ハイパーコンバージドの核となる「SDS」、その役割と技術の選び方簡単ではない「ソフトウェア定義ストレージ」の運用

ベンダーは、マーケティング戦略で「ソフトウェア定義テクノロジー」という言葉をよく用いる。しかし、実際の実装では企業がソフトウェア定義を習熟するまでには長い時間を要する。

2017年06月06日 15時00分 公開
[Logan G. HarbaughTechTarget]
導入が簡単で管理コストも削減できるハイパーコンバージドインフラの導入意欲は高まる一方だ。画像は日本ヒューレット・パッカードの「HPE Hyper Converged 380」

 ソフトウェア定義テクノロジーに関する説明をベンダーから聞くと、何か新しいものに思えるかもしれない。しかし、ソフトウェア定義ストレージ(SDS)は、サーバやネットワークにおけるソフトウェア定義アーキテクチャとほぼ同じ時期に登場している「古い技術」だ。1980年代の初期ファイルサーバでも、ストレージはサーバに内蔵しているとは限らないストレージをクライアントに提供していたことから、SDSと考えることができる。

 SDSを最も単純に定義するなら、基盤となるハードウェアから切り離したストレージを管理するソフトウェアとなる。しかし、ベンダーによるSDSの定義は、各社のプラットフォームによって異なる。

 プラットフォームには、さまざまなストレージプールを1つの連続したドライブとして提示するソフトウェアだけという製品もあれば、廉価なハードウェアを使用して、レプリケーション、スナップショット、階層化などの高度な機能を提供する製品もある。

サーバ&ストレージ ナビ

ハイパーコンバージドインフラ


ソフトウェア定義テクノロジーを誕生させた柔軟性に対するニーズ

 高価な超高速大型コンピュータで採用するSAN(Storage Area Network)は、20年以上にわたって、レプリケーション、スナップショット、RAID、オブジェクトベースのストレージなどの、冗長性と高可用性をもたらす非常に便利な機能を幅広く提供してきた。また、シンプロビジョニング、階層化、圧縮によって効率も高めてきた。

 しかし、システム管理者は、サーバとSANのモデルから、ハイパーコンバージドシステム、VMwareの「VMware vSphere」やMicrosoftの「Hyper-V」などのハイパーバイザーで動作するクラウドサーバや仮想サーバへと移行している。これはオンプレミスとクラウドの両方で見られる現象だ。

 ソフトウェア定義アーキテクチャの使用拡大により、ストレージベンダーは製品をファイバーチャネルとiSCSIだけでなく、LAN、WAN、HTTPなど他の種類の接続にも対応させざるを得なくなっている。その結果、あるハードウェアに搭載しているストレージを、仮想サーバに搭載した別のハードウェアに移行できるようになった。移行先のハードウェアがある場所は、ローカルのデータセンター、遠隔地にある自社所有のデータセンターまたはクラウドであろうと構わない。

 あらゆるソフトウェアには、ストレージが必要だ。これには、本来は永続ストレージを必要としないステートレスなシステムとして考案されたコンテナも含まれる。コンテナの中核を担うのは、データであるため、永続ストレージを含めるように変更されている。

 1台のPCで動作するモノリシックなプログラムから、ローカルのデータセンターにある無数のサーバ、クラウドまたはモバイルデバイスで動作する分散型へとアプリケーションが進化したことで、ストレージも変化する必要があった。場所を問わず各種デバイスに同じファイルを提供しやすくするため、内蔵HDDをシミュレートした本来のブロックベースのストレージから、ファイル共有を経てオブジェクトストレージに至るまでに、幾つもの抽象化の階層が加えられてきた。

ストレージの高速化、セキュリティ確保、柔軟性アップを実現するSDS

会員登録(無料)が必要です

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

譁ー逹€繝帙Ρ繧、繝医�繝シ繝代�

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

「SATA接続HDD」が変わらず愛される理由とは

HDDの容量が30TB超になると同時に、ストレージ技術はさまざまな進化を続けている。そうした中でもインタフェースに「SATA」(Serial ATA)を採用したHDDが変わらずに使われ続けている。なぜなのか。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

IOPSが5倍に向上&コストも80%削減、エクシングが選んだ大容量ストレージとは

カラオケ業界が直面するデータ増に対応すべく多くのストレージを試し続けた結果、4社27台の製品のメンテナンスに悩まされていたエクシング。この問題を解消すべく、同社は大容量かつコスト削減効果に優れた、新たなストレージを導入した。

製品資料 プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

データソート性能向上でここまで変わる、メインフレームのシステム効率アップ術

メインフレームにおけるデータソート処理は、システム効率に大きく影響する。そこで、z/OSシステムおよびIBM Zメインフレーム上で稼働する、高パフォーマンスのソート/コピー/結合ソリューションを紹介する。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

従来ストレージの約8倍の容量を確保、エルテックスが採用したストレージとは

ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。

市場調査・トレンド プリサイスリー・ソフトウェア株式会社

クラウド統合を見据えたメインフレームのモダナイズ、3つの手法はどれが最適?

長年にわたり強力かつ安全な基盤であり続けてきたメインフレームシステム。しかし今では、クラウド戦略におけるボトルネックとなりつつある。ボトルネックの解消に向け、メインフレームを段階的にモダナイズするアプローチを解説する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。