管理・監視ツールが自分の代わりに考えてくれて、セルフサービスITインフラが、ボタンを押すだけでデプロイされる環境の中で、IT運用担当者は何をすべきだろうか。
絶えずサーバを減らしたり、増強したりする作業に追われたままでは、腰を据えた分析を基にセルフサービス型のITインフラを構築することはできない。
人工知能(AI)で強化されたIT運用の自動化は、管理者のやるべき仕事を大幅に減らしてくれる。デジタルトランスフォーメーションの波に飲み込まれることなく、これを捉えるには、IT運用担当者は、高度な監視・管理ツールを実装してセルフサービス型のITインフラを実現し、データをビジネス価値に転換する必要がある。
「もしIT運用担当者が自動化の優れた価値を理解していないなら、担当者として失格だ」。Quocircaでアナリストを務めるクライブ・ロングボトム氏はそう語る。
ITチームは宣言型のプロビジョニング・管理ツールにより、アプリケーションの要件に対応し、オンデマンドでスケーリングできるインフラのテンプレートを作成できる。このテンプレートは鋳型に似ている。各ユーザー用にクレート(枠箱)を手作りするところと、鋳型に金属を流し込んで新しい同一のクレートを何度も繰り返し作るところを想像してみていただきたい。構成管理・自動化ツールは、ITインフラの射出成形プラットフォームといえる。
機内インターネットやエンターテインメントを提供するGogoは、開発者が開発成果の運用も自分で手掛けられるようにすることを目指し、一連のセルフサービス型ITインフラテンプレートとカスタム監視ダッシュボードを作成した。従来は運用チームが、コードをデプロイするサーバを立ち上げ、幾つかのアプリライフサイクルにわたってデプロイを調整し、ビルドの一部を毎回カスタマイズしていたと、GogoのクラウドDevOpsエンジニアを務めるニラブ・シャー氏は説明する。
今では開発者が、Gogoの「Amazon Web Services(AWS)」ベースのIaaS(Infrastructure as a Service)環境から必要なインスタンスを選択し、コードをデプロイして本番環境にリリースしている。管理者はリソース要件を見直すことができ、柔軟性を確保するために、本番稼働前に、コードをデプロイしたインスタンスをAWSのAuto Scalingグループに追加する場合もある。
ライブインスタンスは、APIによって自動的に、使用状況に関する指標データを監視・分析ツールの「Graphite」や「Sumo Logic」に提供している。指標がしきい値を超えると、これらのツールは自動的に「VictorOps」に情報を伝える。VictorOpsは、状況に応じて適切な対応やエスカレーションパターンが取られるようにアラートを配信し、経過を追跡する。レポートが「Graphana」で生成される。
「われわれは、開発者ができるだけシームレスに仕事ができるようにしている」(シャー氏)
VictorOpsや他の監視ツール群がなければ、ユーザーは1カ所で全体像を把握することはできず、各種システムに個別にログインして傾向を発見するにとどまっていただろう。そうした全体的な状況認識が可能であれば、ユーザーは、さまざまなシステムからのどのようなアラームに相関がありそうかが分かる。
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