音楽認識で知られるShazamの新CTO、シャープ氏にインタビューした。「土曜日でも出勤したくなるほど職場の雰囲気を盛り上げたい」と語る同氏が真に目指しているチーム像、エンジニア像とは?
リチャード・シャープ氏は先日、CTO(最高技術責任者)としてShazamに迎え入れられた。同氏は、Googleのバンキングサービス比較製品開発チーム責任者、Yieldify(マーケティング分野のテクノロジーに特化した新興企業)のCTOなどを歴任した人物だ。
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Shazamはいろいろな意味で、携帯電話ベースの楽曲認識という新たなサービスを開拓した企業といえる。当初は「2580」という名称のサービスだった。ユーザーが短縮ダイヤル「2580」でShazamに電話をかけ、携帯電話のマイクを使って知りたい曲の一部(の音声)をShazamに送信する。呼び出されたShazamサービスは、(受信した音声を基に)楽曲のシグネチャデータベースを検索して楽曲を特定し、曲名をテキストでユーザーに送り返す。スマートフォンが普及するよりずっと前の話だ。
同社は2008年、Appleの「App Store」で配布するShazamアプリを開発した。同年に発売された「iPhone 2」に対応するものだった。また、2008年内にAndroidに移植している。
楽曲認識という分野を開拓し15年以上にわたってリードしてきた同社にとって、テクノロジーは影響力の大きい要素であり、そのテクノロジーを推進するCTOは要職だ。
「私はとにかく音楽好きで、記憶の限りではずっと前から、素晴らしいアーティストや曲に出会いたいと思ったときは、いつもShazamを頼りにしていた」とシャープ氏は振り返る。「だからShazamへの入社が決まったときは、これほど人気が高く、どんな環境でも利用できる製品に関与できることがこの上なくうれしかった。世界最高レベルのエンジニアチームと協力して楽曲認識のサービスをさらに拡大し、アーティスト、ユーザー、(音楽関連の)ブランドに想像を超える斬新な体験を今後も提供し続けたい」と同氏は抱負を語る。
テクノロジーが進化し続けているので、以前よりもイノベーションを実現しやすくなった。現在一般に公開されている楽曲認識サービスは、テクノロジーの観点からいえば抽象化が進んでいる。言い換えると、技術的にはアイデアを製品化するまでのプロセスで悩むことが少なくなったため、各社は革新的なアイデアの実現に注力している。「製品を実現する基礎技術について悩む必要はなくなった」と同氏は説明する。
Shazamは、スケールアップやスケールダウンが容易なクラウドサービスを利用している。例えば、Shazamは2017年のグラミー賞授賞式に協力した。「トラフィックが急増しても、その場ですぐにスケールアップできた」とシャープ氏は話す。注目度の高い授賞式であるが故に起こるトラフィックの急増に対応できるITインフラを、このように融通の利くクラウド以外の方法で構築しようと仮に試みたとすると、それは「車の走行中にタイヤを交換する」のに等しい。
またクラウドは、いわゆる「APIエコノミー」とも直結している。この分野でもShazamはさまざまなアイデアを実現させてきた。
「ハイレベルなサービスを使って画期的な製品を作れるようになった」とシャープ氏は話す。「そうしてわれわれは、画像によるメッセージングサービスであるSnapchatにShazamを統合し、2016年の終わりに公開した。また、楽曲認識機能をサービス化して他社へ提供している」
クラウドはまた、機械学習を導入するハードルを下げる役割も果たしている。「機械学習が実用化され始めたころは、適切なスキルを持つ人材をなかなか確保できなかった」と同氏は当時を振り返る。「スキルがある人々は給与水準が高かったので、実際に彼らを雇う力があったのは、GoogleやFacebookぐらいだった。しかし今なら、オープンソースのフレームワークがある。それにクラウドでかなり自動化されているので、ひところに比べれば、機械学習を誰でも簡単に導入できるようになった」
さらにシャープ氏は、CTOが社内で果たす役割に関する持論も展開する。
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