FinTechにとどまらないブロックチェーン活用事例インディーズミュージシャン支援も!?

金融業界以外でもブロックチェーンの活用が始まっている。ワインやアボカドの追跡、そしてインディーズミュージシャン支援まで、ブロックチェーンの活用事例を紹介する。

2017年05月30日 00時00分 公開
[SA MathiesonComputer Weekly]
Computer Weekly

 デジタル通貨のビットコインは、金融業界を混乱させるものだと受け止める人もいるかもしれない。この通貨を支えているテクノロジーであるブロックチェーンは、暗号を使ってエントリに永続的な改ざん防止の仕掛けを施すデジタル分散型台帳の一種で、金融業界で広く採用されている。金融サービス企業と密接に連携している法律事務所や一部の公共機関などでも、このテクノロジーへの関心が高まっている。

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 さらに、サプライチェーン、電力網、インディーズミュージシャンの支援など、バンキングとは懸け離れた分野へもブロックチェーンのテクノロジーを応用しようと模索している人々が現れている。デジタルセキュリティプロバイダー企業Gemaltoの製品戦略担当ディレクター、ジョー・ピンダー氏によると、ブロックチェーンのシステムは、記録したデータのアカウンタビリティ(説明責任)、監査性、可用性、完全性を保証する機能が優れているという。

 「一方でブロックチェーンは、今のところ機密性の処理に苦慮している」と同氏は続ける。「実現できる部分もあるが、このシステムが本来得意とする機能ではない。機密性以外の4つの(セキュリティ)機能は、ブロックチェーンならではの自由な発想で解決している」

 この方針により、サプライチェーン全体でアイテムの動きを追跡するテクノロジーの魅力が増す可能性がある。特に、チェーンに多数の組織が結び付いていて、アイテムに処理上の特殊な要件があり、個人データが含まれていない場合はなおさらだ。

 例えばGemaltoは、ある保険会社に協力してきた。その保険会社は、厳重な温度管理が必要な医薬品を気温が高い地域の病院へ配送する作業の支援を製造元から依頼されていた。デジタル温度計は薬の温度を定期的に記録し、そのデータはブロックチェーン台帳の他のデータに追加される。

 「サプライチェーンを進む間に、責任と説明責任を引き渡すポイントが多数存在する」とピンダー氏は説明する。「薬品を良好な状態で届けるという保険を引き受け提供する任務を負った(保険)会社としては、安全対策が必要だった。ここでブロックチェーンが果たした役割は、サプライチェーンの中で、それぞれ固有のデータセットを担当している当事者たち全員でデータを共有してもらうことだった。当事者自身にはデータを操作する能力がないので、『データの共有は私の仕事ではなく、そちらの権限でやることだ』と言われた」

Everledgerと高級ワインの場合

 Gemaltoは、多くの企業や人々がデータを共有しなければならない分野が他にもあることに注目している。例えば農業地帯の収穫高は、農業従事者にとってはもちろん有益だが、農作物のトレーダーにとっても不可欠である。

 英国を本拠地とする新興企業Everledgerは、ダイヤモンドの追跡を目的として既にブロックチェーンシステムを利用しており、特定の農産物向けにその用途を拡大しようと試みている。その農産物とは、高級ワインだ。

 2017年12月、同社はモリーン・ダウニー氏(ワインの専門家)と共同で、新たに構築したシステム「Chai Wine Vault」を使い、シャトー・マルゴー(フランスの著名なワイン生産者)の、2001年製造のボトルに最初の証明書を記録した。IBM製品をベースに構築した台帳には、90点以上のデータがその所有権や保管履歴とともに格納されている。

 Everledgerのプロダクトマネジャー、レオニ・ランジ氏は、このシステムは詐欺対策が目的だと説明する。同社は、国際的に流通している「高級ワイン」の売り上げの5分の1は偽物の取引によるものだと見積もっているという。ダイヤモンド業界では認証システムが確立されているが、ワインが本物かどうかの鑑定は、本物の製造者が使用したラベルのデザインや紙質などに基づいて行われるのが実情だ。「われわれはこのデータを全てデジタルで保存する手段を構築した」と同氏は付け加える。

 Everledgerのシステムは今のところ、ボトルの温度など環境的な要因は追跡対象としていない。それは、そのワインを保管している組織の評判だけで事足りるからだとランジ氏は説明する。なお同社は、改ざんされるとそれが一目で分かるような無線(RFID)タグを設計し、ワインボトルのコルク栓に貼付している。

 ブロックチェーンを利用しているといっても、Everledgerはダウニー氏が収集した情報の全てを認証発行のために使用しているわけではない。「公的な認証を授与するために、ダウニー氏が収集した情報を全て公開する必要はない。仮にそうしたとすれば、詐欺師たちにわざわざ手ほどきをするようなものだから」と同氏は説明する。

 ブロックチェーンシステムに全てを格納するのではなく、機密性の高いデータや個人情報は別システムに格納してデータを分割するのは合理的なやり方だ。英国およびアイルランドでブロックチェーン部門のリーダーを務めるルパート・コルチェスター氏はコメントする。「大規模組織のブロックチェーンソリューションでは、適切な権限を持つ者がネットワーク上の適切なデータを参照できるように設計することが重要だ」と同氏は指摘する。「キーを持っている者なら誰もが参照できる場所に全てが格納されているビットコインとは、その点が違う」

Maerskとアボカド

 コルチェスター氏はさらに話を続ける。

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