セキュリティ対策と社内普及が鍵
帝国ホテルは「G Suite」を社内にどう定着させたか
帝国ホテルは2016年から「G Suite」を利用している。PC利用状況やITに関する知識量にばらつきのある従業員へのG Suiteの社内普及施策と、利用に伴い実施している情報漏えい対策について説明する。
帝国ホテルはオンプレミスで運用していたメールシステムを、2016年にクラウド型オフィススート「G Suite」のメールサービス「Gmail」へ移行した。2018年8月にはオンラインストレージサービスの「Googleドライブ」とソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の「Google+」を中心とした、G Suiteの他サービスの利用も始めた。本稿では2018年9月19、20日にグーグルが開催した、クラウドに関するイベント「Google Cloud Next '18 in Tokyo」のセッションの内容を基に、帝国ホテルのG Suiteの導入経緯と情報漏えい対策、ワークスタイル変革に向けた取り組みについて紹介する。
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Gmail選定の理由は暗号化技術
メールシステムをGmailに移行した背景には、帝国ホテルで利用していたメールサーバ(オンプレミス)の保守満了と、他のさまざまな企業で相次ぐ顧客情報流出があった。企業の顧客情報の流出は、メールの添付ファイルとして受信したウイルスをローカル環境に保存することが被害の原因になることがある。
帝国ホテルは要人(VIP)を含め多数の顧客情報を保持している。そのため情報漏えい対策が不可欠だ。Gmailを選定するに当たって決め手となったのは、メッセージや添付ファイルを暗号化するS/MIMEやメールの送受信を暗号化するTLSといったメールの暗号化技術を利用できる点、ローカルへ保存する必要なく添付ファイルプレビューが可能な点など、セキュリティ強化に役立つ機能が充実していることだという。顧客とのやりとりの多い接客部門にとって、エディションによっては送受信メールの総容量が無制限であることもポイントだった。
Gmailを運用する際のセキュリティ対策として、帝国ホテルは従業員がクライアントPCのローカル環境へファイルを保存することを禁止し(写真1)。受信した添付ファイルは暗号化したオンプレミスのファイルサーバに保管させる対策を取った。
帝国ホテル情報システム部課長の廣石(ひろいし)征司氏は、メールシステムをオンプレミスからクラウドへ移行する際に「既にやっていたセキュリティ対策を変わらず実行することが大前提だった」と言う。移行前のシステムでは、添付ファイル付きメールを送る時に宛先を確認するメール誤送信防止機能と、添付ファイルの自動暗号化機能を運用していたが、これらの機能はGmailの基本機能にない。そのためソースポッドのメールセキュリティサービス「SPC Mailエスティー」を導入して対応した。
デフォルト設定のGmailは、IDとパスワードだけでデバイスを問わずログインできる。その状態でIDやパスワードが流出したり解読されたりしてしまえば、悪意のある第三者にアカウントを簡単に乗っ取られてしまう。そのためアイデンティティー管理サービス「CloudGate UNO」のシングルサインオン機能と、同サービスの有償オプションであり、ログインできるデバイスを制限する端末認証機能「secured by Cybertrust」を導入した。帝国ホテルにはプライベートでGmailの利用経験のある従業員が多く、スムーズに移行できたという。
G Suiteのファイル共有・同時編集機能を活用開始
前述の通り2018年には既に導入しているGmailを除く、GoogleドライブとGoogle+を中心としたG Suite各種サービスの業務利用を開始した。帝国ホテルの情報システム部は、ITを導入することで業務を効率化し、サービススタッフを接客に集中させるという目標を掲げている。目標の達成に当たり課題を洗い出した結果、同社の業務が紙へ依存していることと、部署間がスムーズに情報共有できていないことが判明した。こうした状況を打破するための手段として同社が注目したのが、既に導入していたG Suiteだった。
G Suiteの導入後、社内では
- Googleドライブを用いたレストランの仕入れ部門と調理部門のレシピ共有、宴会場などホテル内部の写真の一元管理
- Googleフォームを使った社内アンケート
- Google+を用いた余剰備品の可視化
などの活用が見られるという。導入から1カ月余りで、帝国ホテルがG Suiteのアカウントを発行した1000人中320人ほどの従業員が、Gmail以外のG Suiteのサービスを利用した。
導入後の情報漏えい対策として、GoogleドライブとGoogle+内にあるデータの社外への共有を無効にし、G Suiteの基本設定で共有範囲を社内の従業員に限定した。
導入後の課題は、G Suiteの豊富なサービス/機能群をどう活用するかだった。従業員の業務内容は多岐にわたり、おのおののITリテラシーに差異がある。そのため情報システム部が個別に活用方法を提案することは難しい。そのような状況でG Suiteを普及させるために、導入後2回にわたる新機能活用セミナーを開いた(写真2)。G Suiteの同時編集機能やファイル共有機能を中心に、デモンストレーションを通して使い方を説明し、その後は使い方を定めず自由に使ってもらうようにした。
帝国ホテル情報システム部の福壽(ふくじゅ)太郎氏は、G Suiteを使うことによる業務の二度手間の回避や、時間と場所に縛られない双方向のやりとりの実現に期待を寄せる。今後は、LumAppsの同名ポータルサイト作成サービスを使いG Suiteと連携したポータルサイトを構築するなど、G Suiteを活用しやすい環境を整えていきたいという。
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