2017年以降に発売される「Chromebook」の全モデルでAndroidアプリを使えるようにする――。Googleのこの判断は、Chromebookのユーザー企業にとっては必ずしも歓迎できるものではないようだ。
Googleはノート型デバイス「Chromebook」の2017年以降に発売する全モデルで、同社のモバイルOS「Android」用のアプリケーションを実行できるようにする方針を掲げた。この方針は、セキュリティと管理性、そしてシンクライアントデバイスとしての総合的な有用性に関する懸念材料となっている。
Chromebookは価格が安く、原則としてデータをローカルに保存しないため、シンクライアントデバイスとして広く利用されている。Androidアプリを利用できるようになると、シンクライアントデバイスとしての有用性を損なう可能性がある。
企業の従業員がAndroid用公式アプリストア「Google Play」からChromebookに何をインストールし、何をアップデートするかをIT部門で管理するためには、エンタープライズモビリティ管理(EMM)製品をはじめとする管理製品が必要になる。そうなればIT部門の負担が増える。
「新しいChromebookがもたらす問題は、アプリをそこで実行できること、そしてどのタイミングでソフトウェアをアップデートするかを管理できないことだ」。そう話すのは、調査会社Moor Insights and Strategyのプレジデント兼プリンシパルアナリスト、パトリック・ムーアヘッド氏だ。「これはセキュリティリスクとなり、Chromebookはこれまでより複雑になる」(ムーアヘッド氏)
仮想デスクトップインフラ(VDI)をはじめとするシンクライアントシステム最大の利点は、セキュリティの確保にある。データをローカルに保存しないことで、重要なデータの格納先を絞り込めるからだ。
ChromebookにAndroidアプリをインストールできるようになると、事情は変わる。従業員がシンクライアントデバイスとして使っているChromebookにAndroidアプリをダウンロードすれば、企業情報をChromebook自体に保存できることになる。それを防ぐには、IT担当者がEMMソフトウェアを使わねばならず、VDIやWebアプリでは不要だった負担が増えてしまう。
フロリダアトランティック大学で最高技術責任者(CTO)を務めるメヘラーン・バシラトマン氏は、こうした状況を「重大な懸念だ」と述べる。Androidアプリ自体もセキュリティ上の脅威になり得る。GoogleはGoogle Playに登録するAndroidアプリの審査を強化しているが、コンサルタントのローリー・モナハン氏は「審査は十分とはいえない」と語る。
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