大変革をもたらすのはARだとメイネリ氏は自身の見解を語る。Microsoft、Google、Appleといった大手テクノロジーベンダーが、DAQRI、Meta、Magic Leapなどの知名度で劣る企業を相手に全力で戦おうとしている。

 IT部門の意思決定者はARに大きな関心を寄せることになる。それはARがモバイルデバイス上で機能し、ハンズフリーでの作業を可能にするためだとメイネリ氏はいう。

 「両手がふさがるため業務中にコンピュータを使えない人がいる」(メイネリ氏)

 IDCによると、2020年までに、医療業界、建設業、小売業では、VRテクノロジーに75億ドル、ARテクノロジーに250億ドルを投資することになるという。

5Gネットワークを通じたモビリティとIoTの交わり

 実用化が近づいているもう1つの革新は5Gネットワークだ。2020年に登場することが見込まれている。

 5Gネットワークは第5世代の無線WANだ。5Gネットワークが現実のものとなれば、高速化、遅延の減少、バッテリー持続時間の改善が期待される。このような改善が現実のものとなるのは数年先のことだが、モバイルデバイスとIoTデバイスに大きな影響力があるとIDCでバイスプレジデントを務めるキャリー・マクギリブレイ氏は言う。

 スマートフォンが5Gネットワークに接続するようになったら、これまではあり得なかった方法でやりとりが可能になる。また、IoTデバイス同士が人間を介さずに相互に情報伝達することもできるようになる。

 「やがてはこうしたテクノロジーが人間に取って代わる」(マクギリブレイ氏)

 IDCによれば、2025年までに900億台近くのデバイスが5Gネットワークに接続することになるという。

全てを巻き込むコネクテッドカー

 コネクテッドカーは将来のモビリティにおけるもう1つの原動力になる。コネクテッドカー市場の歴史はまだ浅いものの、デジタルサービスに関しては企業同士が連携する時期に来ている。例えば自動車メーカーは都市計画立案者と協力してスマートパーキングアプリケーションを導入できるだろう。

 IDCで上級アナリストとして働くブライアン・ヘイブン氏は次のように語る。「コネクテッドカーが実現すれば生活は一変する。コネクテッドカーは確実に実用化されるだろう。今までなら考えられないようなビジョンだが、現実化のための要素はそろっている」

 モバイルテクノロジーは既に自動車の標準機能になっている。自動車メーカーは、自動車で生じるデータを利用するサービス組み込みアプリやOSを採用している。ARやVRを活用して自動車のフロントガラスに情報が表示されるようになるのも遠い未来の話ではない。

 「どれもこれもスマートフォンで実現しているモバイルサービスを拡張して、自動車で利用できるようにしているにすぎない。だが、よりつながりが感じられ、没入感の高い体験を味わうことができるようになる」(ヘイブン氏)

 5Gネットワークは、自動車メーカー、テクノロジーベンダー、ネットワークプロバイダーに多くのチャンスをもたらす。IDCで調査部門のマネジャーを務めるヘザー・アシュトン氏によると、コネクテッドカーは5Gネットワークにとって完璧なユースケースになるという。

 「自動車はモバイルデバイスだ。自動車業界はモバイルサービスを軸にして業界自体をもう一度創造し直そうとしている」とアシュトン氏は語る。

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