「ソフトウェア定義ストレージ」(SDS)の定義はベンダーによって異なる。ハイパーバイザーベースやハイパーコンバージドベースなど、さまざまな種類のSDSについて長所と短所を解説する。
ストレージの分野で、「ソフトウェア定義ストレージ」(SDS)ほど見解に相違が見られる用語はない。一般的に受け入れられている定義はなく、SDSの定義はベンダーによって異なる。ベンダーは、自社の製品に当てはまるようにSDSの定義を作り上げており、全てのストレージベンダーがSDSを提供しているように見えているのが実情だ。
SDS市場において、SDSの見解について一致しているのは、アーキテクチャではなくマーケテクチャ(マーケティング上の工夫)くらいだろう。
SDSでは、データストレージのハードウェアを管理するソフトウェアからハードウェアが分離されており、ストレージソフトウェア自体はハードウェアに依存していない。コントロールプレーンはデータプレーンから分離しているのが一般的だが、断言できるとは限らない。
このように広範な定義によって、現在利用可能なほぼ全てのストレージがSDSと認められている。そのため、SDS市場では、最適な機能を備えた製品の判断は消費者の手に委ねられている。
あらゆるストレージシステムは、ソフトウェアによって定義されてきた。変化したのは、ソフトウェアを持ち運べるようになったことだ。
これまでストレージシステムのソフトウェアは、管理対象のハードウェアに付随しているのが標準だった。ハードウェアの容量やパフォーマンスが不足した場合は、ハードウェアを取り換えなければならなかった。そして、ハードウェアと合わせてソフトウェアのライセンスの再購入も余儀なくされていた。
事態を大きく悪化させていたのは、ストレージシステムのアーキテクチャが孤立したサイロを形成していたことにあった。一意なインフラが原因で、ストレージのプロビジョニング、データの保護、災害復旧、機器のリフレッシュ、データの移行、電力、冷却といった全ての要素が徐々に維持できなくなっていった。現在、データには、データの急増および増加の一途をたどるデータを保管するニーズというトレンドが見られる。このトレンドと現在市場に出回っているアーキテクチャの相互作用によって、ストレージシステムは非常に複雑で難解な存在であるだけでなく、高価な価格によって維持できなくなっているのが実情だ。
SDS市場が現在のようになったのには、幾つかの技術的な要因もある。まず、x86コンピューティングアーキテクチャの継続的な向上がもたらした必然的な結果と捉えることができる。x86アーキテクチャのパフォーマンス向上と特定のストレージ機能でコアが利用できることになったことで、ストレージシステムではx86アーキテクチャが標準になった。
SDSを後押しする他の技術的な要因には、サーバ、デスクトップPC、アプリケーション、ネットワーク(SDN)におけるx86仮想化の普及が挙げられる。この事実は、データイメージが存在するハードウェアからデータイメージを分離することをIT部門が受け入れる態勢を整えるのに一役買っている。
クラウドテクノロジーの人気も、SDS市場を後押しする大きな要因となっている。クラウドデータセンターは、業界標準とコモディティハードウェアに基づいた安価な新しいストレージアーキテクチャを必要としていたからだ。
SDSを後押しする他の技術的な要因には、サーバ側のフラッシュストレージ、メモリとサーバストレージを他の物理サーバホストと透過的に共有できるようにするソフトウェアなどが挙げられる。
これら全てのテクノロジーの変化によって、サーバとストレージハードウェアの垣根がなくなり、ストレージソフトウェアの携帯性と柔軟性は高まった。それから、ストレージのコストが大幅に減少していることも見逃せないだろう。
標準的なSDSの定義が存在しない中で、SDS市場ではさまざまなテクノロジーが生まれてきた。前編では、以下2つのSDSの種類を取り上げる。
上述の各種類には重要な相違点と類似点があり、複数の種類に分類される製品もある。SDSでは「柔軟性」「使いやすさ」「スケーラビリティとパフォーマンス」「総所有コスト(TCO)」が重視されるため、本稿では、この4つの基準から各SDSの長所と短所を評価する。
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