アプリの利用増加で懸念
Apple、Google、Samsungに医療記録の管理を任せて大丈夫か?
米国では、モバイルデバイスを用いて自身の医療記録にアクセスする利用者が増えている。だが、こうしたデバイスに保管される医療データのセキュリティとプライバシーに懸念する声もある。
Apple、Google、Samsung Electronicsがスマートフォン市場での優位性を利用して医療関連のアプリとサービスの導入を決めた。これらの企業のデバイス利用者が数百万人に上ることから、この決定当時は患者エンゲージメント(患者自身が自ら積極的に治療について学習し、最適な医療を選択して関与すること)が増加することが予測された。これらの企業は数年にわたってモバイル市場を支配している。そのため、自社ユーザーに医療アプリを提供することで、その立場を利用してアプリからメリットを獲得し、付加価値を高めてより多くの顧客をひきつけることができる。ただし、モバイルデバイスでの医療データの利用増加は、医療記録のプライバシーに対する深刻な懸念を引き起こしている。そして、こうしたセキュリティに関する疑問が、モバイルデバイスに自身の医療データを保管するかどうかという患者の選択に影響を与える可能性がある。
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医療業界の相互運用性確立に向けた取り組み
普及しなかった個人医療記録(PHR)プラットフォーム
現在、多くの電子カルテ(EHR)プラットフォームには、患者がWebを通じて自身の医療データにアクセスできるポータルが備わっている。この機能は、ほぼ全ての患者がデジタル形式の医療記録を請求してアクセスできるレベルに達している。だが、医療機関によって利用するEHRプラットフォームが異なる。そのため、患者が複数の医師や医療機関で治療を受けている場合、その医師や医療機関が利用するプラットフォームに応じて、患者は幾つかの異なるWebポータルやデータ形式に対応しなければならない可能性がある。この問題に対処するため、複数ソースの患者データを1つのプラットフォームに統合し、患者が自身のデータを一元管理できるリポジトリを提供する個人医療記録(PHR)ポータルのようなオンラインサービスが数多く導入された。
残念ながら、抽出される医療記録の相互運用性と統合標準がなかったため、これまでのPHRプラットフォームはあまり普及していない。そのため、ほとんどの患者は通院している病院や診療所のWebポータルから自身のカルテにアクセスしている。近年、医療保険適正化法(Affordable Care Act)などの連邦政府による医療プログラムの後押しにより、EHRベンダーは相互運用の要件を満たすよう推奨されている。Cerner、Allscripts、Epic Systemsなどの大手ベンダーはいずれも、複数のシステム間でのシームレスな接続と医療情報の交換を可能にするため、FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources:迅速な医療情報相互運用のためのリソース)とのコネクターを積極的に構築している。
医療記録へのアクセスを提供するベンダー
新たな統合機能の登場を受けて、Appleをはじめとするモバイルベンダーはその柔軟性を生かすことに決め、米国の大規模な医療システムの幾つかとパートナーシップを結んだ。モバイルデバイスを利用して、新たに利用できるようになったデータに(患者の同意を得て)アクセスするためだ。
現在、「iPhone」ユーザーはIDと自身の医療記録がある場所を確認する簡単な手順に従うことで、Appleのネイティブアプリ「ヘルスケア」から自身のデータのコピーを要求し、1つまたは複数の医療機関から医療記録を受けとることができる。アプリは情報を処理したら、ラボ、バイタル、記録などの複数のセクションに整理する。また、新しいデータを入手したら、健康状態やデータの重大な変化を警告する手段として、最新情報を患者に伝える。Samsungなども、自社のスマートフォンとアプリでAppleと同様の機能を提供する。それ以外にも、スマートフォンに接続できるウェアラブルデバイスやその他の医療デバイスから収集されたデータも利用可能にする。
医療記録のプライバシーに関する懸念
HIPAA(米国における医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)を順守し、医療記録のプライバシーに関するセキュリティ要件を満たすために、Samsung、Google、Appleは全て、使用している医療データの暗号化を導入している。Appleの場合、医療記録のプライバシー保護を強化するため、ヘルスケアアプリに関連する全てのデータが転送中も保存中も暗号化される。
ただし、特にiPhoneなどのデバイスはハッキングを防止できないことが報告されている。そのため、モバイルデバイスに医療データを保管する場合に、医療記録のプライバシーに関する懸念が生まれる。また、政府機関がユーザーのモバイルデバイスのロックを解除するソフトウェアを使用するという事例もある。医療データが政府機関に渡ってもそれほど大きな問題にはならないかもしれないが、ロックを解除するテクノロジーが悪意のある人物の手に渡れば、大きな影響が生じる恐れがある。そのような事態が起きれば、医療データだけでなく、ソーシャルメディア、パスワード、財務データなども漏えいのリスクにさらされる。
医療記録のプライバシーに関するもう1つの懸念は、医療データがAppleやSamsungのようなベンダーに保管されることに伴う潜在的なリスクからも生まれている。このようなデータが侵害された場合、非常に大きな脅威になる。ここ数カ月にUnder Armourで起きたカロリー管理アプリ「MyFitnessPal」のデータ侵害は、同サービスを利用して運動や食事を管理していたスポーツ愛好家に衝撃を与えた。この侵害は約1億5000万人のユーザーに影響を及ぼし、同社の個人情報の保護能力に対する深刻な懸念が生じた。また、医療データを保存する他のアプリが標的にされる恐れについても不安が高まっている。
データ交換と相互運用性に関する技術的な障壁が低いため、モバイルデバイスやWebポータルによるソースやEHRの種類を問わない医療データの共有は、データや医療プロバイダーとの患者エンゲージメントを促進する。だが、モバイルデバイスやクラウドへの医療記録の保存が普及するにつれ、医療記録のプライバシーとセキュリティの懸念は、今後も医療データのコピーをスマートフォンに送るべきかどうかを悩む大きな原因になり、大きな課題の1つになるだろう。
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