ソフトウェア定義ストレージ(SDS)の実装を検討する際は、多くの選択肢がある。SDSのメリットを最大限に引き出す選び方とは。
ソフトウェア定義ストレージ(SDS)を採用すると、IT部門はストレージアーキテクチャの導入時に発生するソフトウェアとハードウェアのそれぞれのコストを切り離して考えることができる。
SDSシステムにより、顧客は効率的にオープンソースまたはライセンスソフトウェアを入手し、物理インフラ(通常は汎用サーバ)に導入することが可能だ。従来のハードウェアアプライアンスではなくSDSを使用するメリットは、IT部門がニーズに合わせてインフラの各パーツの購入コストを最適化できる点である。例えば、既存の社内の慣習やサポートモデルに適合したハードウェアを選択することができる。
なぜ、SDSがストレージ導入の実現可能な選択肢になったのだろうか。2012年ごろからストレージベンダーは徐々に、自社の製品をコモディティや既成のアーキテクチャと連係させたものへと転換し、独自のハードウェアコンポーネントがもたらす複雑さを取り除いてきた。今日のサーバ、コントローラー、ハードウェア、SSDは、比較的安価で安定している。その結果、以前はカスタムハードウェアで提供されていた多くの機能が、コモディティコンポーネントとソフトウェアで提供できるようになっている。これがSDSシステムの重要な本質だ。ソフトウェアはスマートになり、スマートであることに価値が置かれている。
多くのIT部門が特注のストレージシステムを構築するのは難しいと考えているようだ。しかし、今日のデータストレージ市場であれば、私たちが思うほど難しくない。新しいオブジェクトストレージプラットフォームのほとんどは、ソフトウェアのみが設計されており、ベンダーは顧客がハードウェアを自分で選択するか、参照設計の一覧から選べるようにしている。SDSは、パブリッククラウドとの統合など、ソフトウェアベースのプラットフォームに移行することでしか得られない運用上のメリットをもたらす。ほとんどのSDSシステムは、仮想マシンまたはパブリッククラウドインスタンスとして実行できる。そのため、クラウドプロバイダーのストレージ製品に縛られずにパブリッククラウド環境でデータを移動することが可能だ。
適切なハードウェアプラットフォームを見つけることが、SDSインフラを実装する際の重要な最初の一歩だ。通常、SDSには3つの実装方法がある。
ベンダーが推奨するハードウェアを選ぶことにもメリットはある。まず、構成がテストされ、SDSシステムと連動することが実証されている。ファームウェアとドライバの互換性について問題や予想外の事態が発生する可能性は低い。さらに、SDSベンダーは、プロセッサ、メモリ、フラッシュ、ディスクの組み合わせを最適化することを念頭に置いてハードウェア構成を設計している。自分で構成した製品の場合、IT部門は各コンポーネントとそれらがどのように連動するかを検証するためにテストを行わなければならない。その目的は、高価なリソースを無駄にしたり、ボトルネックを引き起こしたりしない各コンポーネントの適切な比率を特定することだ。
ベンダーが提供するハードウェア構成ではサポートが整っていることが多く、デバイスとコンポーネントの問題の管理に頭をかかえる心配はない。ただし、当然のことながら、その分コストはかかる。IT部門が既にサーバベンダーとサポート契約を交わしている場合、SDSの実装に用いるハードウェアコンポーネントは既存の基本契約に組み込むことができるだろう。
このような場合に、正しい判断も誤った判断も存在しない。ハードウェアサポートモデルが適切であるかどうかは、既存のベンダーとの関係と、IT部門が初期設計からスペアのストックや代替品のテストまで、ハードウェアの検証を直接サポートできるかどうかにかかっている。当然、テストをするには、新しいスキルを取得して運用プロセスを策定しなければならない場合もある。
ベンダーが提供する従来の製品を使用する重要なメリットは、多くの顧客との経験と知識を活用して初期段階でハードウェアの問題を特定できることだ。ストレージベンダーは多くの顧客からデータを得ることで、平均よりも多いドライブ障害や特定のコントローラーカードによるパフォーマンスの問題などで見られるパターンを特定することが可能だ。
独自のSDSインフラを構築したIT部門は、自社でプロセスを整備して、こうした類の問題を特定しなければならない。さもなければ、導入したストレージの安定性は低くなり、必要以上にコストがかさむ危険性がある。
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