病院の医療情報部門もIoTに熱視線
Bluetoothが医療機関を変える4つの可能性 「Bluetooth 5」登場でますます便利に
医療機関のBluetooth活用には大きな可能性がある。病院内の患者に屋内GPSを取り付けたり、患者が医療機器や治療に関する情報を受け取れたりできるようになる。
コンサルティンググループBCGの推定によれば、モノのインターネット(IoT)への支出は2020年までに2670億ドルに達する見込みだという。この数値は、さまざまな市場の組織がIoTテクノロジーの導入を増やし、IoTのようなコネクテッドデバイスへの投資を推し進める可能性が高いことを明確に示している。医療現場でも、医療スタッフが患者のデータを詳しく把握するのにIoTが貢献している。患者に取り付けたIoT機器から送られる多くのデータを監視や分析に活用できるためだ。このような機器と他のシステムとのデータ交換の多くはワイヤレス通信を利用する。そのため、病院のIT部門ではIoTへの関心が高まっている。
医療機関で使用している多くのウェアラブルデバイスは、本稿執筆時点ではワイヤレス通信を利用してホストシステムや他の機器にデータを転送している。この通信方式は院内各所に配線を張り巡らす必要はなく、高額なインフラコストもかからない。そのため、患者にとっても病院にとっても都合が良い。接続にはWi-FiまたはBluetoothが必要になる。Bluetoothは、スマートフォンとの接続によく利用されている通信の1つだ。
現在の形式のBluetoothが初めて導入されたのは1994年のことだ。このとき、Bluetoothはデバイスを別の対応ユニットとペアリングすることを目的としたワイヤレステクノロジーだった。やがてBluetoothは普及し、多様なガジェットや機器をスマートフォンやPCに接続するために使用されるようになる。接続機器には、フィットネストラッカー、スマートウォッチ、ワイヤレススピーカー、心拍モニターなどがある。医療現場では、患者と何らかの医療機器をワイヤレスで接続することがBluetoothの用途の1つになっている。Bluetoothは、患者の血圧や心拍を測定するIoT機器やその他の医療機器に使われることが少なくない。
2016年12月、最新の「Bluetooth 5」標準が登場した。この標準には大幅な変更と強化が加えられている。Bluetooth 5ではデータ転送速度が2倍になり、通信範囲も4倍に拡大する。干渉に強いデータ交換が可能になり、位置認識もサポートする。こうした変更によりIoTの導入が増えると予想される。病院のIT部門でも、既にIoT機器やスマートフォンで新しい機能を試すことができる。ここからは医療現場におけるBluetoothの4つの用途を紹介する。
院内のリアルタイム性を高める位置システム
最新Bluetooth 5標準では、アセットやデバイスのリアルタイム追跡をサポートする一連の機能が新たに登場した。追跡には、安価な「Bluetooth Low Energy」(Bluetooth LE)タグを使用する。この小さなタグを医療機器に取り付けたり、患者に付けたりすることで、タグの圏内に存在する他の機器と位置情報を共有できる。Bluetooth 5は前世代の4倍の距離をサポートし、その接続圏は約120メートルに及ぶ。
医療機器への接続の改善
大手スマートフォンメーカーはBluetooth 5の機能を新たに導入する重要性を認識し、実際に導入も進んでいる。Samsung Electronicsの「Galaxy S8」やAppleの「iPhone 8」「iPhone X」などが最新バージョンのBluetooth 5を導入している。医療スタッフや患者が使い慣れた機器も、Bluetooth 5に対応させることで、以前よりも長い距離で複数のデバイスを同時接続できるようになる。屋内GPSのようなBluetooth 5の機能を使うと、広い医療施設の中で患者が迷子にならなくてもすむ可能性がある。
コネクションレスのデバイス通信
Bluetooth 5には、デバイスの通信方法に大きな変化をもたらすもう1つの特徴がある。それは、アプリとデバイスとのペアリングモデルからの脱却だ。従来、2台のデバイスでデータを交換するには、両デバイスをペアリングしなければならなかった。この仮想の「握手」により、デバイス同士の接続が適切に確保された。だが、Bluetooth 5では、ペアリングしなくても、位置情報やセンサー情報などの基本的な情報をデバイス間で相互に交換できる。
デバイスに対する豊富なデータブロードキャストサポート
Bluetooth 5対応のデバイスでは、ペアリングしないでデータをブロードキャストできる。ブロードキャストできるデータには、位置情報の詳細、マルチメディアファイル、URLなどがある。患者は院内でこの機能を利用して目的の場所に移動したり、目的の場所の詳しい情報をスマートフォンに取り込んだりできる。例えば、患者が院内で診療室などの目的の場所に近づいたときに自動的に通知を送信することが考えられる。また、特定の医療機器や医薬品に近づいたら、患者自身の一般的な情報や参考になる医療データを提供することもできる。
病院に導入されるワイヤレスデバイスが増加する中で、IT部門が病院のセキュリティに懸念を抱いていることは変わらない。また、コネクテッドデバイスが増えることで、潜在的なリスクが新たに生じることについても憂慮している。近年、医療機関に対する攻撃は増加の一途をたどっており、施設内にある全てのコネクテッドデバイスを保護しなければならない。IT部門がこうした重圧から解放されることはない。ランサムウェアやデータ侵害を食い止めることについても同様だ。Bluetooth 5の強化によりIoTの導入は進むことになるだろう。ワイヤレス接続を利用して、患者や医療スタッフが各種機器とつながることもますます増えていく。だが、IT部門は警戒を怠ってはならない。新たに導入される全てのワイヤレステクノロジーが、組織のセキュリティとコンプライアンスの基準を満たしていることを確認する必要がある。
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