メリットとデメリットを知る
開発速度を上げ、反感を買う ローコード開発の光と影
ローコード開発はモバイルアプリの開発速度を上げられる一方で、企業に組織上の課題をもたらすこともある。
モバイルアプリの開発は、短距離レースよりも長距離レースになることが多いが、常にそうなるとは限らない。
「OutSystems」や「Appian」などの、最小限のコード記述でアプリの開発ができる「ローコード開発」ツールを使えば、ITチームは少ないリソースで迅速にアプリを開発できる。OutSystemsは年次カンファレンス「NextStep」を開催しており、2018年のカンファレンスでは、専門家たちがローコード開発のユースケースと課題を幾つか話題にした。
ローコード開発ツールによって、技術者だけでなく、IT部門以外に所属する開発経験がほとんどないような人々(いわゆる「シチズンデベロッパー」)も、テンプレートやドラッグアンドドロップで配置できるコンポーネントを使用し、複数プラットフォームで稼働するモバイルアプリの構築が可能になる。OutSystemsを使用する技術者は、C#やJavaScriptなどの言語で記述したコードの他、必要ならばCSS(Cascading Style Sheet)といったデザイン設計用のファイルも作成できる。
OutSystemsはPaaS(Platform as a Service)としても利用できる。PaaSを利用すれば、IT部門は物理インフラの管理も必要なくなる。
技術者はローコード開発をどう受け止めるのか
ローコード開発用のPaaSは、既に「Salesforce」や「NetSuite」などのERPツールを使った基幹業務を遂行しているシチズンデベロッパーにとって扱いやすい。そう話すのは、Gartnerでリサーチ部門のディレクターを務めるジェイソン・ウォン氏だ。
ローコード開発ツールはシチズンデベロッパーにアプリ開発の機会を提供する。だが良い点ばかりではない。シチズンデベロッパーと経験豊富な技術者の間に摩擦を生み出す可能性もある。
「技術者とは本質的に、スキル面での独り立ちを望み、自身が成長して保有スキルを誰かに伝えられるようになりたいと考えるものだ」とウォン氏は話す。
米アイオワ州ジョンストンを拠点とする農業科学企業DuPont Pioneerでは、同社の社内モバイルアプリの約90%をシチズンデベロッパーが開発している。そう話すのは、同社でソフトウェア開発マネジャーを務めるジョイ・パルナウ氏だ。
当初、社内にあった開発チームにOutSystemsを推奨しようとしたところ、緊張が走ったとパルナウ氏は話す。そこで同社は、技術者をプロジェクトも優先順位も異なる別々のグループに振り分けた。こうすることでシチズンデベロッパーは、スクラムチームを組むことなくアプリの構築に専念することができた。
同社のシチズンデベロッパーによるプログラムはその量が急激に膨れ上がっている。これにより、プラグインの競合やハードウェアの問題などに対処するのが難しくなってきたとパラナウ氏は述べる。
「反面、(シチズンデベロッパーは)IT部門が実現できないような速度で作業できる」(パラナウ氏)
ローコード開発の長所
避けられない摩擦が幾つかあるとしても、ローコード開発ツールの目的やユースケースは受け入れられ始めているとウォン氏は話す。
一般に、公共セクターの組織は、民間企業に比べて開発スタッフや予算などのリソースが限られている。オークランド市のローコード開発にはこの例がぴったりと当てはまると同市のCIO(最高情報責任者)アンドリュー・ピーターソン氏は話す。
ピーターソン氏が率いるチームはOutSystemsを使って、消防検査プロセスの時間を短縮するモバイルアプリを開発した。それまでオークランド市の消防検査技師は、検査対象の家が山奥など携帯電話サービスの利用に難がある場所にあった場合、調査の完了に時間がかかっていた。それが今では、あらかじめフォームをダウンロードするなどして、オンライン接続の必要なしにiOSアプリで作業を実行できるようになっている。
ローコード開発ツールによる迅速なアプリ開発は、オークランド市におけるピーターソン氏の役割の信頼性を確保することに役立っている。「チームが担当するプロジェクトが増えるほど、チームへ寄せられる信頼が高まっている」(ピーターソン氏)
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