Microsoftは、オープンソースOSであるLinuxのコンテナを同社のWindowsで動作させるプロジェクトによって、技術的な隔たりを埋めようとしている。しかしLinuxに従事する開発者がそう簡単になびくことはなさそうだ。
Microsoftが「Linux」を受け入れるまでには長い時間を要したものの、同社の「Windows Server」でLinuxベースのコンテナを動作させるという新しいオープンソース構想によって、失われた時間を取り戻そうとしている。
WindowsでLinuxコンテナを動作させることができても、Linuxを使用している企業がWindowsに移行する気になることはないだろう。だが中小企業やWindowsを使用しながらLinuxのコンポーネントも必要とする大企業には魅力的な選択肢となり得る。
Technology Business Researchで主席アナリストとして働くエズラ・ゴットヘイル氏は、「1種類のOSだけを管理するという簡潔さは、とても理にかなっている」と話す。
さらに、このMicrosoftのプロジェクトは、150人程度のメンバーで構成されるDockerのエンジニアリングチームが、Dockerのコンテナ運用管理ツール群「Docker Datacenter」や他のDockerコンポーネントのWindows互換バージョンを開発する際の負担軽減も目的としている。WindowsでLinuxコンテナを実行できれば、Windowsコンテナユーザーが、一連のLinuxコンテナをベースにしたDocker DatacenterをWindows Serverで実行できるようになる。
2つのコンテナ
Microsoftがこの現在進行中のプロジェクトに着手した理由として、同社の「Microsoft Azure」でLinuxコンテナをサポートする作業が難航したことも挙げられる。そう語るのは、Microsoftでリードプログラムマネジャーを務めるテイラー・ブラウン氏だ。
「顧客からはコンテナイメージが提供される。それだけだ。私たちは、その動作方法や操作性を効率化する方法を特定しなければならない。それと同時に、マルチテナント環境の分離も維持する必要がある。LinuxとWindowsをサイドバイサイドで動作させられるのは、Microsoftにとって非常に価値があることだ」(ブラウン氏)
Microsoftは米国で2017年4月に開かれた「DockerCon 2017」で同プロジェクトを発表している。そして、さらに多くのプラットフォームの選択肢を開発者に提供し、運用チームが抱えるコンテナ化されたアプリケーションの導入先や導入方法に関わる悩みを緩和すると約束している。
米国大気研究センターでセキュリティエンジニアとして働くサイモン・ウェブスター氏は、次のように予測している。「このプロジェクトは、プラットフォーム間でモノを移行する相互運用性の未来にとって非常に重要になる。当研究センターでは、Linux、Appleの『Mac』、Windowsを使用している。モノを自由に移行できるプラットフォームが増えれば作業がしやすくなる」
「各種クラウドに移植できる点も、競合入札をかなり集めやすくする可能性があるため、特に政府機関へのアピールポイントになる」とウェブスター氏は続ける。ウェブスター氏以外は、この機能について、大半の企業への訴求力はないと捉えている。
Quicken Loansでソフトウェアエンジニアを務めるニマ・イスマイール・モカラム氏は次のように指摘する。「WindowsでLinuxコンポーネントをよりネイティブに実行できるのは良いことである。だが大企業がそれを運用環境で利用するとは思えない。しかし、.NET Frameworkを使用し、少数のLinuxコンテナを実行する必要のある中小企業なら、確実に目を向けると思われる。そのため、このような企業をターゲットにすると良いだろう。ただし数台のLinuxサーバを購入する資金があるなら、そうした方がパフォーマンスは向上し、不安も少なくなるかもしれない」
Dockerとパートナー関係にあるMicrosoftは、2016年に「Windows Server 2016」をリリースし、「Windows Serverコンテナ」と「Hyper-Vコンテナ」という2種類のWindowsベースのコンテナを公開している。しかし、Dockerのコンテナ化モデルは、Linuxのプロジェクトとして誕生している。そのためオープンソースコミュニティーは、コンテナ化を今流行のテクノロジーに押し上げた発展や革新のほとんどを支持してきた。
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